1日25グラム、ミックスナッツ食べるだけダイエット

ナッツに含まれる良質な脂肪や食物繊維はダイエットの味方。毎日食べ続けることが大切ですが、アーモンドやクルミは値段が高いし、手に入れにくいという声も……。そこで、手ごろな値段のピーナツや大豆を使った「ミックスナッツダイエット」を紹介します。
毎日の食事は変えなくても、ナッツをプラスして食べるだけでやせられて、健康効果が得られる。「ナッツを食べてやせるのは、主に良質な脂肪により満腹感が得られて間食が減ることと、食物繊維によって便通が良くなることが大きい」(慶應義塾大学医学部の井上浩義教授)。また、「酸化ストレスが高い人は肥満度が高いという研究がある。アーモンドのビタミンEや、クルミに含まれるポリフェノールは、毎日とり続けるとダイエットに役立つ」(井上教授)。さらに、二つのナッツに含まれる良質な脂肪は少量で満腹感を得やすいため、間食を減らす効果も期待できる。
そこで今回提案したいのが、ミックスナッツを食べるダイエット法。一種類のナッツを食べ続けるダイエットは、食べ飽きたなどの理由で中断してしまうケースも多い。「アーモンドとクルミを7割、その他を3割にしたミックスナッツでも、ダイエット効果は期待できる」(井上教授)
ミックスする食材は、値段が安く、薄皮に抗酸化作用があるピーナツ、たんぱく質やイソフラボンを含む大豆、ビタミンやミネラルが豊富なカボチャやヒマワリの種などがお薦めだ。

ミックスナッツダイエットでやせる3つのルール
1.1日25gのミックスナッツを食べる
ミックスナッツを食べる量は1日に25gが目安。25gは手のひらに軽く1杯くらいの量。これは、アーモンドの場合で約150kcalとなる。ナッツはカロリーが高いので、食べすぎないように注意しよう。
2.アーモンドとクルミを7割、それ以外は好きなナッツを
ダイエットに役立つ良質な脂肪や食物繊維が豊富なのはアーモンドとクルミ。この2つを7割、その他のナッツ類を3割が目安。「アーモンドとクルミを6~7割とれば、他を混ぜてもダイエット効果は変わらない」(井上教授)
3.無塩・素焼きを選ぶ
おつまみのナッツには油や塩が使われているので、毎日食べると油や塩のとりすぎになることも。ダイエットには逆効果になってしまう。今回食べるナッツは無塩・素焼きのものを選ぼう。
食べ飽きないので続けやすい
アーモンドとクルミは2大お薦めナッツだが、これらだけを毎日食べ続けると飽きてしまう。味が苦手な人もいる。好みのナッツ類を合わせれば食べやすくなるし、食感や味が変わることで飽きずに続けられる。
いろんなナッツを食べるのでかむ回数が増え満腹感がアップ
ナッツ類は硬く、かむ回数が通常の食品よりも多い。さらに、硬さが異なる食材を食べると、かむ回数が増えるという報告がある。「よくかむと脳の視床下部にある満腹中枢が刺激され、少量でも満腹感が得られる」(井上教授)
ミックスナッツで女性に不足しがちなビタミン・ミネラル・油がとれる
アーモンドやクルミにその他のナッツ類を合わせると女性にうれしい栄養素が補える。「カボチャの種、ヒマワリの種は鉄や亜鉛が豊富なので、貧血や肌荒れなどが気になるときに。大豆にはイソフラボンが豊富です」(井上教授)
【ミックスナッツ図鑑】
ダイエット効果が高いのはアーモンドとクルミ。これら2大ナッツをベースに、その他のナッツや種や豆などナッツ感覚で食べられるものをプラスすればOK。ここでは、おいしさや栄養面でお薦めの6種類をご紹介。

アーモンド
クセがなく、栄養価もバツグン
アーモンドには、ビタミンEやオレイン酸などの抗酸化力の高い成分や食物繊維が豊富だ。
「アーモンドには糖質分解酵素のαアミラーゼやβグルコシダーゼ、脂質分解酵素のリパーゼの働きを阻害して、余分な糖や脂肪の吸収を防ぎ、便として排出する働きがある」(井上教授)。また、「糖と体内のたんぱく質が結合してできる老化物質の終末糖化産物(AGEs)の発生を防ぎ、排出させる働きもある」(井上教授)
つまり、アーモンドにはダイエット効果とともに、解毒効果も期待できる。このほか、ビタミン、ミネラル類もバランスよく含むので、"ナッツの王様"なのだ。

クルミ
独自の渋みがやせに効く
多くのナッツの脂質はオレイン酸が主成分だが、クルミにはn-3系脂肪酸の一種のαリノレン酸が多い。「αリノレン酸は血管をしなやかにしたり、細胞の活性化を促す働きがある。また、クルミの薄皮にはポリフェノールが豊富」と井上教授。渋くても薄皮ごと食べることで、より高い抗酸化作用が期待できそうだ。
n-3系脂肪酸は日本人に不足しがちな栄養素だ。「クルミは調理せずに手軽に食べられるのでn-3系脂肪酸の供給源として優れている」(井上教授)
クルミには体重管理や中性脂肪の減少に役立つという研究報告もある。ダイエットのみならず、メタボが心配な人にもいい。

タイガーナッツ
セレブも注目 食物繊維のカタマリ
海外セレブの間で注目の新顔だが、実はナッツではなく、カヤツリグサの塊茎(かいけい)。100g中16.5gと、食物繊維が豊富なことが特徴だ。日本への輸入を手掛けるエーシーテック代表の荒井千秋さんは、「古代エジプトでも食べられていたといわれ、近年ではスペイン産のものが主流」と話す。

カシューナッツ
味も大人気 亜鉛・鉄分が豊富なナッツ
かみ応えがソフトで甘いカシューナッツは食べやすく、ナッツ初心者にも人気。骨の形成を助けるビタミンKやたんぱく質合成に必要な亜鉛、貧血を予防する鉄、循環器や骨の健康に関わるマグネシウムも多い。ただし、ナッツの中では糖質が多いのが特徴。食べすぎには注意しよう。

ピーナツ
安くて手軽で大人気 皮付きで食べたい
食べ慣れたピーナツは、実はナッツではなくマメ科の一種だが、ミックスナッツダイエットの一員に加えよう。不飽和脂肪酸であるリノール酸を含む。「薄皮に抗酸化成分のアントシアニンやレスベラトロールを含むため、薄皮付きを選んで」(井上教授)。また、価格帯が低いのも魅力だ。
選ぶなら皮付き無塩タイプを: 食べ慣れたバターピーナツなどの加工品ではなく、無塩のローストを選ぼう。製菓材料店などに売っている生ピーナツを煎るのもいい。
アレルギーには注意: ピーナツは人によって、アレルギー症状を引き起こす場合も。アレルギー体質の人は事前に、ピーナツを食べて呼吸器症状、鼻やのどの腫れ、じんましんなどの症状がある場合も、アレルギー科を受診しよう。

大豆(いり大豆)
日本人が昔から食べていた 大豆イソフラボンもとれる
大豆もナッツではなくマメ科。ナッツと比べるとたんぱく質や食物繊維が多いのが特徴だ。「大豆に含まれるイソフラボンは抗酸化成分の一種。女性ホルモンの減少に伴う症状の改善に役立つ」(井上教授)。このほか、塩分過多による高血圧を予防するカリウムや、貧血を防ぐ鉄も豊富だ。

ヒマワリの種
抗酸化ビタミンが豊富なソフト種子
米国などで食用として長く愛されているのがヒマワリの種。脂肪酸のうち4割が不飽和脂肪酸のリノール酸で、抗酸化成分のビタミンEや、貧血を予防する鉄を含む。糖質の代謝に関わるビタミンB群などのビタミンも含む。

カボチャの種
漢方の生薬としても使われる注目シード
漢方では生薬として使われているのがカボチャの種。食用は白い皮をむいた緑色の部分。カルシウムやリン、鉄などのミネラル源としても優秀。ナッツ類に比べて脂質が少ないが、リノール酸、オレイン酸などを含む。

井上浩義教授
理学博士、医学博士。九州大学大学院理学研究科博士課程修了。2008年から現職。専門は薬理学、生理学だがナッツ類の研究にも詳しい。著書は『食べても痩せるアーモンドのダイエット力』(小学館)など多数。
(ライター 村山真由美、写真 鈴木正美、スタイリング タカハシユキ、構成 熊 介子=日経ヘルス編集)
[日経ヘルス 2016年8月号の記事を再構成]
健康や暮らしに役立つノウハウなどをまとめています。
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