アトピーに新薬登場 2週に1回、腕や太ももに注射

アトピー性皮膚炎治療の基本は、肌の保湿。そして、ステロイドやタクロリムス(商品名プロトピック他)の外用剤を適切に使い、炎症を抑えることだ。ただ、大人になっても症状をうまくコントロールできないケースは少なくない。日本医科大学付属病院皮膚科の佐伯秀久教授は「こうした患者では、炎症反応が皮膚のバリア機能を低下させ、そのことでさらに炎症を悪化させるという"悪循環"が起きている」と話す。
"悪循環"をうまく断ち切るために期待されるのは、外用剤によって肌の状態を改善させる基本の治療に、他の治療法をプラスする方法だ。例えば、2008年には免疫抑制薬のシクロスポリン(ネオーラル他)がアトピー性皮膚炎にも使えるようになった。難治例には朗報だったが、腎臓障害、血圧上昇、胃部不快感などの副作用があるため、使いにくい場合もあった。

治療の新たな選択肢が求められるなか、2018年4月に発売されたのがデュピルマブ(デュピクセント)だ。2週に1回、腕や腹、太ももに注射する。アトピーに効果を表すメカニズムについて佐伯教授は「アトピー発症に関わる免疫細胞が作り出し、皮膚の炎症を起こしたり皮膚のバリア機能を低下させるインターロイキン(IL)-4とIL-13という物質がある。デュピルマブはこれらの働きをピンポイントでブロックする抗体医薬。高い効果が期待できるとともに、安全性は比較的高い」と解説する。

国内で行われた臨床試験では、デュピルマブとステロイド外用剤による治療は、ステロイド外用剤単独の治療と比較して、皮膚症状やかゆみなどを大幅に改善。佐伯教授は「皮膚症状の"悪循環"を断ち切って、良い循環へと変えているといっていい」と話す。
期待が高い一方で、新薬だけに慎重な使用も求められている。現在、治療の対象となっているのは、既存の外用剤治療で十分な効果が得られず、強い炎症を伴う皮疹が広範囲に及ぶ場合だ。さらに厚生労働省は、処方する医師は主に皮膚科やアレルギーの専門医とするなど、基準を細かく定めた。

デュピルマブによる治療の検討をしたい場合は、あらかじめ皮膚科などに問い合わせをするのがいいだろう。

(ライター 荒川直樹)
[日経ヘルス2018年7月号の記事を再構成]
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