子供より大人に多い帯状疱疹 注意すべき年代は?

この記事では、今知っておきたい健康や医療の知識をQ&A形式で紹介します。ぜひ今日からのセルフケアにお役立てください!
(1)20代
(2)30~40代
(3)50歳以降
正解は、(3)50歳以降 です。
かかりやすいのは、免疫力が低下し始める50歳以降
赤い発疹が帯のように広がる「帯状疱疹」は、水ぼうそう(水痘)を引き起こす「水痘・帯状疱疹ウイルス」による感染症です。多くの場合、皮膚の症状よりも、体の奥がチクチク・ピリピリする痛みが先に現れるため、頭痛や腰痛、五十肩、狭心症などと勘違いする人も少なくありません。発疹が出るのは痛みが1週間ほど続いた後で、虫刺されのような赤い発疹が胸やおなか、顔などに帯状に広がります。発疹は次第に水疱(みずぶくれ)になっていきます。
東京逓信病院副院長・皮膚科部長の江藤隆史氏は、帯状疱疹が起こる仕組みをこう説明します。「子供の頃に水ぼうそうにかかると、治った後も、生き残ったウイルスが脊髄神経の『後根』という知覚神経の根っこに逃げ込み、30~40年もの長い間隠れています。大人になって免疫力が低下したとき、この潜んでいたウイルスが再び暴れ出し(再活性化)、発症するのが帯状疱疹です」
江藤氏によると、日本の成人の9割以上は水痘・帯状疱疹ウイルスに感染したことがある(抗体を持っている)ため、帯状疱疹はほとんどの成人に起こり得る病気といえます。発症率が増えてくるのは、免疫力が低下し始める50歳以降(図1)ですが、「なかでも帯状疱疹になりやすいのは、仕事が忙しくて『絶対に休めない』というストレスフルな状態のとき。加えて、高齢者や、抗がん剤・免疫抑制薬などを使う人も、免疫力が下がってウイルスが再活性化しやすい状況にあるので、帯状疱疹を発症するリスクが高まります」と江藤氏は話します。

反対に、帯状疱疹になりにくいのは、幼稚園・保育園の先生や小児科医など、水ぼうそうの患者に接する機会が多い人。「彼らの周りにはしょっちゅうウイルスが飛び交っていて、ウイルスを見つけるたびに免疫機能が反応し、活発に働いてくれるからです」(江藤氏)
予防にはワクチンが有効
帯状疱疹の治療の基本は、抗ウイルス薬の点滴、あるいは内服ですが、抗ウイルス薬を使ってウイルスの増殖が止まるのにかかる時間は約2日半。電車のブレーキをかけても瞬時に止まらないように、病気が少し進んでからようやく治まり始めます。「帯状疱疹になるのは、疲れやストレスで免疫力が低下している証。そんなときは安静あるのみです。抗ウイルス薬の投与期間は7日間なので、その間はできる限り入院して、ゆっくり過ごしてください」(江藤氏)
帯状疱疹における最大の問題点は、症状が治まった後に、「帯状疱疹後神経痛」という後遺症が残る恐れがあることです。「これは帯状疱疹の発症から3カ月以降に現れる痛みで、長ければ10年以上、耐えられないほどの強い痛みが続きます。帯状疱疹後神経痛を起こしやすいのは、発疹がひどい人や高齢者、そして治療開始が遅れた場合です。神経がダメージを受けた後で薬を使うと、帯状疱疹後神経痛が出やすくなるので早期受診が大切です」と江藤氏は強調します。
帯状疱疹の予防には、水ぼうそうのワクチン(水痘ワクチン)が有効です。元々このワクチンは小児向けでしたが、2016年より50歳以上の成人に対しても帯状疱疹予防を目的としての適応が拡大されました。ワクチン接種により、加齢に伴って落ちてきた水痘・帯状疱疹ウイルスへの免疫力を再び高めることができます。小児に接種するだけあって安全性の高いワクチンで、自費診療となるので費用は1万円前後です。
「帯状疱疹のつらさを考えれば、50歳を過ぎたら全員がワクチンを接種するべきだと思いますが、まだ認知度は低いようです。今後は成人も積極的に接種することをお勧めします」と江藤氏は話しています。
(日経Gooday編集部)
[日経Gooday2018年5月28日付記事を再構成]
健康や暮らしに役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。
関連キーワード