脳の機能狂わす歪んだ姿勢 楽々エクササイズで矯正
脳のコンディショニング術(3)

趣味でやっている運動のパフォーマンスをアップさせたい、あるいは、階段をスタスタ下りられなくなった現状をどうにかしたい、などと思っているビジネスパーソンも少なくないだろう。とはいっても、きついトレーニングは正直厳しい……。そんな人に試してほしいのが「脳のコンディショニング」だ。これは、トレーナーの江口典秀さんが提唱している「トータルニューロコンディショニング(TNC)」という最新のメソッド。第2回「脳活性化で体機能向上 アスリートも励む赤ちゃん返り」では、赤ちゃんの発達段階におけるスイッチの入れ直しをする方法を紹介したが、今回は正しい姿勢を保持できるようにするためのエクササイズを紹介しよう。
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第1回「加齢で衰えた体のキレ 脳の感覚チェックで取り戻す」でも紹介した通り、私たちが普段、何気なく行っている立位姿勢は、実は常に脳がコントロールしている。視覚、平衡感覚(前庭器官がつかさどる)、体性感覚(皮膚、筋肉、関節などにあるセンサーがつかさどる)の情報が統合されて、運動神経を通じて筋肉に伝えられた結果、バランスよく立てるのだ。
もちろん、曲がった姿勢でも立つことはできる。しかし、不安定な姿勢の場合、体を垂直に保持するために互い違いに筋肉を収縮させなければならない。また、倒れないよう常に筋肉を緊張させてバランスを保持しなくてはならない。そうした状態では立位姿勢を保持するだけでも大変であり、素早く反応して動くことや、しなやかに体を動かすことの大きな妨げにもなるのだという。
つまり、美しくバランスのよい姿勢は、負担なく効率の良い運動やランニングフォームなどの基盤となる、というわけだ。
●姿勢のチェック

耳、肩の真ん中、股関節が一直線になっているかどうかを見る。

首が前に出ていたり、骨盤が後傾している人が多い。こういう場合、感覚器や脳の機能が低下している可能性がある。
上記の姿勢チェックで正しく立てていない人は、何らかの原因で神経系の機能がうまく働いていない可能性もある。心当たりがある人は、第2回「脳活性化で体機能向上 アスリートも励む赤ちゃん返り」で紹介した寝返り、ムカデ運動、四つばいなどのエクササイズとともに、正しい姿勢を保持できるようにするための次のエクササイズを行おう。
●エクササイズ
【前後シーソー(10回)】
目線は前方を維持したまま、股関節からお尻を突き出すようにして、体を前に倒していく。手はリラックスさせて手のひらを外に回しながら体を起こす。息を吐きながら倒し、吸いながらゆっくりと起こす。これは、姿勢を調節する神経を刺激し、背中の筋肉を活性化するエクササイズ。筋肉の張り感の緩和にもなる。起床後に行うと、体が目覚めスッキリとする。
【足踏み(開眼左右各10回、閉眼左右各10回)】
右側を意識して強く足踏みをする。その際、右側の頬を舌で押す。左側も同様にする。これは、右脳と左脳のバランスを整えるエクササイズ。姿勢が整い、安定した歩行につながる。
【側屈(開眼左右各5回、閉眼左右各5回)】
両手を上に上げて、ゆっくりと側屈して背骨を動かす。このとき目線は側屈する側の手の指先に向け、最終的に反対側(右に側屈しているなら左足側)のかかとまで持っていく。背骨の周囲には、脳へと情報を伝える神経や多くの感覚センサーがあるため、背骨を一つひとつ動かすことをイメージしながら曲げる。姿勢の調節を促し、肩こりや腰痛の予防につながる。

腰を使っていなかったり、腕が体の前に来てしまうのはNG。

体がきれいなCになるように動かす。
日常生活や仕事中などにおすすめのバランスボール
デスクワークをする時などは、バランスボールがおすすめ。背骨には多くの感覚センサーがあり、なるべく動かしたほうが脳の活性化につながる。逆に、たとえいい姿勢であっても長時間じっとしていると、脳の機能が低下してしまう。前後左右に動いたり、時々跳ねたりするといい。
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それぞれのエクササイズは簡単なものだが、正しく行うのは意外に難しいと感じた人もいるだろう。脳の機能を向上させるためには、まず、これらをマスターすることから始めよう。次回は、より巧みな動きができるようになるためのエクササイズを紹介する。
(文 村山真由美、写真・動画 鈴木愛子)
第1回 加齢で衰えた体のキレ 脳の感覚チェックで取り戻す
第2回 脳活性化で体機能向上 アスリートも励む赤ちゃん返り
第4回 脳の機能高めるエクササイズ 体のキレが一段とアップ

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