小中高のコンタクト デジタル化で目に負担、異常も増

オンライン授業やスマートフォンの普及に伴い、小中高生のコンタクトレンズの使用が増えている。不適切な使用法やケアの怠りで、目に異常が表れるトラブルは後を絶たない。特に小学生は幼少期から残るアレルギー体質の影響で症状が悪化する恐れがあり、専門家は注意を呼びかけている。
「目がゴロゴロして違和感がある」。日常的にコンタクトレンズを使用している女子高校生(17)が平田眼科春日井本院(愛知県春日井市)を訪れ、不調を訴えた。生徒は眼科で検査を受けずにインターネット通販で購入し、使い続けていた。医師が診察すると、レンズに汚れが付着して目の表面の角膜に細かな傷がつき、炎症を起こしていた。
平田国夫院長は「若い世代への処方が増え、使用トラブルで来院する小中高生も相次いでいる」と話す。5年ほど前は小学生への処方はほぼなかったが、昨年は約50件に上った。
背景にあるのが近視の低年齢化だ。平田院長によると、近視が表れるのは今まで小学校高学年が多かったが、最近は3~4年生からみられるようになった。当初はメガネを着用していても、学年が上がるにつれ、運動などの関係でコンタクトの処方を希望する児童や保護者が目立つという。
現代の子どもは、ゲーム機器やスマホの使用に加え、学校や塾でもオンライン学習でデジタル端末に触れる機会が増え、朝から晩まで目を酷使する状況だ。文部科学省の調査では、2019年までの約20年間で裸眼視力が1.0未満の小学生は1割増え、0.3未満はほぼ倍増するなど近視は急速に進んでいる。
コンタクトレンズを使用できる年齢に制限はないが、平田眼科をはじめ、多くの医療機関では小学校高学年以降に限定している。若年者への処方には大人以上に注意が必要なためだ。
小学生では幼児期のアトピーやアレルギーの体質が残っていることがあり、レンズの着用でかゆみや充血などの症状が強まる傾向もあるという。春季カタルと呼ばれる子どもが発症しやすい重症のアレルギー性結膜炎もあり、身長や眼球の大きさも短期間で変わるため、使用の可否は医師の慎重な判断が必要となる。
平田院長は「角膜に大きな傷がつくと視野にうっすら濁りが残ったり、最悪失明したりする恐れもある」と指摘。「現在は視力が重要な情報社会だけに、将来の仕事にも影響が出かねない」と警鐘を鳴らす。
独協医科大学病院(栃木県壬生町)の妹尾正教授(眼科学)によると、目のトラブルで同院の救急外来を訪れる患者の約1割はコンタクトが原因で、このうち3割は重篤で入院が必要な状況だった。トラブルの多くは決められた使用方法を守らないことで引き起こされ、中には2週間タイプのレンズを1カ月間使い続けて感染症を引き起こし、失明寸前にまで至ったケースもあったという。
レンズが乾くたびに自身の唾液や水道水をつけて使い続けていた患者は、結果的に計3回の角膜移植が必要になった。妹尾教授は「使用者は若い世代が多く、保護者は積極的に眼科への定期受診を促してほしい。適切な使用でトラブルの多くは防げる」と話す。

小中高生が初めて使用する場合、どういった点に注意すればいいのか。平田院長は「まずはレンズケアの必要がない1日タイプから始め、部活動の際だけなど時間を絞って使うとよい」と話す。かゆみなどのトラブルが起きた場合に備えて常にメガネを携帯し、異常があればすぐに使うのをやめ、専門医に診察してもらう必要がある。
慣れてくれば費用が抑えられる2週間タイプなども選択肢に入ってくる。汚れがたまらないよう、保護者もケアの指導を受け、子どもが適切に扱っているか定期的にチェックしよう。
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違和感感じても 「受診せず」中学生で6割
2018年の日本眼科医会の調査によると、コンタクトレンズの使用者の割合は、小学生が0.3%、中学生は8.7%、高校生が27.5%だった。00年の調査開始以降、それぞれの世代で増加しており、特に中学3年から高校1年にかけての増加が著しい。
「使用期限を守っている」と回答した中高生は増えているものの、こすり洗いなど「指示通りケアしている」中高生は減少傾向にあり、トラブルの原因となっている。異常があっても眼科を受診しない人の割合も上がっており、中学生では60%、高校生も51.1%に上った。
(藤井将太)
[日本経済新聞夕刊2021年1月13日付]
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