若返る呼吸筋ストレッチ 副交感神経優位で不安和らぐ

呼吸数が多く、浅い呼吸だと、交感神経が優位になるうえ、不安を感じやすいとわかってきた。そこで、呼吸数を少なくし、気持ちが落ち着くストレッチを。姿勢が良くなる効果も期待できる。
1つだけ行うなら「これだけ呼吸筋ストレッチ」
呼吸数が減り、気持ちも落ち着く。複数のストレッチを毎日行うのは大変、1つだけにしたいという人にお薦めなのが、これ。肩甲骨まわりの複数の呼吸筋をほぐすことで、姿勢よく、呼吸をしやすい状態に。
【ゆっくりした呼吸に導く】これだけ呼吸筋ストレッチ(1セット3回)
腕を上げて開いて回す動きで、複数の重要な呼吸筋にアプローチするストレッチ。肩甲骨の動きを意識して行うのがポイントだ。

手の甲を内向きにして、人さし指と中指同士を合わせるような形で、腕を伸ばす。鼻から大きく息を吸って、ゆっくりと口から吐く。ひじが90度になる程度までぐっと下げる。鼻から吸って口から吐く。胸を大きく開くのがポイント。深い呼吸がしやすい状態に導く。両手を目の前に引き寄せ、手の甲を合わせる。同じく、鼻から大きく吸って口から吐く。肩甲骨を大きく広げるのがポイント。

本気で呼吸筋をほぐしたいなら「部位別呼吸筋ストレッチ」
本気で呼吸筋をしなやかにしたい人はこちらのバージョンにチャレンジ。吸う筋肉(吸息筋)、吐く筋肉(呼息筋)それぞれに、呼吸を使ってアプローチしていく。
1【猫背解消】背中の吸息筋ストレッチ(1セット3回)

背中の吸う筋肉をストレッチ。手を伸ばす際に息を吸うのがポイントだ。背中の凝りを取ることで、美しい姿勢に導く。
指を組んで胸の上に置き、口からゆっくり息を吐く。このとき、体が後ろに反らないように注意しよう。鼻から吸いながら、腕を前に伸ばし、背中を丸める。お腹を凹ませ、大きなボールを抱えるイメージで。肩甲骨が外側に開くのを意識しよう。
2【吐く筋肉の弾力UP】胸の呼息筋ストレッチ(1セット3回)

胸の吐く筋肉をほぐし、弾力を高めるストレッチ。吐きながら、肩甲骨が背中の中央に寄るのを意識しよう。
体の後ろで両手を腰の高さで組み、ゆっくり鼻から息を吸う。椅子の背が邪魔な場合は、立って行ってもよい。ゆっくり口から息を吐きながら、組んだ両手を腰から離し、胸を大きく開き、肩を後方へ引っ張る。息を吐ききるまでストレッチ。
3【わき腹の筋力UP】お腹・体側の呼息筋ストレッチ(1セット3回)

お腹や体側の吐く筋肉をストレッチ。ひじを頭上に上げる際、体が前後に曲がらないように気をつけて。
片手を頭の後ろに当て、片手を腰に当てる。鼻から息をゆっくり吸う。頭上のひじが体の前後に反らないよう、横に真っすぐ伸ばす。口から息をゆっくりと吐きながら、頭に添えている手のひじを上に持ち上げる。背中が丸まらないよう、体を真横に倒すイメージで。
4【呼吸を楽にする】胸の吸息筋ストレッチ(1セット3回)

息を吸うときに使う首の前面と、胸の上部の筋肉をほぐすストレッチ。姿勢が良くなり、呼吸が楽になる。
胸の上部に手を重ねて置く。肩は下げてリラックスした状態に。口からゆっくり息を吐く。鼻からゆっくり息を吸いながら、胸が反り返らないよう両手でしっかりと押さえる。あごをやや斜め上に突き出し、胸を広げながら、背すじを伸ばす。
ポイントは「呼吸の数」。呼吸数で自律神経はコントロールできる
自分が1分間に何回呼吸しているかと意識したことがあるだろうか。実は、呼吸数が自律神経の面でも、心の面でも重要なことがわかってきた。
「呼吸の数は、自律神経をコントロールする手段といえる」と話すのは、東京有明医療大学の高橋康輝准教授だ。呼吸数が少ないと、ゆっくりとした深い呼吸となり、多いと、速くて浅い呼吸になる。「リラックス時に副交感神経が優位になると、呼吸がゆっくりになると思っている人がいるが、逆。呼吸がゆっくりになる=つまり呼吸数が少なくなると、副交感神経が優位になる。つまり、呼吸のリズムが自律神経を左右する」と同大学の本間生夫学長。
呼吸の数は、心にも影響を与える。「教科書では、人間の呼吸数は1分間に約15回とされる。もちろん12回の人もいれば、18回の人もおり、医学的な問題はないが、心理面を見ると12回の人よりも18回の人のほうが不安度が高いということがわかった」と本間学長は話す。




(取材・文 御船晶子=日経ヘルス編集部、写真 稲垣純也、スタイリング 椎野糸子、ヘア&メイク 依田陽子、モデル MIKA、図版 三弓素青 グラフ/増田真一)
[日経ヘルス 2018年7月号の記事を再構成]
健康や暮らしに役立つノウハウなどをまとめています。
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