朝食こそたんぱく質が必要 簡単黒豆牛乳で筋肉づくり

筋肉を増やすには食事でたんぱく質を「しっかりとる」ことが絶対に外せない。何をどのくらい食べれば本当に増えるの? 忙しい朝でも1品で食べられる「まぜるだけ」「のせるだけ」「レンチンするだけ」の超簡単レシピを紹介します。
育筋のために欠かせない栄養素、たんぱく質。「筋肉は肌や毛髪、ホルモンと同様、たんぱく質が材料になり、常に体内で作り替えられている。今ついている筋肉は、2~3カ月で新しいものに入れ替わる」と、立命館大学スポーツ健康科学部教授の藤田聡さん。また、「食事でたんぱく質を適切な量、種類、そしてタイミングで摂取できていないと、筋トレをしても、その効果が十分に得られないこともわかってきた」(藤田さん)。
筋肉合成のために必要なたんぱく質量は、加齢とともに増える。「これは、たんぱく質をもとに筋肉を合成するスイッチの感受性が加齢とともに衰えるため。1食あたり20gを3食とりたいが、朝食のたんぱく質が圧倒的に足りていない」(藤田さん)。筋たんぱく質は合成と分解のサイクルを繰り返していて、就寝中は分解に傾く。朝、たんぱく質をしっかり補って筋肉を合成モードに持っていくことが大切だ。
意識したいのが、筋肉合成スイッチをオンにするアミノ酸「ロイシン」と、不足するとたんぱく質の筋肉合成効果が得られにくくなるビタミンD。これらを満たす食材を取り入れて、朝から「攻め」の「育筋ごはん」を!
◎朝にたんぱく質を20g(体重kg×0.4g)以上食べる
◎上質なたんぱく質で、ロイシンを多く含む魚、肉、卵、大豆製品、乳製品を組み合わせて食べる
◎ビタミンDも十分にとる
【黒豆牛乳】濃厚でコクしっかり 朝の最強たんぱく質ドリンク!
<材料(1人分)>
蒸し黒豆 1パック(65g)
黒すりゴマ 大さじ1と1/4
きな粉 大さじ1
牛乳 200ml
はちみつ(好みで) 小さじ1
<作り方>
1. 全ての材料をミキサーにかける。
2. グラスに注ぐ。
ゆで大豆は50gでたんぱく質6.5g、ロイシン550mgがとれる、優秀な育筋食材。大豆には食物繊維や大豆イソフラボンも豊富。黒豆なら、見た目も味もいい。
<まぜるだけ!>
【サバ缶サラダ】卵とサバ缶でたんぱく質リッチ 食べ応えもしっかり!

<材料(1人分)>
サバの水煮缶 1/2缶(95g)
ゆで卵 1個
キュウリ 1/3本
ミニトマト 4個(60g)
A [マヨネーズ 大さじ1
ヨーグルト 大さじ1
カレー粉 小さじ1/4
レモン汁 少々]
塩・黒コショウ 各適宜
レタス 1枚(あれば)
<作り方>
1. キュウリは輪切りにする。ミニトマトはヘタをとり4等分に切る。ゆで卵は一口大に切る。
2. ボウルに、サバの水煮缶(汁は除く)と1を入れ、Aを加えて混ぜる。
3. 塩、黒コショウで味を調え、レタスを敷いた器に盛る。
1食100gでたんぱく質20.9g、ロイシン1600mg、ビタミンD11.0μg。育筋のために必要な栄養素がすべて入っている。n-3系脂肪酸も約3gとれる。
1食あたり体重kg×0.4gのたんぱく質で「筋肉つくれ」スイッチが入る

健康な20代の若者65人と70代の高齢者43人が0~40gの量のたんぱく質を摂取し、食後3~4時間の筋たんぱく質合成率を調べた。若者は体重1kgあたり平均0.24g、高齢者は体重1kgあたり平均0.40gのたんぱく質をとったときに筋たんぱく質の合成率が最も高まった。高齢者はたんぱく質摂取に対する感受性が低く、食事でのたんぱく質摂取量がより多く必要とされることがわかった。(データ:J Gerontol A Biol Sci Med Sci.;70,1,57-62,2015)
たんぱく質+ビタミンDで筋肉が増えやすくなる

380人のサルコペニア(加齢による筋肉減少)の高齢者を対象に、血中ビタミンD濃度と食事からのたんぱく質摂取、運動が筋肉にどのような変化を与えるかを13週間にわたって調べた。その結果、血中ビタミンDが適切な量(20ng/ml超)で、かつ、十分なたんぱく質をとり、運動をした群が最も筋肥大した。ビタミンDが不足した状態だと、運動と組み合わせて摂取するたんぱく質の効果も少なくなることが示唆された。
(データ:Clin Nutr.;37,2,551-557,2018)
<のせるだけ!>
サーモンとチーズ たんぱく質の2種類使いで楽らく育筋
忙しい朝にぴったりの「のせるだけ」レシピは、ロイシンが豊富なチーズとビタミンDが豊富なサーモンをのせたオープンサンド。筋たんぱく質を合成するために必要なのは、体内で作れない9種類の必須アミノ酸。「なかでもロイシンは、筋肉の合成スイッチを押す働きが突き抜けて高い」と藤田さん。チーズなどの乳製品はロイシンが豊富な食材の代表格。「卵、魚、肉、大豆製品、乳製品などのロイシンリッチでアミノ酸スコアが100の食材をとると、必須アミノ酸すべてをバランスよくとることができる」(藤田さん)。
サケやキノコに豊富なビタミンDは、筋肉を合成するために常に不足のない状態にしたい栄養素。「ビタミンDは日光に当たると体内で合成されるが、紫外線ケアをしている女性は不足する可能性がある。食材からしっかりとるといい」(藤田さん)。
【サーモンとチーズのオープンサンド】カッテージチーズで生クリームのコク!

<材料(1人分)>
スモークサーモン 40g
A [カッテージチーズ 45g
牛乳 小さじ1
マヨネーズ 小さじ1]
塩・黒コショウ 各適量
ライ麦パン 2切れ(60g)
<作り方>
1. Aを混ぜ合わせ、塩、黒コショウで味を調える。
2. ライ麦パンに1を塗り、スモークサーモンをのせる。
3. あればディルとレモンスライス(分量外。レモン汁でもよい)を飾る。
チーズは高たんぱくかつロイシンが豊富。カッテージチーズは100gあたりたんぱく質13.3g、ロイシン1400mg。たっぷりつけて、満腹感もアップ。
鮭はロイシンを豊富に含む。100gあたりたんぱく質25.7g、ビタミンD28.0μg、オメガ3系脂肪酸1.09gと、実はサバ缶に負けず劣らず育筋にいい成分がたっぷり。
育筋に適しているのは卵、牛乳、大豆、肉、魚! 含まれるロイシンが「筋肉作れ!」のスイッチを押す
育筋のためにぜひ覚えたい栄養成分名が、「ロイシン」。筋肉を作るために必要なのは、9種類の必須アミノ酸で、これらをバランスよく含むのが、卵や牛乳、大豆、肉や魚。必須アミノ酸のなかでもロイシンは、「筋肉の合成スイッチを入れる酵素"mTOR"を直接刺激して筋肉合成を高める」と藤田さん。ロイシンのほか、筋トレをすることによってもmTORはダイレクトに刺激される。筋トレするならロイシンリッチな食材を。mTORが活性化し、筋たんぱく質の合成がぐんぐん進む!
たんぱく質を食べて筋肉になるまで

たんぱく質はアミノ酸の集合体。口からとると胃と十二指腸で消化されて細かいアミノ酸となり、小腸粘膜から吸収される。このあと門脈から肝臓へと到達し、血液や組織にアミノ酸が遊離した状態に(アミノ酸プールという)。このアミノ酸を筋細胞が結合させた結果、筋肉が合成される。
<レンジでチンするだけ!>
豆乳と牛乳は「飲むたんぱく質」!具だくさんスープに
朝から代謝を上げていくには、温かいスープもいい。レンチンだけで出来上がるから、慌ただしいときにも時短でおなかも満足する。紹介する2種類のたんぱく質豊富なスープは、豆乳、牛乳、どちらを使ってもOK。「豆乳も牛乳も、たんぱく質とロイシンの手軽な摂取源になる」(藤田さん)。牛乳にはカルシウムが、豆乳には大豆イソフラボンが含まれる。
スープに加える具も、たんぱく質を意識。うまみたっぷりのアサリはたんぱく質はもちろん、ロイシンや鉄が豊富。高たんぱくな厚揚げや鶏ささみもプラスすれば、食べ応えもしっかり得られて、余計な間食をとるのも予防できる。
「食事でたんぱく質をとったら通勤時にはなるべく階段を選んで。昇る動作はスクワットと同様に下肢を鍛える運動。筋トレ効果が得られて筋肉合成スイッチが入りやすい」(藤田さん)。
【アサリのチャウダー】キノコをプラスしてビタミンDを補足しても

<材料(1人分)>
アサリの水煮 1缶(40g)
タマネギ(みじん切り) 30g
スイートコーン 25g
ミックスビーンズ 1/3缶(30g)
牛乳 200ml
クリームチーズ 18g
コンソメ(かりゅう) 小さじ1
パセリ(みじん切り) 少々
塩・ 黒コショウ 各適量
<作り方>
1. 耐熱ボウルにタマネギを入れてラップをかけ、600Wの電子レンジで2分加熱する。
2. 1にアサリの水煮(汁ごと)、スイートコーン、ミックスビーンズを入れて混ぜる。
3. 2にクリームチーズ、コンソメ、牛乳を加えて混ぜ、ラップをかけ、 600Wの電子レンジで5分加熱する。
4. よく混ぜて塩で味を調えて器に盛る。黒コショウをふり、パセリを散らす。
コップ1杯(200g)でたんぱく質6.6g、ロイシン640mg。骨を強くするカルシウムも200mg。レンチンすればスープに手軽に使える。就寝前はホットミルクでたんぱく補給を。
100gあたりたんぱく質20.3g、ロイシン1300mg。鉄も29.7mg含む。たんぱく質合成に関わるミネラル、亜鉛も3.4mg。缶詰だから下処理いらず。手軽に使おう。
【厚揚げ&ササミの豆乳スープ(シェントウジャン風)】ゴマとラー油で香ばしく体も温まる

<材料(1人分)>
厚揚げ 1/2パック(50g)
無調整豆乳 200ml
マイタケ 1/2パック
キャベツ 1 枚
A [鶏ガラスープの素 大さじ1/2
味噌 小さじ2
水 50ml]
鶏ササミフレーク 1/2缶
白すりゴマ 大さじ1
青ネギ(輪切り) 適量
ラー油 適量
黒コショウ 適量
<作り方>
1. 厚揚げは6等分に切る。マイタケは手で細かくほぐす。キャベツは一口大に切る。
2. 耐熱ボウルにAを入れてよく溶かす。
3. 1と鶏ササミフレークを汁ごと2に入れ、ラップをかけ 600Wの電子レンジで3分加熱する。
4. 無調整豆乳と白すりゴマを3に入れて混ぜ合わせ、ラップをかけ電子レンジで2分加熱する。
5. 器に盛り、黒コショウをふり、青ネギをのせる。好みでラー油を入れる。
コップ1杯でたんぱく質7.2g、ロイシン580mgと牛乳に負けず劣らず育筋成分がリッチ。調製豆乳よりも無調整豆乳のほうがたんぱく質量は多い。
100gあたりたんぱく質10.7g、ロイシンも910mgと豊富。料理にボリュームが出て、食べ応えしっかり。スープにサラダに、どんどん使おう。
<焼くだけ!>
たんぱくリッチなソースを万能使い 手作りバーは持ち歩きにも
ゆで野菜には、ツナやチーズを混ぜた"高たんぱくソース"をかけて焼けば、手軽なたんぱくリッチおかずに変身。お弁当のおかずにもなる。ゆで卵も作り置きしておくと便利だ。
「料理をする時間がない」というときには、プロテインが味方に(下コラム)。「ロイシンをはじめ、必須アミノ酸がすべて含まれ、筋肉を作るという観点からも利用するといい。体調も肌の調子も良くなる、という感想を持つ人が多い」と藤田さん。
理学療法士の庵野拓将さんは、「ホエイプロテインもソイプロテインも吸収スピードは違うものの筋肉合成効果は遜色ない。なお、ソイプロテインは中性脂肪を減らすなど大豆たんぱく由来の脂質代謝改善効果も期待できる」と言う。
プロテインは、お菓子の素材にも使える。混ぜるだけのプロテインバーは、小腹がすいたときの「高たんぱくおやつ」に。
【卵とブロッコリーのツナソース焼き】ツナは生サケやタラ、カジキで代用しても

<材料(1人分)>
ゆで卵 1個
ブロッコリー 1/3房(70g)
A [ツナ缶 2/3缶(45g)
ヨーグルト 大さじ2
マヨネーズ 小さじ1
黒コショウ 適量]
パルメザンチーズ 大さじ1
パセリ(みじん切り) 適量
<作り方>
1. ボウルにAを入れ、よく混ぜ合わせる。
2. ブロッコリーは硬めにゆでる。
3. 耐熱容器に2を並べ、輪切りにしたゆで卵をのせる。
4. 3に1のソースをかけ、パルメザンチーズ、パセリを散らす。
5. オーブントースターでこんがりと色づくまで8分ほど焼く。
100gあたりたんぱく質12.3g、ロイシン1000mg、ビタミンD1.8μg。ビタミンやミネラルもまんべんなく含む完全栄養食品。ゆで卵を作り置きしておくと手軽なたんぱく源に。
100gあたりたんぱく質17.7g、ロイシン1300mg。ビタミンDも2.0μgと、筋肉作りにいい成分をバランスよく含む。うまみもたっぷり。手軽に料理にプラスしよう。
【かんたんプロテインバー】時間がない! 小腹が減ったときに

<材料(10本分)>
プロテインパウダー(ココア味) 60g
A [糖質60 %オフグラノーラ※ 60g
ミックスナッツ 60g
白いりゴマ 大さじ1 1/2
太白ゴマ油(または植物油) 大さじ1
無糖ピーナツバター 60g]
熱湯 50ml
粉ゼラチン 5g
※糖質量が気にならなければ、通常のグラノーラでもいい。
<作り方>
1. ボウルにプロテインとAを入れよく混ぜ合わせる。
2. 熱湯に粉ゼラチンを入れてよく溶かし、熱いうちに1に入れて手早くまんべんなく混ぜる。
3. バットにラップを敷き、2を入れる。上にもラップをする。
4. 表面が平らになるよう同じサイズのバットの底などを使い、上からしっかり押す。
5. 冷凍庫で冷やし固めたら、10等分に切り分ける。保存するときは一つずつラップで包んで冷凍する。
※食材の栄養成分の数値は「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より算出。

(取材・文 柳本 操、写真 小林キユウ、レシピ・料理・スタイリング 熊谷有真、栄養計算 内山由香=食のスタジオ、イラスト 三弓素青、グラフ 増田真一)
[日経ヘルス 2019年10月号の記事を再構成]
健康や暮らしに役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。