花粉症で目がかゆい やってはいけない「常識」どれ?

この記事では、今知っておきたい健康や医療の知識をQ&A形式で紹介します。ぜひ今日からのセルフケアにお役立てください!
(1)目や目の周辺を手でかかないようにする
(2)水道水で目を洗う
(3)目を冷やす
(4)市販の目薬や洗眼薬を使う
答えは次ページ
答えと解説
正解は、(2)水道水で目を洗うと(3)目を冷やすです。
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花粉症による目のかゆみで困っている人は少なくないでしょう。なかには、気付くと、かゆくて目をこすってしまっているという人もいるでしょうが、「こするのは絶対にダメです。ヒスタミンなどの『かゆみ物質』はこすればこするほど増えて、かゆみは広がる一方です」と、慶應義塾大学医学部特任准教授で、おおたけ眼科つきみ野医院(神奈川県大和市)院長の綾木雅彦さんは指摘します。
では、どうすればいいかというと、綾木さんの答えは、「まず、花粉用メガネやゴーグルをかけるなどして花粉を寄せ付けないこと」。そして、「花粉がついてかゆみを感じたら、まばたきをしたり目を閉じたりして、涙で洗うのが一番」だと言います。
水で目を洗うのはNG

ただ、ドライアイなどで涙の量が少なく、うまく洗い流せない人もいるでしょう。そんな場合、「目を取り出して水道水でジャブジャブと洗い流したくなる」こともあるでしょうが、水で目をジャブジャブと洗うことは避けたほうがよさそうです。
というのも、水道水で目を洗うと、目を傷める危険性があるからです。「水道水は、基本的に目には有害なのです。涙とは違うので、浸透圧も成分も違う。コンタクトレンズを水で洗ってしまうと、水道水に生息するアカントアメーバがコンタクトレンズを介して角膜炎を引き起こし、ひどくなると失明の危険もあるくらいです」(綾木さん)
プールに行くと、泳いだ後に水でジャブジャブ刺激を与えながら目を洗う光景をよく見かけますが、綾木さんによると、実は、それも目にはよくないとのこと。「涙と違う成分を、水圧をかけて目に浴びせているわけですから当然目によくありません。もちろん、顔を洗いゴミや花粉を洗い流す程度でしたら、問題はありません。でも、必要以上に水道水を目の中に入れないでください」(綾木さん)
では、涙で洗い流せない場合は、点眼薬を使うしかないのでしょうか。
これについて綾木さんは、「点眼薬も、何度も何度も頻繁に差すなど、使い過ぎは目に有害です。特に防腐剤が入っている目薬は目を傷めることがありますよ。あくまで処方通りの適量を守ってください」と言います。
では、どうしても「洗い流したい」という切実な思いを満足させるには、どうすればよいのでしょうか。
「洗い流したいのでしたら、花粉やゴミなどを洗い流す洗眼薬があります。ただそれも、健常な目だったり定められた用量を守って使ったりする分にはいいのですが、ドライアイのように目を傷めている場合や使い過ぎには注意が必要です。含まれている成分によっては、目に悪影響を与える場合もありますから。お使いになりたい洗浄用の目薬が自分の目に合っていて安全かどうか、眼科医にご相談の上、用量や用法を守ってお使いください」(綾木さん)
目をやたらと冷やすのも、実は危険

目がつらいときに目を冷やすと、気が紛れ、炎症を抑えられるような気もしますが、これについても綾木さんは、「気分転換や治療になると思い込んで、やたらと冷やすのは危険」だと言います。冷やすことには、気分のリフレッシュ効果はあっても、目の健康には逆効果であり、特に点眼治療中の人やドライアイ気味の人など、目が弱っている人は避けたほうがいいのだそうです。
なぜなら、涙は「水分」「油分」(水分の蒸発を抑える)、「ムチン」(水分が流れないようのりの役割をしている)で構成されていますが、目を冷やすと、特に油の分泌が滞りがちになり、涙の健康的な循環に悪影響が出て涙の質も下がるからです。
「特にこの時期、目を冷やしてしまうと、涙による花粉の洗浄除去が不十分になり、花粉によるダメージからの回復も阻害されてしまうことになるので、注意が必要です」(綾木さん)
逆に、目のかゆみや違和感を覚えたら、目を温めることで不快感を改善できることが多いそうです。「目を温めると、大抵の人は気持ちよく感じられますし、滞りがちな涙の分泌も目の中での循環もスムーズになるからです」(綾木さん)
綾木さんによると、「まばたき」には目の表面をきれいに拭く役割が、「涙」には目の表面を洗い流す役割があります。「まばたきや涙で花粉を除去し、目を閉じて目を休ませることが、この時期のかゆみストレスから解放される一番のリラックス法です。そのときに目を温めれば、さらに目が楽になります。簡単なことに思えますが、意外と、ちゃんと目を休ませている人はそう多くはないんですよ。ぜひ、心がけてください」(綾木さん)
[日経Gooday2021年2月15日付記事を再構成]
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