星野佳路「1日1食主義で思考がクリアに」

若い頃は少々の無理をしても、健康診断の数値に影響することはなかったものの、30代、40代になってくると、高血圧や高コレステロール、不整脈といった不調が表れるようになりました。家系的にもそうした傾向があり、年齢を重ねるごとに、自分にとっての健康の重要度が増しています。そこで、「食事」「睡眠」「運動」「ストレスコントロール」のそれぞれに目標を設定して健康管理を実践するように……。今では数値も改善し、心身の状態も快調です。
食事は1日1食、夕食だけにしています。年齢とともに、基礎代謝は落ちてくる。ベストな体重を維持するには、食べる量を減らすしかない。そう考えて、40代で朝食をやめ、50代になる頃には昼食もやめました。1日1食なので、量はとくに制限せず、好きなものを好きなだけ、バランス良く食べます。甘いデザートも食べますし、お酒も飲みます。ただ、体質的に量はそれほど飲みませんね。
子どもがいるので、夕食の時間は早めの19時から19時30分頃。私も妻も出張が多いのですが、必ずどちらかが一緒に食事をとれるよう、スケジュールを調整し合っています。保育園の頃は18時までに迎えにいかなくてはいけないため、会議中でも17時30分になると切り上げていましたね。今でも夕食の時間に自宅に帰り、食事を終えてから会社に戻ることもあります。
1日3食は食べ過ぎで内臓を疲れさせる?
1日1食にしてから、体重が落ち、血圧も下がりました。それ以前は上の血圧(収縮期血圧)は高血圧の領域に入る145程度でしたが、今は120台、高くても130台でコントロールできており、まったく問題ありません。コレステロール値も改善しています。
空腹の状態が長く続き、そこへカロリーをとると消化吸収のスピードが早くなって太りやすいという話を聞くことがあります。それはその通りなのかもしれませんが、言い換えれば、朝・昼・夜と3食食べていると、消化吸収の効率が落ちていると考えることもできます。3食食べてそのたびに消化吸収しなければならない状態は、内臓を疲れさせるようにも思えます。だから私は、1日3食は食べ過ぎで、むしろ1食の方が内臓の働きにとってもいいと信じています。消化吸収の効率が高まって太ることを気にするよりも、1日の総摂取カロリーを減らすことの方が大事だと思うんです。
もちろん、空腹をまったく感じないわけではありません。14時から16時頃はやはり、空腹感がありますね。でも、この空腹感は「ハングリーハイ」を経験することで乗り越えられるようになります。
「ハングリーハイ」とは?

空腹を感じるのは血糖値が下がってきて、脳が「そろそろ食事をして補給しなさい」と信号を出しているからだといわれています。だから、空腹感を克服するには、その信号をコントロールすれば良いと考え、いろいろなことを試してみました。
その経験上、最も効果があるのは、重要な考え事をするということ。難しい話題で議論するのもいいですね。要するに、ほかのことに集中していると、脳の信号が発信するのをあきらめるのか、空腹感がおさまるのです。そうなると、脳がセービングモードに入ったような感じで、頭がスッキリとします。私はその状態を「ハングリーハイ」と呼んでいます。だいたい17時から19時くらいまでがハングリーハイになる時間帯ですね。
ハングリーハイのときは空腹を感じないし、思考もクリア。一種の快感状態なんですね。このハングリーハイの快感を知ってしまえば、空腹はある程度コントロールできるようになりますよ。空腹を乗り越えてハングリーハイになれたときは、「自分の脳の信号に勝った!」みたいな達成感を味わえます。これが完全にコントロールできるようになれば、仙人になれるんじゃないかなと思っています(笑)。
私は睡眠にもこだわりがありますが、睡眠がしっかりとれているときの方が、空腹もコントロールしやすいですね。
※次回は「私が快眠のためにやめた2つのこと」をお届けします。
星野リゾート代表。1960年長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、米コーネル大学ホテル経営大学院修士課程修了。91年に星野温泉(現在の星野リゾート)社長に就任。所有と運営を一体とする日本の観光産業でいち早く運営特化戦略をとり、運営サービスを提供するビジネスモデルへ転換。2014年には開業100周年を迎え、2017年2月現在、全国で37のリゾート、旅館を運営。
(ライター 田村知子)
[日経Gooday 2016年1月18日付記事を再構成]
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