快適テレワークのツボ 高さが変わる机、腰が楽な椅子

在宅勤務が増えて、肩こりや腰痛が悪化していませんか? 正しいデスク環境の基本を押さえれば、数千円のグッズで快適性が格段にアップします。新しい机や椅子の購入を考えている人にも、失敗しないポイントを教えます。
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「在宅勤務が定着するにつれ、体の凝りや痛みを訴える人が増えた」と、仲野整體東京青山院長の仲野孝明さん。ローテーブルにノートパソコンを置き、キャンプ用の折り畳み椅子に座って仕事する人もいて、「驚くほど猫背になって見た目の印象が激変した」という。ひとごとでないと思ったら、まずはパソコンモニターの高さを調節しよう。
「パソコン用の台やスタンドを使って、鼻がモニターの真ん中に来るように上げて。ノートパソコンもモニターとしてのみ使い、キーボードを外付けにするのがお薦め」(仲野さん)
キーボードは、ひじが直角になる位置に置きたい。そのためには机か椅子の高さ調節が必要だが、椅子はひざが直角になる高さにしよう。仲野さんいわく「椅子に深く座ることにより、ひざが直角になりやすい」。さらに、モニターとの距離やキーボードの角度を調整すれば、目や手首の負担も軽減して快適性がより上がる。



おうちオフィス環境を改善する5ポイント
ノートパソコンをそのまま使っている人は、まずは1から実践しよう。新たな購入を考えている人は2~5も要チェック!
1 パソコンスタンドを使ってノートパソコンをモニター化

上の写真は、仲野整體の来院者によるパソコンスタンドを使った改善例。左は机に置いて座って使う場合で、右はキッチンに置いたスタンディング仕様。「モニターを正しい高さにすると、目線が水平になって体が直立する。背骨と骨盤が安定し、首や肩、腰に余計な力を入れずに楽に姿勢を保てる」(仲野さん)。

2 机と椅子は高さ調節できるものがベスト
新しく机や椅子を買うなら、いずれも高さ調節できるものを。「自分の体に合わせられるほど、いい姿勢を保ちやすくて疲労感が少ない」(仲野さん)。最近は安価な商品も増えたが、安定性や耐久性のチェックも忘れずに。

3 スタンディングデスクはいい姿勢を保てて集中力が上がる
外資系企業などで導入されているスタンディングデスク。仲野さんも5年前から使用。「人間の体は立って動くことを前提に設計されている。慣れれば立って仕事するほうが、集中力が上がることも実感できる」(仲野さん)。

4 照明は手元を明るくLEDランプをプラス
天井一面に照明がついたオフィスと違って、家では机の位置や時間帯によって明るさが変わる。「タッチタイピングでも何かと見る手元はデスクライトで明るくしたい。目に優しいタイプのLEDがお薦め」(仲野さん)。

5 モニターの明るさは?まだあるこんなポイント
オフィスと家の照明が違うことで、モニターの見え方も変わる。目が疲れやすくなったと感じたら、「モニターの明るさを白い紙と同じぐらいに調整し直して」と仲野さん。また、机選びで迷ったら、横幅よりも奥行きがあるものにしよう。で紹介した机のように、パソコンとキーボードを置く場所が分かれていてももちろんOKだ。
疲れない座り方ができる椅子
正しい座り方は、疲れない座り方とイコール。そんな姿勢をサポートする最新の椅子や定番グッズを紹介しよう。
まずは、新機能満載のハイテクチェアを厳選した。こうしたビジネス仕様の椅子を選ぶなら、「頭と首をサポートするヘッドレスト付きのほうが姿勢が安定しやすくていい」と仲野さん。もっとも、椅子で大事なのは骨盤が立って腰が丸まらない造りであること。「その意味で大きな背もたれは必要なく、腰まわりのサポートがあれば十分」という。大きさに関係なく、キャスター付きを薦めるが、理由は「動きやすくて座りっぱなしになりにくい」から。
【イトーキ cassico(カシコチェア)】女性の筋力や骨盤に合った初の女性専用ワークチェア
女性の体に合わせた座面構造でむくみも軽減。張地は10色、ひじと滑車は素材や形を選べる。

【コクヨ Bezel(ベゼル)】体圧分散に優れた独自構造骨盤が安定し体との一体感が高い
どんな作業姿勢も最適化。張地は8色、脚とひじ、背タイプは素材や形を選べる。

【LOWYAオフィスチェア】腰サポートクッションなど多機能なのにリーズナブル
背もたれは背骨と同じS字状で、腰サポートクッションなどすべて位置調整可能。

【GTRACINGゲーミングチェア】長時間座っても疲れないゲーマー向けチェア
人間工学に基づいた3D形状で、背もたれなどの調整範囲が広いのが特徴。

座りごこちを改善するクッション
机以上に機能性が高くて、どれを選んだらいいか迷う椅子。もし今使っている椅子の座り心地を改善したければ、クッションを活用しよう。
【ドクターエル クッション】骨盤が立って正しい座り方ができる定番商品
硬めのクッションに前傾6度の傾斜がついていて、後ろに傾きやすい骨盤を立てて安定させる。

【p!nto(ピント)】食卓などの大きな椅子も仕事仕様に早変わり
5000人超のデータを基に開発された、独自の3次元立体形状が体にフィットし、無理なく正しい姿勢に導く。

【ムービングディスク】体を揺らすと運動できて座りっぱなしの害を軽減
椅子に置いて上に座り、体を揺らすと前後左右に動いて自然とバランストレーニングができる。

【MOGU ひっぱって使うのびるシートクッション】引っ張って伸ばして使うお尻や腰、背中をサポート
自由に形を変えられるから骨盤を立てるためにお尻に敷いたり、体と椅子の背もたれの隙間を埋めるのにも最適。

おうちワークで起こりがちな 不調を解消するカンタン体操
人目を気にせず、ストレッチできるのが在宅勤務のいいところ。ちょっと疲れたな、と感じたらこまめに解消を。
「どんなに正しい姿勢でも、座りっぱなしになれば体に悪影響がある。欧米の研究では、座りっぱなしは喫煙より害がある、ガンの罹患(りかん)率が上がるなど、リスクに警鐘を鳴らしている。30分~1時間に1回は立つようにしてほしい」(仲野さん)
立ったら、ついでにストレッチしよう。仲野さんのお薦めは上の3つ。どれも簡単にできるものばかり。トイレに行ったらこれ、飲み物を取りに行ったらこれというふうに行動とひもづけすると習慣化しやすいだろう。
【手首のストレッチ】タイピングやマウス操作で疲れた手首や前腕を伸ばす
机に、腕の内側を前にして手のひらをつき、ひじを伸ばして10~15秒キープ。手首と腕が伸びるのを感じて。

【肩甲骨のストレッチ】猫背になって開いたままになりがちな肩甲骨を寄せる
両腕を斜め下に伸ばし、手のひらを親指側から裏返して肩甲骨を寄せる。そのまま、息を細く長く吐く。

【目のストレッチ】目やこめかみの緊張をほぐして血行を促し、疲れ目を解消する
【1】顔の近くで人さし指を見て、そのまま遠くに離す。10回繰り返す。窓辺などでやるとより遠くを見られて効果的。
【2】こめかみは人さし指から薬指までで押し、目頭は親指と人さし指で挟む。いずれも2~3秒ずつキープして離す。
【3】眼球を右回り、左回り、各10回ずつ回す。特に、日常生活であまりしない上側は意識してしっかり回す。
【4】目をつぶってまぶたに人さし指から薬指までを当て、2~3秒軽く押して離す。爪を立てたり、強く押しすぎない。


(取材・文 茅島奈緒美、写真 稲垣純也、ヘア&メイク 依田陽子、スタイリング 中野あずさ=biswa.、モデル 鈴木サチ)
[日経ヘルス 2020年12月号の記事を再構成]
健康や暮らしに役立つノウハウなどをまとめています。
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