老眼が進むとどうなる? 脳の働きまで落ちることも
快適な「視生活」を目指そう(中)

人生100年時代、見えにくさを我慢していると楽しみも半減する。老眼はなぜ進むのか、進むとどのような問題が生じるのか。単に見えづらくなるだけでなく、活動量や脳機能の低下を招く恐れもある。
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近年は高齢化を背景に老眼対策のニーズも高まっている。クイーンズアイクリニックの荒井宏幸院長も、自院への相談件数は5年前の5倍以上と話す。
老眼はそもそもレンズの役割を果たす水晶体が加齢により硬くなり、ピント調節ができなくなってくることで起こる。「水晶体の加齢による2大変化は硬化と濁り。前者は老眼、後者は白内障を引き起こす」(荒井院長)
近くを見る際、焦点を合わせるのに水晶体は厚くなるが、硬くなるとそれができなくなる。水晶体の厚みを変えるよう動く毛様体筋も加齢とともに弱まり、調節機能が低下するので近くが見えにくくなるというわけだ。

ただ見えづらくなるだけではない。「人間が受け取る情報の9割以上は視覚からとされている。見えにくくなれば脳への情報量も減るので、脳機能の低下にもつながる可能性がある」と荒井院長は説明する。実際、高齢者を対象とした調査で、視力の良い人はそうでない人に比べて認知機能が高いという報告も。

他にも、見えづらくなると転倒リスクが高まったり、外出がおっくうになったりすることで足腰の筋力低下も懸念されるなど、全身の健康に悪影響を及ぼしかねない。
一方、近年話題の「スマホ老眼」は、こうした加齢による老眼とは仕組みが異なり、「長時間小さな画面を手元で見続けることなどによる『眼精疲労』の一種。スマホ操作の時間を減らす、1時間に1回は遠くを眺めるなどして目の筋肉をゆるめることで改善が可能だ」(荒井院長)。
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目のストレスになる「強い光」対策に
強い光や、長時間のブルーライトの照射は目のストレスになることも。新顔の対策アイテムを紹介する。

(1)乳酸菌
網膜の神経細胞は、加齢やブルーライト照射などで細胞死が生じることがあるが、6カ月間KW3110という乳酸菌を摂取させたマウスではその抑制が確認された。また、眼精疲労の軽減がヒト試験で確認されている(データ:Nutrients; 10, 1058, 2018 Aug)。
(2)コンタクトレンズ
レンズ内に、光に反応して分子構造が変化する調光剤を配合。光の量によってレンズの色が変化し、装用者の眼に入る光の量が自動で調整される。対向車のヘッドライトや日中の強い日差しなど、ストレスになるまぶしさが軽減される。視界は暗くならない。


(ライター 福田[渡邉]真由美、構成 堀田恵美)
[日経ヘルス2020年2月号の記事を再構成]
健康や暮らしに役立つノウハウなどをまとめています。
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