歯周病やほうれい線も改善する「高速ぶくぶくうがい」

年とともに悩みが深くなる歯周病や口臭。そして、ほうれい線、たるんだフェイスライン……。「うがい」の方法をちょっと変えるだけで、それら口元の悩みをまとめて改善できることがわかってきました。食後の歯磨き習慣に取り入れられるので、続けるのもラクチン。今日から早速、始めましょう。
「高速ぶくぶくうがい」とは、口に少量の水を含み、高速で勢いよく行ううがい法。考案者の高輪オーラルケア院長の照山裕子さんは、「高速でぶくぶくする水圧で、歯や歯茎の汚れを取り、歯周病や口臭を予防する口腔(こうこう)ケア法として当初は考案した。しかし、口のまわりの"筋トレ"にもなるため、ほうれい線を改善したり、フェイスラインのたるみに効いたりしたという女性の声が多く寄せられ、驚いた」と話す。
コツは、1秒間に"ぶくぶく"を3回という高速で行うこと。毎食後の歯磨きに取り入れれば、歯のクリーニングも口のまわりの筋トレ同時にできて一石二鳥だ。
「高速ぶくぶくうがい」なら歯垢がすっきりとれる
「しっかり歯磨きをしたつもりでも、軽く口をすすいだだけでは十分に洗い流せず、歯間や歯と歯茎の間に食べかすや歯磨き粉が残ってしまう。高速ぶくぶくうがいなら、水圧で歯間や歯と歯茎の間まできれいに洗い流せる」と照山さん。
用意するものは水30mlと鏡。手鏡でなく、洗面所の鏡でもOK。水は30mlが適量。多すぎても少なすぎてもやりにくい。鏡で顔全体を見ながら行おう。
「高速ぶくぶくうがい」は口の中をピカピカにするうえ、顔の筋肉も鍛える !
「高速ぶくぶくうがい」は、口の周囲の筋肉を総動員。口元のたるみに関連が深い口輪筋、ほうれい線に関わる小頬骨筋・大頬骨筋を中心に、口角を上げる口角挙筋、二重あごに密接な顎舌骨筋などを動かす。


水を口に含んで唇を閉じたら、唇の上と下を膨らませ、上と下の前歯に水を10回強くぶつけ、吐き出す。ぶくぶくと音を立て、高速で行うのが重要。速くできないときは5回でOK。3セット繰り返す。
前かがみになりすぎると口に入れた水が口の前方に行き、正しい位置でうがいができなくなる。背中をまっすぐにした状態がベスト。
口のまわりの筋肉が衰えていると、唇を閉じる力も低下してしまう。ぶくぶくしている最中に、口に含んだ水が飛び出してしまうときは、唇を指で押さえるとやりやすい。
狙った場所に水を入れ、素早くぶくぶく ! 口のまわりの筋肉を総動員
「前でぶくぶく」ができるようになったら、「基本の高速ぶくぶくうがい」の"上"にチャレンジ。マスターしたら、さらに"下""左右"に水を動かしてみよう。唇を取り囲む口輪筋をはじめ、水を勢いよく動かすときに舌に関連する筋肉も使うため、ほおの脂肪が落ちて、小顔効果も期待できる。
「うがいの後は口が疲れて、だるさを感じるが、それだけ筋肉を使っている証拠。続けるうちにラクにできるようになる。およそ2週間で変化が表れる」と照山さん。
片側でかむくせがあると、顔の左右がアンバランスになりやすいが、やりづらいほうを重点的に行うと、偏りを解消できる。
●基本の高速ぶくぶくうがい

水圧がかかりやすいように、姿勢を良くして正面を向く。上体を倒して行うと口から水が飛び出しやすくなるので注意。
水30mlを口に含んだら、はじめは舌の上にのせるようなイメージで。口の周囲の筋肉に効かせるには、「ぶくぶく」という音が出るくらい力強く、高速で行うのがポイント。速さは1秒間に3回「ぶくぶく」が目安。

口に水を含んだら、しっかり唇を閉じる。上の前歯の裏に水を強くぶつけながら、高速で10回ぶくぶく。少しうつむくと水圧をかけやすい。
水を上の前歯に強く当てる。横から見ると鼻の下が膨らむ。ぶくぶくのタイミングに合わせてこの部分が動いていれば○。

口に水を含んだら、しっかり唇を閉じる。下の前歯の裏に水を強くぶつけながら、高速で10回ぶくぶくして、水を吐き出す。
水を下の前歯に強く当てる。横から見ると唇の下が膨らむ。ぶくぶくのタイミングに合わせて動いているか確かめよう。

口に含んだ水を左側の奥歯に強くぶつけながら、高速で10回ぶくぶくして、水を吐き出す。右側も同様に10回行う。
左側のほおがふくらむように水を含んで、左奥歯をめがけてぶくぶく。音に合わせて、ほおを速く動かそう。右側も同様に。
【応用編】4方向に首を傾ければ、もっと、ほうれい線、フェイスラインに効く !
ほうれい線やフェイスラインにより効かせたいときは、基本の上下左右のうがいに合わせて顔を傾けながら、高速ぶくぶくうがいを行うといい。
「顔の傾きに連動して、首や肩の筋肉も同時に刺激することで、口のまわりの筋肉の引き締め効果が上がる。より若々しいイメージになる」と照山さん。
●首傾けぶくぶくうがい
「基本の高速ぶくぶくうがい」に合わせ、顔も同じ方向に傾けることで、口のまわりの筋肉とつながる首と肩の筋肉も強化する。

水を口に含んで顔を上に向け、基本の「高速ぶくぶくうがい」を行う。あごから首の筋肉を刺激。
同じく顔を左側に傾け、「基本の高速ぶくぶくうがい」を行う。右側の首から肩にかけての筋肉を刺激する。

同じく顔を下に向け、「基本の高速ぶくぶくうがい」を行う。口のまわりの筋肉により負荷をかけることができる。
同じく顔を右側に傾け、「基本の高速ぶくぶくうがい」を行う。左側の首から肩にかけての筋肉を刺激する。
正しい「うがい」は口の汚れをしっかり落とす
「高速ぶくぶくうがい」の考案者・照山裕子さんに聞く
口の中に残った食べかすや汚れは、プラークが増えるもとになり、虫歯や歯周病リスクを高めてしまいます。日本では歯みがきをしない人はほとんどいません。にもかかわらず、歯周病などのお口のトラブルがなくならないのはポイントがずれているから。歯の健康を保つためには、ブラッシングはもちろん重要ですが、歯と歯が重なった部分や汚れが残りやすい歯間のケアに力を入れ、水圧によって汚れを落とすことが効果的なケースもあるのです。
しかし、診察中にうがいをしてもらうと、口をさらっとゆすぐだけなど、みなさんが思っている以上に正しいうがいができる人は少ない。歯医者にかかる直前に歯を磨いていても、うがいが不十分で、歯磨き粉がベッタリと歯に残っているのもよく見かけます。
そもそも、正しいうがいの方法は学校でも教えてもらったことがないと思います。最近は、研磨剤入りの歯磨き粉で強く磨きすぎて歯が削れたり、歯ブラシで歯茎を傷つけたりするオーバートリートメントも問題になっていますが、「高速ぶくぶくうがい」は、歯と歯茎にもやさしい方法です。歯に水をぶつけて、歯と歯の間に水を通しながら、汚れやばい菌を除去。虫歯や歯周病を予防します。
人生100年時代。舌や唇を動かす力の低下や飲み込めないといった「オーラルフレイル(口腔機能の老化)」は、全身の衰えに直結します。「高速ぶくぶくうがい」は、口のまわりの筋肉を鍛えることで、顔のアンチエイジング効果が期待できますが、舌の筋肉も鍛え、誤嚥(ごえん)や滑(かつ)舌(ぜつ)の衰えを防ぐ口腔機能訓練としても大きな効果があります。



(取材・文 海老根祐子、写真 鈴木 宏/スタジオキャスパー=静物/室川イサオ=照山さん、モデル 殿柿佳奈、スタイリング 中野あずさ=biswa.、ヘア&メイク 千葉智子=ロッセット、図版 三弓素青、イラスト いしいゆき)
[日経ヘルス 2019年6月号の記事を再構成]
健康や暮らしに役立つノウハウなどをまとめています。
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