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ロコモ対策 実は下半身の筋トレだけでは不十分

NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

体の健康を保ち、いつまでもパワフルに働くには、正しい運動と食事、そして休息のバランスが取れた生活が必要だ。そこで、著名なフィジカルトレーナーである中野ジェームズ修一さんに、遠回りしない、結果の出る健康術を紹介してもらおう。今回は、ロコモ対策に必要な、下半身の筋トレ以外のトレーニングについて。

若くしてロコモ予備軍になる人の特徴とは

ロコモとはロコモティブシンドローム(運動器症候群、通称ロコモ)の略で、関節や骨、筋肉などの「運動器」が衰えることで、自分ひとりで日常生活を送ることが難しくなる状態のこと。ロコモの人は予備軍まで含めると全国で4700万人はいるという推計もあり[注1]、実は身近な問題だ。

習慣的に運動していないだけでなく、移動もほとんどが車であまり歩かない、休日も家でゴロゴロしているという人は、将来的に足腰が弱ってロコモになる危険がある。また、過度なダイエットを繰り返している女性は、その悪影響で筋肉量や骨量が減ってしまい、ロコモのリスクがさらに高まってしまうことがある。

フィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一さんに、ロコモのリスクを判定する方法を聞いてみた。

「40cmくらいの高さの椅子から、片脚で立ち上がってみてください。腕を胸の前で組み、片方の脚をまっすぐ伸ばして床から浮かせ、反動を使わずにもう片方の脚だけで立ち上がるんです。完全に立ち上がったら3秒間、グラつかないようにキープできたら大丈夫です」(中野さん)

一方で、片脚で椅子から立ち上がれなかったり、立ち上がってもすぐにグラついてしまったり、浮かせた脚が床についてしまうような人は、ロコモ予備軍の可能性があるという。

簡単だと思うかもしれないが、実際にやってみると難しいことがわかるはず。実際、20代の女性でも筋力が不足している人は、椅子から片脚で立てない人もいる。そんな人こそ、ロコモ対策トレーニングに取り組む必要性がある。

下半身の筋トレだけではロコモ対策にはならない

「ロコモ対策というと、下半身の筋力トレーニングに意識が行きがちです。確かに足腰は体の土台であり、下半身にしっかりと筋肉をつけることで、立ったり歩いたりという基本的な動作を安定的に行うことが可能になります。しかし、実はそれだけでは対策にはならないのです」(中野さん)

[注1]J Bone Miner Metab. 2009; 27(5):620-8.

中野さんによると、下半身に筋肉をつけるだけでなく、その筋肉を使って体を動かすために必要な様々な能力も、トレーニングによって鍛えなければならないのだという。そのためには、以下のようなトレーニングが必要になってくる。

●一瞬で体に力を入れる「瞬発力」を高める
●反動を使って体を動かす
●階段を下りるときにぐっと踏ん張る力をつける
●片脚で立つためのバランス能力を高める

下半身の筋トレに加え、上記のようなトレーニングをどのように行うか、次に紹介する動画で見てみよう。

下半身の筋トレは、スクワットなどを「超スロー」で行っている。ゆっくりと8つ数えながらしゃがみ込み、同じく8つ数えながら立ち上がっている。このように、超スローで行うことで、筋力が不足している人でも、確実に下半身の筋肉を鍛えていくことができる。

一方で、瞬発力やバランス能力を鍛えるトレーニングはどうだろうか。イラストで具体的に解説していこう。

反動を利用したスクワット&フロントランジ

瞬発力を鍛えるためには、反動を使った動きを取り入れたトレーニングを行う。椅子に座り、後ろに持っていった両腕を前に振る勢いを使って椅子から立ち上がるトレーニングや、反動を利用したフロントランジやバックランジに取り組もう。

また、片脚で立つためのバランス能力も重要だ。歩いているときなど、日常生活の動作では片脚立ちしている瞬間が多い。バランス能力を鍛えるためには、実際に片脚立ちをして、目をつむるとよい。

「男女を問わずいえることですが、ロコモ予備軍になりやすいのは習慣的に運動していない人です。とはいえ、慢性的な運動不足に陥っている人が、いきなりハードな運動に取り組むと、けがの原因にもなります。そういった人は、ぜひ、今回紹介したようなトレーニングで、まずは体を動かす基本的な能力を取り戻すといいでしょう」(中野さん)

(ライター 松尾直俊、イラスト 内山弘隆)

中野ジェームズ修一さん
スポーツモチベーションCLUB100技術責任者/PTI認定プロフェッショナルフィジカルトレーナー。スポーツモチベーションCLUB100技術責任者、PTI認定プロフェッショナルフィジカルトレーナー。フィジカルを強化することで競技力向上やけが予防、ロコモ・生活習慣病対策などを実現する「フィジカルトレーナー」の第一人者。最新刊は『女性が医師に「運動しなさい」と言われたら最初に読む本』(日経BP)。

[日経Gooday2019年8月21日付記事を再構成]

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