中性脂肪減らす運動 お勧めは「スロースクワット」

一般に、飲酒によって中性脂肪が上がるといわれているが、適量までなら中性脂肪は上がらないことを「中性脂肪の元凶 実は『酒』より『おつまみ』だった?」で紹介した。そして、中性脂肪を減らす食事のコツについては、前回「中性脂肪減らす食事 とりたいのは『オサカナスキヤネ』」でお伝えした。今回は中性脂肪を減らす運動の方法について、酒ジャーナリストの葉石かおりが栗原クリニック東京・日本橋の院長・栗原毅さんに聞く。
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中性脂肪対策というと、食べ物だけでなく、やはり運動もつきものであろう。運動というと、真っ先に思いつくのはジョギングや水泳といった有酸素運動だが、先生、実際はどうなのでしょう?
有酸素運動だけでなく、無酸素運動も
「中性脂肪を減らしたいのであれば、有酸素運動に加えて、無酸素運動、つまり筋トレなどをすることをお勧めします」(栗原さん)
こう聞いて、「えーーっ! 有酸素運動だけじゃダメなの??」と心の中で思っている人も多いのではないだろうか。実際、脂肪を減らすなら有酸素運動、具体的にはウオーキング、ジョギングなどがいいと思われがちだ。
「有酸素運動だけを続けていても、なかなか中性脂肪が下がらない人がいます。なぜ、下がらないのか? そのカギとなるのが『脂肪筋』です。脂肪筋とは文字通り、筋肉の中にある脂肪を指します。最近の研究では、この脂肪筋が問題視されており、まず脂肪筋を減らさないと脂肪肝や血液中の中性脂肪が減りにくいことが分かってきたのです。脂肪筋をとるには、有酸素運動に加え、無酸素運動(筋トレ)を併用するのが有効です」(栗原さん)
スロースクワットのやり方
確かに、これは実体験をもって筆者も理解している。週に3~4回、4キロほど走っていたが体重、中性脂肪ともになかなか減らなかった。しかし筋トレを始めた途端、滞っていた水が流れるかのように、するっと体重が落ち、中性脂肪も基準値に下がったのである。もちろん個人差もあるのだと思うが、筋トレはやはり効くのだ。今はウオーキングまたは室内での踏み台などの有酸素運動に加え、筋トレを欠かさない。
栗原さんによると、無酸素運動の中でも特に「スロースクワット」が有効で、実際に患者にも勧めているという。
「筋トレなどの無酸素運動により筋肉が大きくなる際、体脂肪が分解されます。中でもスロースクワットでは、スクワットをする際、完全に足を伸ばさないことでふくらはぎの血管がずっと圧迫を受けたままになり、筋肉が酸素不足状態となります。実際よりも『強い運動をした』と脳が錯覚することで、軽い運動にもかかわらず筋肉が太くなりやすいのです」(栗原さん)

スクワットは、大腿四頭筋やハムストリングス、それにふくらはぎの筋肉など、鍛えられる筋肉が大きく、トレーニングによる基礎代謝アップや脂肪燃焼効果がより多く期待できる。では、具体的にどうすればいいのだろうか。
「やり方は簡単です。まず足を肩幅程度に開き、腕を胸の前で交差させます。膝を軽く曲げた状態からゆっくりとスクワットを行います。このとき、下がったところで動きを止めず、すぐに上がること。5秒かけて下がり、5秒かけて上がる。これを朝晩、各5回ずつ計10回行います。非常に軽い運動ですが効果はてきめん。私の患者さんで習慣化できた人は、中性脂肪の数値が下がっています」(栗原さん)

ということで筆者も早速、日々の筋トレにスロースクワットを取り入れてみた。簡単そうに思えたが、やってみるとたった5回だけでカラダが熱くなる。普通のスクワットよりも効きそうだということが、太ももの張りでよく分かる。思い立ったら家の中でもすぐできるので、これなら続けられそう。
「スロースクワットを続けていくと、おおむね筋肉の中の脂肪(脂肪筋)、肝臓、内臓、皮下脂肪の順番で脂肪が減っていきます。スロースクワットにかかる時間はわずかなもの。継続することが一番大切です」(栗原さん)
栗原さんは、スロースクワットなどの無酸素運動をした後、ウオーキングなどの有酸素運動をするといいと話す。「片方だけに偏らず、有酸素運動、無酸素運動ともにバランスよく行うのが大切です」と栗原さんは話す。
お酒を適量たしなみ、食に留意し、無酸素運動と有酸素運動をバランスよく行う。思っていた以上に、中性脂肪を減らすのは難しくなさそうである。
(エッセイスト・酒ジャーナリスト 葉石かおり、イラスト 堀江篤史)

[日経Gooday 2018年2月2日付記事を再構成]
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