おなかにくびれをつくる 背骨をひねるだけストレッチ

「美ボディーになれる」との評判が広がって、タレントや一般女性からの支持も厚いボディーメイクトレーナーの武田敏希さん。その秘訣が、背骨を左右にひねる動きだ。
「くびれを作るにはわき腹の腹斜筋を、下腹をへこませるには腹横筋を柔軟にして、しっかり使える体になることが重要。しかし、腹横筋は背骨、腹斜筋は背骨に連動した肋骨につながっているため、猫背や運動不足で背骨の動きが小さいと、しっかり使われなくなる。これが下腹が出たり、くびれがなくなる原因」と武田さん。
背骨は上から頸椎、胸椎、腰椎に分けられる。「最も動きが悪くなりやすく、最もおなかぽっこりに影響が大きいのが胸椎。だから、胸椎を中心にアプローチすることが背骨を柔軟にする近道といえる。背骨が柔らかく動けば、腹斜筋と腹横筋の動きがよくなって、日常の動きでもおなかまわりが引き締まってくる」(武田さん)。
まずは、自分が胸椎からしっかりひねれているか、背骨の動きをチェックしてみよう。

おなかまわりの筋肉がさぼっているのが、下腹が出たりくびれがなくなる原因。背骨をひねる動きは、肩や骨盤の動きに合わせて筋肉が大きく引っ張られるため、「これまでさぼっていたおなかまわりの筋肉を目覚めさせる」と武田さん。
背骨をひねる動きは、わき腹の腹斜筋や、下腹を覆う深層筋の腹横筋、その上に乗る腹直筋といったおなかまわりの筋肉を目覚めさせ、使えるようにする。
胸椎からしっかりひねることができると、背骨につながる広背筋も大きく伸びる。また、猫背で凝り固まった肩甲骨まわりの筋肉もほぐれて、姿勢が改善しやすくなる。

頸椎は、体重の1割もあると言われる頭を支えながら、頭を前後、左右、回すなど様々な方向へ動かす。胸椎は、胸を中心に胴体を支える。主に背中を丸める、伸ばす、ひねる、回すなどの動きに関わり、上半身の姿勢を左右する。腰椎は、上半身と下半身をつなぐ要で、腰を曲げたり反らせたりする。「腰をひねる」というが、実は回旋角度が小さくてひねる動きが苦手。骨盤は、中央にある仙骨が背骨につながり、背骨の土台としての役割があるため、その動きが全身の姿勢を左右する。
しっかりひねれているかまずチェック
椅子か床に座り、両ひじを持って肩の高さに上げた状態で左右にひねってみよう。下の項目に当てはまれば、くびれにくいということ。

両ひじを持って肩の高さに上げて上半身を左右にひねってみよう。肩に力が入って上がってしまうなら、背骨が硬い証拠。腕だけ後ろにいく人は、ひねったつもりでも、実は背骨がほとんど動いていない。おなかや胸からスムーズにひねれているかチェック!ひねりやすさの左右差がある人は、背骨両側の筋肉の硬さにばらつきがある。その差は、くびれラインの左右差につながってしまう。
骨盤と胸椎まわりの筋肉をほぐす、ひねりストレッチ
背骨の柔軟性をとり戻すには、まず、ストレッチ。準備編で背骨の土台である骨盤からほぐしておこう。それから背骨ストレッチ編を行えば背骨が格段に動きやすくなる。
武田さんのメソッドは、まずは背骨をしっかりひねる「ひねりストレッチ」、次にひねりながら負荷をかける「ひねりトレ」という2段階。「普段運動をしていない人は、どの筋肉を使っているのかわからず、トレーニングがやみくもな筋力アップにしかならない。最初に、ストレッチでここを伸ばすと気持ちいい、と筋肉を使っている感覚を覚えてほしい。筋肉と神経のつながりがよくなって、動きに対する感度が上がり、トレーニング効果も出やすい」(武田さん)。
ひねるストレッチで筋肉の凝りがほぐれると、関節の可動域が広がるのもメリットだ。
準備編
【骨盤ひねり】背骨の土台となる骨盤まわりの筋肉をほぐす
骨盤を左右と上下に動かすことで、骨盤の上にのっている背骨の動きがよくなり、胸椎の柔軟性を引き出せるようになる。骨盤のゆがみも解消できて一石二鳥。

<STEP2>背中は床につけたまま、腰をひねるように。右のお尻を上げて、骨盤を左に傾ける。
<STEP3>
左のお尻を上げて、骨盤を右に傾ける。
<STEP4>
腰を反らせるようにして、骨盤を傾ける。
<STEP5>
腰を丸めるようにして、骨盤を傾ける。2~5を10回繰り返す。
背骨ストレッチ編
【下ひねりストレッチ】脚を左右に倒す勢いで胸椎をひねる
あお向けで上半身を固定したまま下半身を左右に倒して、胸椎をひねる。ひねりにくいほうは脚を倒して数秒キープしよう。わき腹をストレッチできて、くびれが出やすくなる。

あお向けに寝て、ひざをそろえて立て直角に曲げる。両腕は肩の高さで左右に伸ばし、手のひらを上にする。
<STEP2>
上半身が動かないように固定したまま、両ひざを右に倒して、下半身をひねる。
<STEP3>
今度は、両ひざを左に倒す。これを10回繰り返す。
【上ひねりストレッチ】腕の重みで肩甲骨を寄せる
横向きで下半身を固定したまま上半身を大きく動かすことで、胸椎の柔軟性を上げる。ゆっくりと背骨の動きを感じながら行うのがコツ。猫背や巻き肩、浅い呼吸も改善する。

右向きに寝て、左脚を曲げてひざを直角にし、右脚はまっすく伸ばす。両腕はそろえて肩の前に伸ばす。
<STEP2>
左腕を伸ばしたまま左側にゆっくり開いて、上半身をひねる。右手は左ひざが浮かないように押さえておく。これを10回繰り返したら、反対側も同様に行う。
【ひねりトレ】負荷を高めて、筋肉に"動ける範囲"を記憶させる
筋肉の感覚を目覚めさせたら、少しずつ負荷を上げてひねっていこう。こうすることで、背骨を動かす筋肉が鍛えられる。慣れてきたら、回数を20~30回に増やして行って。
3つの「ひねりストレッチ」で、背骨まわりの筋肉を目覚めさせ、柔軟性を引き出したら、ひねりながら負荷を高めて背骨を動かす筋肉を鍛えよう。
「筋肉は骨格を支える役割も果たしているので、背骨のまわりに筋力をつけることで、いい姿勢で体を動かせるようになり、背骨の柔軟性も保ちやすくなる」と武田さん。
また、しっかりひねって鍛えることで、太りにくい体質に近づけるという。「たとえば、片足を前に出し、腰を落とすランジでも、ひねりながら行えば血液の循環がよくなって、体温も上がりやすいと考えられる。そのぶん、脂肪燃焼効果も望めるのでは」(武田さん)。
【上ひねりトレ】広背筋を鍛えてくびれ効果アップ
四つばいの姿勢から上半身を上下にひねることで、胸椎の柔軟性を保つ筋力を鍛える。上半身の動きにつられて下半身がブレないように注意して。つま先は立てて行ってもOK 。左右×10回ずつ

四つばいになって脚を軽く開き、ひざの角度を直角にする。左手を後頭部にあてて、左ひじを肩の高さに上げる。
<STEP2>
下半身が動かないように固定したまま、左ひじを上に上げて、上半身をひねる。
<STEP3>
今度は左ひじを体の下に巻き込むように上半身をひねる。肩を床に向けるイメージで。これを10回繰り返したら、反対側も同様に行う。
【下ひねりトレ】脚の重みで背骨を大きくひねる
うつ伏せで上半身を固定したまま片脚を斜めに蹴り上げて、胸椎を大きくひねる。脚の重みでジワジワと可動域が広がるのを感じよう。ポッコリ下腹の解消にも効果的。左右×10回ずつ

うつ伏せになって、両脚をそろえて伸ばす。両腕は肩の高さに上げて左右に伸ばし、手のひらを床につける。
<STEP2>
上半身は動かないように固定したまま、右脚を上げて左側に大きくひねる。
<STEP3>
今度は、左足を上げて、左側に大きくひねる。これを左右10回繰り返す。
「T-Fit」代表。NESTA全米エクササイズ・スポーツトレーナー、メンタル心理カウンセラー、食コンディショニングトレーナー。フィットネスクラブのインストラクターとして7年勤務後独立し、ストレッチダイエットジム「e-stretch」を都内で3店舗運営。著書『ひねってやせる!』(二見書房)など。
(取材・文 茅島奈緒深、写真 村田わかな、モデル MIKA、スタイリング 中野あずさ=biswa.、ヘア&メイク 千葉智子=ロッセット、図版 三弓素青、構成 堀田恵美)
[日経ヘルス 2019年10月号の記事を再構成]
健康や暮らしに役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。