美肌づくりや便秘にも効果 良質な脂質豊かなアボカド

果肉の2割が脂質で「森のバター」と呼ばれるアボカド。日本で売られるアボカドの多くは、メキシコ産で通年手に入る。アボカドにはお通じの改善に役立つ食物繊維や、血管の若さを保つ不飽和脂肪酸のオレイン酸が豊富。アボカドの栄養をムダなくとるための賢い食べ方を紹介する。
ギネスブックに「最も栄養価の高い果実」として登録されているアボカド。1個約230kcalで、組成成分のうち、約2割が脂質だ。とはいえ、「アボカドの脂質の多くは不飽和脂肪酸のオレイン酸で、いわゆる悪玉のLDLコレステロールを下げる働きがある」と日本大学生物資源科学部の竹永章生教授。
複数の研究を統合した論文では、アボカドがコレステロールや中性脂肪を下げるとしている。食事にアボカドを加えると、満足感が5時間持続するという研究結果もあり、無駄な間食を防げる可能性もある。
また、アボカドに期待できるのが、美肌づくりなど、アンチエイジング効果。ビタミンEを含む量が、野菜や果物の中ではトップクラス。Eには、細胞にダメージを与える過剰な活性酸素を無害化する抗酸化作用がある。この効果をしっかり得るなら、ビタミンCが豊富なかんきつ類などと合わせるのがいい。「ビタミンEは活性酸素を無害化すると同時に、効力を失ってしまう。それを還元するのがビタミンC」(竹永教授)だからだ。
さらにバナナの約5倍の食物繊維を含み、お通じ改善作用も抜群。上手な食べ方を覚えよう。
【栄養の知識】ゴボウにも負けない食物繊維、生で食べて手軽に腸活
「アボカドには食物繊維が多く、整腸作用が高い」(竹永教授)。不溶性、水溶性のどちらも適度に含まれるのが魅力だ。食物繊維の総量は、アボカド小1個(100g)と、同じく生食できるバナナ中~大1本(100g)とを比較しても、約5倍。

アボカドの健康効果の源はコレ!
(1)コレステロールを調整するオレイン酸
アボカドの脂質の多くは、オリーブオイルにも豊富な不飽和脂肪酸のオレイン酸。悪玉コレステロールを減らすなど、血中コレステロールを調整する良質な油だ。
(2)体内の余分な塩分を排出するカリウム
カリウムの含有量は野菜や果物の中でトップクラス。カリウムは体内の過剰な塩分(ナトリウム)や水分を排出させるため、高血圧やむくみ対策になる可能性が。
(3)食物繊維でお通じ改善
アボカドは食物繊維が豊富。腸内環境を改善し便を柔らかくする水溶性食物繊維、便のカサを増す不溶性食物繊維をおよそ1:2の割合で含む。
【選び方のコツ】売り場で「ヘタ」を確認。色や弾力も参考に
「黒に近い緑で皮にツヤがあり、手に吸いつくような弾力があるものが食べごろ」と緑川さん。「食べごろを過ぎるとヘタが取れるので、売り場ではまだヘタ付きのものを選ぶといい。ヘタが取れ、その跡が黒いものは、中も傷んでいる可能性が高い」(緑川さん)。

【食べ合わせのコツ】ビタミンCと合わせて抗酸化作用アップ
アボカドには抗酸化作用のあるビタミンEが含まれている。ビタミンEの働きを助けるのが、ビタミンC。アボカドの抗酸化力を高めるには、ビタミンCが豊富なレモンやオレンジ、ブロッコリーなどを合わせるといい。「アボカドには酸味と甘味が少ないため、かんきつ類は味の相性もいい」(緑川さん)。

【保存のコツ(1)】追熟させたいなら常温で。ひと口大で冷凍保存も可能
買ってきたアボカドがまだ硬い場合は、食べごろまで追熟させよう。「冷蔵庫に入れると追熟せず、温度が低すぎると低温障害が起こる。15~20℃くらいの室温で追熟を。早く追熟させたいときは、紙袋にリンゴやバナナと一緒に入れ、エチレンガスを発生させるといい」(緑川さん)。

【保存のコツ(2)】タマネギと一緒に密閉容器に。3~5日間変色を防ぐ
アボカドの変色を防ぐには、空気に触れさせないことが大切。「切り口にレモン汁を塗るのは有名だが、効果は数時間。1日以上の保存は、切ったタマネギと一緒に食品保存容器に。米国の研究でタマネギなどにも含まれる硫黄化合物に変色を防ぐ効果があると確認された」(緑川さん)。

●アボカドの上手な食べ方レシピ
キウイ、ヨーグルトの腸活ドリンク
飲み応えあるリッチな食感を生むアボカドはスムージーにぴったり。アボカド同様に食物繊維が豊富なキウイ、腸内環境を改善するヨーグルトで作る腸活スムージー。


抗酸化ビタミンと合わせアンチエイジング
アボカドのビタミンEと、その働きを助けるグレープフルーツのビタミンCを合わせた抗酸化メニュー。スモークサーモンや甘エビとも味の相性がよい。


豆のビタミンB2で脂質の代謝をサポート
ビタミンや食物繊維豊富なアボカドだが、たんぱく質は少なめ。そこで、たんぱく質豊富な豆を使った一皿を。ひよこ豆は脂質の代謝に不可欠なビタミンB2も含む。


味噌とアボカドはベストな組み合わせ
味噌汁は血圧を上げないとされているが、それでも塩分が気になる人は、アボカドを具材に。「味の相性もいい。さっと火を通す程度がおいしい」(緑川さん)。


日本大学生物資源科学部教授。農学博士。日本大学農獣医学部食品工学科卒業。同大学大学院農学研究科修了。専門は食品化学。食品中の脂質に関する研究を行う。「アボカドは加熱せずに食べられるのが魅力。良質な脂質が多く、腹持ちもいいため、ダイエットにも役立つ」
アボカド料理研究家。管理栄養士。東京農業大学卒業。大学でアボカドの機能性を研究し、管理栄養士の資格を取得。近著は『アボカドがあればごちそうレシピ』(SBクリエイティブ)。「毎日1/2個程度のアボカドを食べていると、肌ツヤやお通じがよくなると実感しています」
フードディレクター。雑誌、本、広告、動画まで、料理に関する企画、編集、レシピ作成、スタイリングを行う。担当した料理本は70冊以上。
(取材・文 村山真由美、写真 川上輝明、レシピ考案・料理・スタイリング 熊谷有真、栄養計算 内山由香=食のスタジオ)
[日経ヘルス 2019年4月号の記事を再構成]
健康や暮らしに役立つノウハウなどをまとめています。
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