外反母趾を防ぐには 足指ストレッチでやわらかさ保つ
いつまでも歩けるための健足術(14)

女性によくみられる外反母趾(ぼし)は足指の変形や痛みを引き起こすだけでなく、体のバランスや歩く速さにも影響する。前回記事「外反母趾 親指だけでない症状、体のバランスにも響く」に引き続き、今回は「足の病院」で薦めるセルフケアや治療法を紹介する。
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足を専門的・総合的に治療する下北沢病院足病総合センター長の菊池恭太さんに、同病院で指導している足指ストレッチを教えてもらった。足の健康を保つのにも役立つため、外反母趾とは無縁という人にもオススメだ。

「まずやりたいのは、自分の両手で足指を丁寧に広げてみることです。靴を長時間履いて仕事をしていれば、それだけでも足指は閉じ気味です。足指をひとつひとつ広げましょう」
そしてその次に行いたいのは、母趾外転筋(ぼしがいてんきん)をほぐすストレッチだ。母趾外転筋は、親指をパッと開くときに働く筋肉だ。
「親指が閉じて小指の方に傾いたままだと、どんどん足指は硬直し、いざ親指を開こうと思ってもまったく動かなくなってしまいます。それを防ぐためには、自分の足の力だけで足指をパッと広げる動きを繰り返して、母趾外転筋をストレッチしていくことです」
足指のグーチョキパーやタオルギャザーも大切。
「これは足の内在筋群をほぐしたり刺激したりするために行います。足の内在筋群は5本の足指を動かすときにメインで働く筋肉です。この筋肉が硬くなっていると足指がどんどん使えなくなっていきます。それを予防するための筋肉の訓練と考えてください」
足指のグーチョキパーは、足指で順番にグーチョキパーの形を作る。チョキは親指だけ上げる形だ。
そしてタオルギャザーは椅子の前にタオルを敷いて、浅めに腰かけてから行う。
「かかとが浮かないようにして、5本の足指でタオルをギュッと握りましょう。指の付け根のMTP関節から曲げて、タオルをつかむようにしてください」
そしてタオルを少し持ち上げたら、5本の足指をパッと開いてタオルを勢いよく離す。ここまでを左右の足両方とも行ったら、アキレス腱ストレッチへ。
「アキレス腱がやわらかいと、歩行時に踏み込むとき、すねの骨がなめらかに前へ倒れるので、足の前側にかかる負担を減らすことができます。しかし、アキレス腱が硬いと、すねの骨が十分に前に倒れないため、代わりにアーチをつぶすという代償的な動きが生じてしまうのです。アキレス腱の柔軟性は、足のアーチを保つためにも必要なのです」
まずはインソールで改善を図る
だが足指の変形が進行し、日常生活にも支障をきたすようになってきたときは、早めに医療機関に相談することが大切だ。下北沢病院ではインソールを重視する。

「外反母趾の進行に伴って、足にかかる体重の分布などが変わってくると、足のバランスはどんどん悪くなります。それを食い止め、足のアーチを整えて足にかかる負担を軽減していくためにインソールは役立ちます」
医師が「インソールが必要」と判断した場合は、その人の足に合ったオーダーメイドの硬いインソールを足専門の装具士に作ってもらうことが可能だ。アーチや足の変形などをインソールで矯正するのは、足病学(ポダイアトリー)においては当然のことだという。
「当院ではスニーカー用、パンプス用、ヒール用の3パターンがあります。スニーカー用のインソールであれば、症状改善のための機能をすべて持ったものを作れますが、もしパンプスに使うものとなると、かかとを薄くしたり、足指の方の素材は少しカットしてなくしたり、機能を少しずつ削いで、薄く作っていくことになります。5cm以上のヒールに関しては、治療用として有効なものを作るのは難しいと思います」
足の変形が重度になり、インソールなどで改善が望めない場合は手術を検討することも。「足の付け根の出っ張りのもとである第1中足骨を途中で切断します。そして出っ張りが出ないように骨をずらして固定する手術が主です」
足は日常生活をとどこおりなく進めていくための要である。
「だからこそ、自分で管理していくことが大切なのです。深刻な外反母趾を遠ざけるために、自分自身でできることは毎日コツコツ続け、自分の足を守っていきましょう」
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外反母趾とは逆、内反小趾になったら?
内反小趾とは、足の小指(小趾)が内側に傾き、付け根が出っ張ってしまう状態。「ただ小指は親指に比べて柔軟なので、症状として固着化はしにくい。靴に当たって痛いときは、つま先部分が広い靴にして刺激を避け、様子を見て」と、菊池さんはアドバイスする。


(ライター:赤根千鶴子、構成:日経ヘルス 白澤淳子)
[日経ヘルス2020年4月号の記事を再構成]
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