健康のため月100キロラン 逆に体に悪い?

この記事では、今知っておきたい健康や医療の知識をQ&A形式で紹介します。ぜひ、今日からのセルフケアにお役立てください。
(1)ホント
(2)ウソ
正解は、(2)ウソ です。1カ月に「100km以上」ではなく「200km以上」走ると、ケガの発生率がグッと高まり、男性ホルモンの分泌も減ります。
運動はやればやるほど体にいいわけではない
適度な運動は体に良く、寿命を延ばすことが知られています。台湾の国家衛生研究院が41万6175人を平均8年間追跡した調査でも、「毎日15分、中程度の運動(ウオーキングなど)をする人」の死亡率は「まったく運動しない人」より14%低く、平均寿命が約3年長いことが分かっています[注1]。
ただし同研究は、「運動はやればやるほど体にいいわけではない」ことも示しました。1日90分までは、1日の運動時間が15分増えるごとに死亡率が4%ずつ下がっていったものの、1日90分を超えると、死亡率は変わらなくなっていたのです。
はたして「適度な運動量」というのはどれくらいなのでしょうか?
月200km以上走る人はトラブルを起こしやすい
市民マラソンの世界では、「1カ月に走る距離は200km以内に」といわれています。統計上、1カ月に200km以上走るとケガの発生率が高まるというのがその理由です。
ドクターランナー(事故に備えて選手と一緒に走る医師)として多くの市民マラソン大会やトライアスロン大会に出場している、よこすか女性泌尿器科・泌尿器科クリニック(神奈川県横須賀市)院長の奥井識仁さんの調査でも、やはり、月間の走行距離が200kmを超えるランナーは、健康面でのトラブルを起こしやすいことが分かりました。
例えば、主要な男性ホルモンであるテストステロン。奥井さんが45~55歳の男性市民ランナー43人について、1カ月間の走行距離と血中で遊離しているテストステロンの濃度(遊離テストステロン値)を調べた結果、「走る距離が100kmくらいまではテストステロンの分泌が増えますが、120km辺りから減り始め、200kmを超えると大きく減っていたんです」(下図)

この調査では同時に「医療機関の受診日数」も調べましたが、200km以上走った人たちは、明らかに受診日数が多く、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)や不整脈など循環器系の異常が認められた人も4人いました。
運動のやりすぎで健康を損ねては元も子もありません。何事にも熱心で、ストイックに結果を追い求めてしまう傾向のある人は、くれぐれも注意しましょう。
[注1]Lancet. 2011 Oct 1;378(9798):1244-53.
[日経Gooday 2017年8月21日付記事を再構成]
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