「いびき」どんな場合が要注意? それ…実は病気かも

この記事では、今知っておきたい健康や医療の知識をQ&A形式で紹介します。ぜひ今日からのセルフケアにお役立てください!
(1)軽度のいびきでも、放置すると、重度の睡眠時無呼吸症候群に進むことがある
(2)いびきの中でも特に注意したいのが、習慣的で、かつ大きな音のものだ
(3)内臓脂肪型肥満の人はいびきをかきやすい傾向にある
(4)鼻呼吸の人はいびきをかきやすい傾向がある
答えは次ページ
答えと解説
正解(いびきの説明として間違っているの)は、(4)鼻呼吸の人はいびきをかきやすい傾向があるです。
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いびきは、上気道(鼻から喉までの空気の通り道)が狭くなることで呼吸のたびに生じる摩擦音です。つまり、呼吸がしづらくなっている状態を示し、ひどい場合には肺に送り込まれる空気の量が減ってしまったり(低呼吸)、気道が完全に閉塞して一時的に呼吸が停止したりすること(無呼吸)もあります。
自分ではよく寝たつもりでも、呼吸が苦しいため眠りの質が低下し、日中に眠気が出たり、頭がぼーっとしたり、疲労感が抜けなかったりする場合には、就寝中にいびきをかいている可能性があります。
もちろん、いびきをかく人すべてが低呼吸や無呼吸状態になっているわけではありませんが、睡眠中に低呼吸や無呼吸が1時間当たり平均5回以上生じる場合は、「睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome 以下、SAS)」とされます。
「軽症の場合、すぐに治療が必要というわけではありませんが、中等症以上のSASを15年間放置した場合、心筋梗塞などをはじめとする循環器系疾患や脳血管障害の合併により生存率は約50%程度に低下するというデータもあります。 さらに、SASには至らない軽度のいびきであっても、放置すると、将来重度のSASへと進行することもあるため油断はできません。 やはり、うるさいいびきは、放置しないことが大切です」と、太田睡眠科学センター&外科学センター所長の千葉伸太郎さんは言います。
大きないびきは睡眠時無呼吸症候群の可能性大
いびきをかく人の健康リスクとしては、SASに関連する疾患として、心筋梗塞、脳出血などの血管系疾患、合併症として生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症)のリスクが高まることが挙げられます。また、最近では、正常眼圧緑内障[注1]との関係も指摘されています。「ほかに、いびきによる睡眠障害から、うつ病、男性の性機能不全、夜間頻尿などにつながることもあります。また、同じ部屋で寝る人にとっても、騒音性難聴、睡眠障害などの健康リスクが高まる恐れがあります」(千葉さん)
千葉さんによると、いびきの中でも特に注意したいのが、習慣的で、かつガーガーと大きな音を立てていたり、呼吸が止まっていたりするケースです。
「いびきは摩擦音ですから、大きな音を立てるいびきはそれだけ苦しい呼吸の力が大きいことを意味します。つまり、息苦しく、体に負担がかかるいびきであり、音が大きいほどSASの可能性が高いと考えていい。お酒を飲んだ日や疲れているときのみ起こるような、一過性のいびきとは区別する必要があります」(千葉さん)

このような症状がある場合には、いびきにより何らかの健康被害が生じる可能性が高いと考えられます。医療機関を受診してSASかどうかの診断を受け、必要なら治療しましょう。ただし、SASと診断されなくても、いびきは睡眠の質を低下させ、健康を害する可能性があるため、積極的にいびきの改善に取り組むべきだと千葉さんはアドバイスします。
[注1]緑内障のタイプの1つ。眼圧が上昇することで視神経が障害されて発症するタイプとは異なり、眼圧は正常にもかかわらず視神経が障害されて発症する。
肥満で舌が太る!? 舌の肥大がいびき発生に関連
では、いびきをかきやすい人とはどのような人でしょう。前述した通り、いびきは、空気の通り道である上気道が狭くなることで起きます。そして、上気道が狭くなる原因には次のようなものがあります。

このうち、勤労世代の男性が注意したいのは大人になってからの肥満、内臓脂肪型肥満です。内臓脂肪型肥満になると、おなかまわりだけでなく、喉にも脂肪がつき、気道が狭くなります。それに加えて舌も太るために、舌が喉方向に下がり、気道を一層狭くしてしまいます。
起きているときには、舌の位置や喉の筋肉を調整して気道を広げることができるので、息苦しさを感じることはないでしょう。しかし、睡眠中は体がリラックス状態になり、喉の筋肉や舌がゆるみます。その結果、気道が狭くなって、無呼吸やいびきが起きてくるというわけです。
さらに、あごが小さい人や鼻に疾患がある人も、いびきをかきやすくなります。日本人の骨格の特徴として、欧米人よりもあごが小さくて口の中が狭い、というのがあります。その分、舌が口の中に収まりにくく、喉の方に下がりやすくなります。また、口まわりの筋肉が発達していなかったり、鼻がつまったりして口呼吸をしている場合にも、舌の位置が下がり気道が狭くなりやすいことが分かっています。
以上のような理由から「いびきやSASの問題は、性別や体形を問わず、女性や子供にも見られます」と千葉さん。「歯科矯正分野では、幼少期に軟らかいものばかり食べていたりして、かんだり飲み込んだりといった、のどの働きやあごの発達が十分でない子供が増えていることが問題となっています。また、国民病でもある花粉症などの鼻炎症状がもとで口呼吸が習慣化しているケースも少なくありません。国内外の歯科矯正分野でも、今後いびき人口がますます増えていくのではないかと懸念されています」
いびきは原因に合わせて様々な改善法、治療法があります。太っている人は、まず食生活の見直しや運動を取り入れて、喉まわりの脂肪を減らすことを心がけましょう。
軽症のSASと診断された人や口呼吸が原因と見られるケースでは、エクササイズが効果的な場合があります。口や舌など、口まわりには多くの筋肉が集まっていますが、口呼吸が癖になっている人ではそれらの筋力が弱っていることでいびきを助長している可能性があります。歩行や運動機能の維持に体の筋トレが必要なように、いびき予防のためにも、口や舌の筋トレを習慣にしましょう。また、中等症~重症のSASの方は、エクササイズより医師の下での治療を優先させましょう。
[日経Gooday2021年3月8日付記事を再構成]
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