自分に合うスキンケアを提案 AI美容部員「エリカ」

昨今、スキンケアやメイク、ヘアケア、ヘルスなど、美容に関わる分野のテクノロジーが進化しています。そこでIT(情報技術)×美容をテーマに、私たちの生活をより便利にするアプリやシステムなど、最新のビューティーテック情報をお届けします。今回は、約12万点のスキンケアコスメの中から自分の肌に合うものを人工知能(AI)がピックアップしてくれるアプリ、「AI美容部員」にフォーカスします。
顔写真の撮影不要でスキンケア相談ができる
「自分の肌に合うスキンケア化粧品が欲しいけど、どれがいいのか分からない」「ブランドがありすぎて選べない」「カウンターで美容部員に相談したいけど緊張する……」、そんな悩みを抱えていることはありませんか?
それもそのはず。現在、日本国内には、約12万点を超えるスキンケアコスメが存在しており、店頭販売されているものからECサイト専用品まで、多種多様。これだけの数の中から、自分の肌に合う化粧品を探すのは、容易なことではありません。
そんな悩みを解消すべく誕生したのが、スキンケアAIパーソナライズサービスの「AI美容部員」(2020年10月1日よりサービス開始、対応OSはiOS13.5以上)です。AI美容部員は、アプリを通じて、スキンケアのカウンセリングが無料で受けられるサービス。チャット形式で質問に答えていくだけで、約12万点の化粧品の中から、自分の肌に合うアイテムだけをピックアップしてくれます。顔写真の撮影やアカウント情報の登録は不要なので、手間がかかりません。
とはいえ、スキンケアコスメは、肌に直接使うもの。AIの診断に任せていいのか、ちょっと心配になりますよね。そこで、コスメコンシェルジュの資格を持つ日経doors編集部のNが開発者のエーアイエージェント代表、松本剛徹さんを直撃! AI美容部員アプリの使い方や開発の背景など、その実力に迫ります。
リコメンドされた化粧品との相性が数値で分かる
松本さん指導のもと、早速AI美容部員のアプリをダウンロードしたN。スタートボタンを押してすぐ、AI美容部員「エリカ」とのチャットが始まりました。質問に答える形で、ニックネームや性別、生年月日、自分の肌質を入力。その後、いよいよ具体的なカウンセリングに入っていきます。
カウンセリングは、肌の悩み、またはアイテムのジャンル、どちらかの観点から受けることができます。今回Nは、肌悩みをベースに相談することにしました。
一番の悩みとして「毛穴の開き」を選択すると、続けて、今の毛穴の状態や悩んでいる期間など、どんどん突っ込んだ質問が飛んできます。答えは、画面の下方に出てくる候補の中から、しっくりくるものを選ぶだけ。手入力しなくていいので、サクサク進みます。

一通り質問に答えると、エリカが肌悩みの原因と対処法、お勧めのスキンケアアイテムを予算別に教えてくれます。同時に、提案されたアイテムの詳細情報と購入サイトのリンクがチャット内に出現。商品の詳細ページでは、肌との相性が%で示される他、SNSやレビューの口コミもまとめて見ることができます。スキンケアを買うとき、口コミを参考にしている人は探す手間が省けますね。
以降、アイテムのジャンルを変えたり、悩みを変えたりして合計3つのアイテムをお勧めしてもらいました。そこでNが驚いたのは、提案された3つのアイテムのうち、すでに2つは実際に使用しているものだったこと。しかも、ECサイト専売品で、大手メーカーのものではないため「約12万点の化粧品を網羅しているというのは本当だ!」と、その実力にうなり声を上げました。

さらに、AI美容部員には、リコメンドされた化粧品を実際に購入して使用し、万が一、肌に合わなかった場合は、購入代金を全額返金する保証制度があります(対象商品のみ)。これなら、気軽にポチッても安心できますね。
2年を費やし、カウンセリングのロジックを構築
AI美容部員を体験し、興奮冷めやらないNは、続いて開発者の松本さんにインタビューを行いました。松本さんが、このサービスを立ち上げた背景には、かつて化粧品会社を経営していたときに寄せられた、あるユーザーの声があったといいます。
「化粧品メーカーやブランドの多くは、スキンケアのライン使いを推奨していますが、実際にユーザーの話を聞くと、ブランドをまたいで使っている人が多かった。洗顔は○○、美容液は○○というふうに、自分がいいと思うものを組み合わせていたんです。でも、ユーザーの視点に立って考えたとき、スキンケアの種類が多すぎて、自分だけでは選べないのではないかと思いました。
そこで、国内にあるすべてのスキンケアコスメの中から、自分の肌に合うものだけをチョイスできるサービスがあったら、化粧品で失敗することがなくなるのではないか? と思ったんです」
AI美容部員を実現するため、会社を売却した松本さんは、早速リサーチを開始。国内で販売されているすべての化粧品のデータベースを作成しながら、現役の皮膚科医や美容部員、エステティシャン20人以上とミーティングを重ね、カウンセリングのロジックを構築していったそうです。
「美容カウンセリングの理論を築くのが一番大変でした。年齢と肌質だけで数十種のパターンがあり、お手入れ方法に至っては1万以上。人によって、肌悩みもベストなお手入れ方法も異なるので、パーソナルな悩みに対応するには、できるだけ多くの情報が必要でした。これらをまとめて、データ化するのに、約2年を費やしました」

「メインとなる技術は、AIのビッグデータ分析と自然言語処理。カウンセリングのパターンと化粧品の膨大なデータをプログラムし、チャットボットを組み合わせたものでカウンセリングを行います。リコメンドに出てくる商品の口コミは、AIがネット上に出ているすべての口コミを収集してまとめたもの。常に更新されるので、最新の口コミやレビューを参考にすることができます。サービスとしてフェアでありたいので、ネガティブな口コミも排除していません」
目指すのは、美容の『ドラえもん』
2020年10月末には、AI美容部員による男性向けのカウンセリングサービスも開始した。「スキンケアの情報を得る機会が少なく、女性客が多いコスメカウンターに行きにくい男性も、気軽に利用してほしい」と松本さんは言います。
今後は大手化粧品メーカーと技術分野で提携する計画もあるそう。残念ながら、メイクに関するサービスはリリース予定がないそうですが、スキンケアに関しては、新商品とのマッチングやユーザーから商品を指定して相性を診断できるようにするなど、バージョンアップをかけていくそうです。
「ゆくゆくはボディーケアやサプリメントなどのインナーケアの提案もできるようにしていきたいと考えています。ショップに行かずとも、カウンセリングを受けられて、自分に合うスキンケアを選べるようになることは、ニューノーマルの時代にもマッチすると思います」
季節の変わり目を迎え、スキンケア迷子になりがちな人は、1度、AI美容部員のエリカに相談してみるのもいいかもしれません。

(取材・文 高橋奈巳=日経doors編集部、写真 吉澤咲子)
[日経doors 2020年10月16日付の掲載記事を基に再構成]
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