20代・30代・40代 女性ホルモンと上手に付き合おう

女性の体と心は、常にエストロゲンとプロゲステロンという女性ホルモンに左右される。生理周期や妊娠が成立するのも、女性ホルモンが働くおかげだ。
「女性ホルモンは卵巣から分泌されますが、『ちゃんと出して』と指令を出すのは、脳の"視床下部"という箇所です。視床下部は自律神経の司令塔でもあり、ストレスや不規則な生活による自律神経の乱れが、女性ホルモン分泌の乱れにつながります」と、成城松村クリニック院長の松村圭子さん。本来、女性ホルモンが安定する20代に生理不順などが増えているのも、ストレスによる自律神経の乱れが原因だそう。


30代から"プチ更年期"を意識して体をいたわる
女性ホルモンの分泌量は25歳頃をピークに、40代後半で更年期を迎えるまで、緩やかに減少。「特に生理前は、女性ホルモンの分泌の急変動によって、バランスが崩れやすく、イライラ感が募るなどPMSで悩む女性が増えています」。ホルモン分泌の変動が大きい生理前の時期を「30代のうちから"プチ更年期"と捉えることが大切」と松村さん。「この時期を上手に乗り切るスキルを持つと、ホルモンバランスの乱れが激しい更年期もラクになります。無理せず体を休め、自分なりのリラックス法を見つけておきましょう」

【ホルモンバランス良好期:25~34歳】
女性ホルモンの分泌が安定する時期だが、ストレスや不規則な生活で自律神経が乱れて生理不順になったり、不定愁訴が出たりすることも。
主なトラブル&病気
生理不順、生理痛、めまい、疲れが取れないなどの不定愁訴
上手な付き合い方:朝早く起きて夜しっかり眠る習慣を
たっぷりの睡眠、休息を取ることで自律神経のバランスも整い、多少のストレスに影響を受けなくなってくる。規則正しい生活も心がけて。
1.起床時間を一定にしよう
就寝時間が遅くなっても、起床時間は一定に。休日の朝でも、起床時間を遅らせるのは1時間以内にする。
2.就寝2時間前からスマホの電源をOFF
スマホの明るい光は交感神経を刺激して、睡眠の質が悪くなる原因に。就寝2時間前からスマホを見ない意識を。
3.寝る直前に歯磨きをしない
歯磨きに使われるミント系の成分で目がさえてしまう。寝る前より、食後すぐに歯を磨くのがおすすめ。
【ホルモン下り坂期 35~44歳】
緩やかに女性ホルモンが減り始める"プレ更年期"。自律神経が乱れやすくなり、ホルモンバランスに影響を与えてPMSになることも。子宮内膜症、子宮筋腫も発症しやすくなる。
主なトラブル&病気
PMS、子宮内膜症、子宮筋腫など
上手な付き合い方:生理前は"プチ更年期" 意識して休んで
ホルモン分泌が変動する生理前はイライラしがち。予定を詰め込まずにゆったり過ごそう。更年期を乗り切る予行演習にもなる。
1.生理前は無理せず早く寝る
生理前にイライラ、ウツウツで物事がはかどらないなら、「頑張らない」と割り切って、早く寝てしまおう。
2.日常で「動く生活」を。細切れ運動を意識
エストロゲンの減少で代謝は落ちていく。ながら筋トレなど、細切れに1日30分間を目安に運動を。
3.自分の心地よいことを見つけておく
マンガの一気読みなど、どんなことでもいいので自分が心地いいと思えることを見つけて、ストックしておこう。
【ホルモンアンバランス期 45~55歳】
女性ホルモン分泌量の急激な減少に、視床下部が混乱。その影響で自律神経が乱れ、めまい、倦怠感、不眠などの不定愁訴が現れる。
主なトラブル&病気
更年期障害、乳がん、卵巣がん、子宮体がん
上手な付き合い方:ひとりの時間をつくってストレスをためない
女性ホルモンの分泌が低下する時期には、意識的にリラックスする時間をつくり、安らぎや幸福感が得られる生活を。自律神経も安定する。
1.お風呂を"美容部屋"にしてみる
入浴は自律神経が整う最高の時間。お気に入りの入浴剤、マッサージクリームをそろえ、リラックスタイムに。
2.他人に振り回されない
「ひとり時間が確保できている人はうつになりにくい」(松村さん)。家族や友人に振り回されない時間を持とう。
3.意識して「手抜き」をする
掃除ロボットや食洗機、家事代行サービスの利用など、積極的な「手抜き」で、リラックスできる時間を確保。

松村圭子さん
成城松村クリニック院長。広島大学医学部卒業。広島大学附属病院勤務を経て、2010年から現職。月経トラブルや更年期障害など、女性の不調や疾患の治療に当たる。クリニックでは漢方薬やオゾン療法も取り入れている。『女性ホルモンを整えるキレイごはん』(青春出版社)など著書多数。
(ライター 海老根祐子)
[日経ウーマン 2017年3月号の記事を再構成]
健康や暮らしに役立つノウハウなどをまとめています。
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