「減らす」より「補う」が正解 ダイエットの9カ条

「ダイエットというと何らか食事を制限しないといけないという考え方がまん延していますが、この考えでは、長続きしない」と話すのは慶應義塾大学医学部教授の伊藤裕さんだ。
日経ヘルスの読者アンケート(※)でも、過去5年のうちにダイエットに挑戦したことがある人に、どんなダイエットに挑戦したかを聞いたところ、「ご飯・パンなど炭水化物(糖質)を減らす」がダントツの1位で7割を超えた。
「間食、甘いものを減らす」「食事のカロリーを減らす」「食事を抜く」など、何らかの食事を減らすダイエットを挙げた人が多かった。消費カロリーより食べるから太るのであって、当然の選択だろう。
しかし、その一方で、ダイエットの結果について尋ねると、「成功してキープ」できている人はわずか21.2%、「成功しなかった」人が26.5%。そして最も多かった回答は、「成功したがリバウンドした」の52.2%となっている。
残念ながら、成功率は高くない。では、どうしたらいいのか。それはダイエットの「考え方チェンジ」だ。減らすより、むしろ栄養をとると考えるといいようだ。
しっかり栄養をとる発想で無理なくきれいにやせる
「極端な糖質制限の食事を、例えば1カ月など短期的に続ければ、確実に体重は減ります。ただ、長期的にそんな食事では栄養不足になる弊害がある」と伊藤さんは指摘する。
では、カロリー制限はどうか。「消費エネルギーより摂取カロリーが多いと太る」というのはダイエットの基本として間違いではないものの、「食事制限のダイエットをすると、ほぼ100%リバウンドします」と東京慈恵会医科大学附属病院栄養部の管理栄養士である濱裕宣さんと赤石定典さんは指摘する。「食べる量にしろカロリーにしろ、何かを減らす発想になり、結果として栄養の足りない、太りやすい体になる」という。
たんぱく質が不足すれば筋肉を作れず基礎代謝が下がる。炭水化物は糖質とともに食物繊維も含んでいるため、足りないと腸内環境が悪化しやすくなる。脂質も体温を維持したり、排せつしやすくするのに役立つ。「3大栄養素をきちんととることは、食事バランスを高め、自然と脂肪をためにくい体にします」(濱さん・赤石さん)。
実際、赤石さんは、そんな食事法で、3カ月で5kg無理なくやせたという。
二人が薦める上記のダイエット食の基本は、運動指導者の森拓郎さんの考えとも似通っている。森さんは和食に多い食材、マゴワヤサシイ食材を積極的にとることを薦める。実際、カロリー制限せず、食事に豆を足して体脂肪が減った報告もある。
なお、短期的には運動だけでやせることは難しいが、「長期的にみればダイエットに有効で、代謝しやすい良い筋肉をつけることで太りにくい体質が得られる」(伊藤さん)という。

ダイエットを成功させる太らない食事の常識9カ条
ダイエットを成功させる常識とは?
【常識1】カロリー制限はリバウンドしがち 無理にしない
カロリー制限のダイエットはリバウンドしやすいという。ビタミンやミネラル、食物繊維、たんぱく質など必要な栄養素が足りず、結果として太りやすい体に。
【常識2】「糖質オフ」はゆるく、過度な糖質オフはNG 1日200~250gは必要
糖質を極端に制限すると、筋肉がやせて基礎代謝が落ちてしまい、使われなくなった糖が中性脂肪として体内にたまりやすい。
【常識3】「脂質」はむしろ必要 ただ、飽和脂肪酸はとりすぎ注意を
脂質は重要なエネルギー源。食べたらそのまま脂肪になるわけでなく、消化・分解される。ただ、肉や乳製品に含まれる飽和脂肪酸はとりすぎ注意。
【常識4】「ベジファースト」で食後血糖値の上昇を抑える
野菜を食事の最初に食べると、食後血糖値の上昇が緩やかになり、太りにくい。最近は、わかめ(海藻:シーベジ)も血糖値の上昇を抑えると判明。
【常識5】野菜は量よりも種類 淡色230g、緑黄色120gを
厚生労働省が推奨する1日に必要な野菜の摂取量は350g。推奨の内訳は淡色野菜230g、緑黄色野菜120g。多くの種類を食べたい。
【常識6】夕食の比重を減らす 朝3:昼4:夜3目安に
夕食は睡眠に近い時間帯にとる食事なので、消費できる量が少なく、脂肪が蓄積されやすい。夕食の比重を減らす代わりに朝や昼の量を増やすだけでダイエット効果がある。
【常識7】食物繊維で腸内環境を整え糖の吸収を抑える
腸内環境を整えるのに有効なのは食物繊維。白米より、大麦や玄米、雑穀米にすると食物繊維が増える。キノコや海藻も積極的に。
【常識8】塩分を控えめにする 女性は1日7g未満に
塩分の1日の摂取基準の目安は成人女性7g未満。外食などが続き塩分の摂取量が増えると、余計な水分を体内にため込みやすくなり、体がむくむことで体重が増える。
【常識9】たんぱく質で代謝アップ 何歳からでもやせられる
加齢による代謝低下の大きな要因は、筋肉量の減少だ。筋肉を作るたんぱく質をとりながら運動し、バランスの良い食事を続けていけば、何歳からでも太らない体になれる。

マ…豆類・豆製品
ゴ…ゴマなど種子類
ワ…わかめなど海藻類
ヤ…野菜
サ…魚介類・肉・卵
シ…シイタケなどキノコ類
イ…イモ類

21試験(計940人)を解析したカナダの研究。そのうち体脂肪について調べた6試験(試験期間4~16週)では、豆類の摂取で体脂肪は0.34%減った。カロリー制限なしでも0.37%減った。(データ:Am J Clin Nutr.;電子版Mar.30,2016)

40~65歳の男女81人を玄米などの「全粒穀物」群と白米などの「精製穀物」群に分けた。全粒穀物群は、精製穀物群に比べて、安静時代謝量が上がった。これはエネルギー量換算92kcal減、1年間で体重2.5kg減にあたるという。(データ:Am J Clin Nutr.;電子版Feb.8,2017)



(※)2019年11月19日~12月3日、『日経ヘルス』の読者を対象に、ウエブ上で調査を実施。回答した女性228人について集計。
(取材・文 高宮 哲=編集部、写真 稲垣純也、スタイリング 椎野糸子、ヘア&メイク 千葉智子=ロッセット、モデル 島村まみ、グラフ 増田真一)
[日経ヘルス 2020年2月号の記事を再構成]
健康や暮らしに役立つノウハウなどをまとめています。
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