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コロナ太り解消の秘策 「階段を上る」にもコツがある

ストレス解消のルール

NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

巣ごもりを強いられるようになって久しい。ウェブ会議後に立ち上がるとフラついたり、丸まった背中を家族に指摘されたりすることはないだろうか。運動不足や同じ姿勢を続ける生活は、運動機能や姿勢を保持するために大切な筋肉に加え、体の芯・体幹も弱らせてしまう。体幹が崩れると体の各所に負担がかかり、「血行不良」「肩コリ」「腰痛」などに悩まされることにもなる。脂肪もたまりやすく「コロナ太り」の原因にもなる。実は、この悩みを解消するツールとして有効なのが、身近な「階段」のようだ。

昭和大学医学部整形外科の客員教授 平泉裕医師に、「気づくだけで」できる「『コロナ太り解消』のための階段歩行のルール」を教わった。

◇   ◇   ◇

私事で恐縮だが、マンション生活が久しい。部屋のすぐそばに階段はあるが、エレベーター使用がほとんどだ。

――平泉医師「それはもったいないことをしていますね。目の前に体を鍛えられるツールがあるのに、使わないなんて。私なんて、自宅はもちろん外出先でも階段を見つけると、『得した!』と思って必ず使っていますよ」

そういえば、「テレワークが続いて運動不足だから、階段トレーニングで鍛えています」と言う人がいたので、マネをして自分も階段を駆け上がってみた。すると、ひどい息切れと足の付け根の痛みというオマケ付きで1日でダウン。以来なんとなく階段を避けるようになってしまった。

――平泉医師「股関節や膝周辺に痛みが出てしまうなら、燃費の悪い上り方をしている証し。いくら頑張っても、それでは意味がありませんよ」

ダラダラ上がりはNG、正しい姿勢でないと効果が出ない

いきなりの辛口だ。「意味がない」というのはどういうことだろうか?

――平泉医師「正しい姿勢で階段を使わないと、運動効果が出ないのです。ダラダラと上ったり、むやみに駆け上がったりしては疲れるだけです」

階段を使うこと自体が良い運動だと思っていたが、どうやら階段を使うだけではダメらしい。

――平泉医師「結城さんのように股関節周辺が痛くなる人は、大抵重心がズレてしまっています。

前かがみになって階段を上がっていませんか? 通常、頭から足元まで体の中心を通る重心ラインがまっすぐに立っていることで、体は安定しています。ところが前傾姿勢になってしまうと、重心ラインが前方にシフトするので、頭と上半身を支えている股関節や膝関節周辺の筋肉への負担が増加。筋肉疲労によって痛みを引き起こしてしまうのです」

確かに、「つらい」という気持ちもあって、少しでも前に進もうと前のめりで階段を使っている気がする。

そもそも、階段で姿勢を気にすることはなかった。

――平泉医師「姿勢は大切ですよ。疲れずに燃費よく階段を使うには、体の軸である重心ラインをまっすぐに安定させて歩くのがコツ。このラインがブレると余計なエネルギーを使うことになりますのですぐに疲れます」

「重心ラインを安定させる」にはどうしたら良いのだろうか?

――平泉医師「体の芯・体幹を意識してしっかりとさせることにつきます。そのためには、腹筋と背筋、殿筋(お尻の筋肉)と腸腰筋(腰椎から大腿骨を結ぶ筋肉)といった拮抗しながら体幹を支える大きな筋肉・抗重力筋群をスムーズに動員することが大切です」

「抗重力筋」とは文字通り、重力に抗う筋肉だ。地球の重力に対して体の姿勢を支えるために機能している。下腿(かたい)・太腿(ふともも)・腹部・胸部・首など体のあちこちに張り巡らされ、収縮をしながらバランスをとっている。この筋肉がしっかりと働かないと、体幹が崩れ肩コリや腰痛、疲れなど、不具合を感じやすくなるのだ。

――平泉医師「簡単に言えば、階段昇降時には『バランスのとれた姿勢保持』が重要だということです。正しい姿勢で階段を使えば、自然に抗重力筋も体の芯『体幹』も鍛えられますよ」

具体的にはどうすれば良いのだろうか?

――平泉医師「常に両足の真上に体がくるように意識をしてください。頭から足元まで体の真ん中を貫く重心ラインを倒さずに常に真上に向くように意識しましょう。そのためには、頭も体も起こし、視線は足元ではなく前に向けると良いですね」

早速やってみた。軸である重心ラインを倒さないようにするには、想像以上に体を起こして階段を上ることになる。

背中が丸まっていると前傾しがちなので、背中を伸ばさざるをえない。うつむいていても体が倒れるので、顔も視線も上げて進行方向に向けることを忘れてはいけないようだ。

慣れるとスイスイ上がれた!

それにしても、体を起こしながら足を上げるという動作に慣れていないうえ、運動不足のためか少々フラつきがちだ。

――平泉医師「フラつくようなら、手すりを使ってください。ただし、手すりはあくまでもバランスを崩さないようにするための支え。つかんでしまうと体の重心が手すりに傾いて、かえってバランスを崩す心配があります。手すりには軽く手を添えるだけにしてください。あくまで、重心は体の中心。芯である体幹を意識しながら股関節が常に重心ライン上にあるように足を動かしていけば、股関節や膝を痛めず燃費よく進めますよ」

なるほど。慣れてくると、スイスイと階段を上れる。まるで軽自動車からスーパーカーに乗り換えた気分だ。欲が出てくると一段飛ばしで上りたくなる。

――平泉医師「一段飛ばしの大股で上れば腹部奥の筋肉(腹斜筋と腹横筋)にききますので、出っ張りがちな腹部を鍛えるのに良いですよ。燃費よく上れるようになれば、長時間の山登りなどでも疲れにくくなります」

階段を上るだけで良いのだろうか?

――平泉医師「上る時と下る時では、筋肉の動きが違います。例えば膝を伸ばす際に関係してくる太腿の前の筋肉・大腿四頭筋の場合、上りでは筋肉を収縮させながら、下りでは伸ばしながら鍛えられます。

1日の中で少しでも良いので上下両方の階段を使うように心がければ、他の筋肉もバランスよく鍛えられるので筋力増強効果は高くなりますよ」

家の中、通勤時、オフィスなど、日常生活で階段の存在は大きい。

――平泉医師「そうですね。階段を見つけたら面倒臭いと思わずに、毎日1、2階分だけでも良いので使うクセをつけてみてください。

体幹を支える筋肉である腹筋と背筋、体の中心に位置する骨盤、股関節を支える殿筋や腸腰筋も鍛えられます。体幹を意識して骨盤を真っすぐに起こせば、腰回りとお尻に筋肉がつきやすくなります。脂肪が消えて引き締まったシルエットを得られますので、ぜひ続けてみてください」

まさに「コロナ太り」の悩み解消にピッタリだ。姿勢を正し体の芯もしっかりとさせれば、気持ちが引き締まり前向きになれる気もする。

コロナ禍でうつむきがちな視線を上げ、前を向いて進むためにも、体の芯を意識して鍛えられる階段は有効なツールなのかもしれない。

【「コロナ太り解消」のための階段歩行のルール】
ルール1 重心ラインを前傾させずまっすぐに立てる意識で歩行すべし
ルール2 目線は足元ではなく、進行方向に向けるべし
ルール3 足の真上に常に体があるイメージで進むべし
ルール4 フラツキ防止には手すりを握るのではなく、手を添えて体を安定させるべし
ルール5 毎日少しずつでも良いので、上りだけでなく下りでも階段を使うべし

(イラスト 平井さくら)

平泉裕さん
昭和大学医学部整形外科/スポーツ運動科学研究所 客員教授。医療法人社団輝生会 船橋市立リハビリテーション病院。1982年昭和大学医学部卒業、87年医学博士。2002年同大学医学部整形外科学教室助教授、07年同准教授、13年同教授、16年より現職。日本整形外科学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本リハビリテーション医学会専門医なども務める。
結城未来
エッセイスト・フリーアナウンサー。テレビ番組の司会やリポーターとして活躍。一方でインテリアコーディネーター、照明コンサルタント、色彩コーディネーターなどの資格を生かし、灯りナビゲーター、健康ジャーナリストとして講演会や執筆活動を実施している。農林水産省水産政策審議会特別委員でもある。

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