冷えが招く秋むくみ ドライヤーお灸で血行を促進

日中はまだ気温が高めだが、朝晩は急に肌寒くなる秋の初め。この時期、足のむくみを訴える人が意外に多い。冷えによる血行不良が要因だ。体を冷やしがちな夏の生活習慣を見直し「秋むくみ」を防ぎたい。
「一日中冷房に当たる」「冷たい飲み物をたくさん飲む」……。こうした体を冷やす夏の生活習慣を、秋になっても続けていないだろうか。むくみを引き起こす原因の一つに、冷えからくる血行不良がある。東京有明医療大学教授の川嶋朗氏は「冷えへの心構えができていない秋は、防寒対策が万全な冬より、むくみやすい」と話す。
むくみとは、血管からしみ出した水分が皮下組織に過剰にたまった状態をいう。この水分は通常、酸素や栄養素を細胞に運び、二酸化炭素や老廃物を血管に回収する役割を担っている。しかし血行不良になると、スムーズに血管に戻ることができず、細胞と細胞の間にたまってしまう。これがむくみになるわけだ。
体の中で最もむくみが起こるのは足。ポンプ役の心臓から遠い位置にあり血行不良になりやすい。また、水分は重力の影響で体の下部、特に足にたまりやすくなる。
では、なぜ冷えは血行不良を招くのか。「体が冷えると血液も冷え、そのために血流がとどこおる」と川嶋氏。血行が悪くなると体が熱をつくり出しにくくなり、さらに冷えてむくむという負のスパイラルに陥る。
徐々に肌寒くなっていく秋は、体を温める生活習慣を早めに取り入れるのが肝要だ。

医学博士で健康科学アドバイザーの福田千晶氏は、「太い血管が体の表面近くを通っていて熱が逃げやすい股関節回りや膝の裏を冷やさないように」と助言する。ストッキングをはかない「生足」を避け、さらに冷えが気になるなら、なるべくパンツや長めのスカートをはく。インナーにペチコートやスパッツを重ねることなどを心がけたい。
川嶋氏はドライヤーの弱い温風をツボに当てる「ドライヤーお灸(きゅう)」をすすめる。内くるぶしの骨から指3本分上にある「三陰交」というツボは刺激すると体全体を温めることができる。体の余分な水分を排出させ、むくみ解消に役立つ「水分」というツボは、へその1センチメートルほど上にある。温風を当てるのは1カ所あたり最長1~2分が目安だ。

入浴時は38~40度の風呂に10分以上つかるのが理想。「心疾患がなければ、肩までつかる全身浴がよい」と川嶋氏。炭酸入浴剤を入れるとより体が温まり血行が良くなる。
冷えだけでなく、座りっぱなし、立ちっぱなしなど、長時間同じ姿勢で動かずにいると血行不良になり足のむくみがひどくなる。「デスクワーク中は頻繁に立ち上がって動くことを習慣に。足指や足首回し、かかとの上げ下げをするのも有効」と福田氏。
むくみ予防には塩分を取り過ぎないことも大切だ。体内の塩分濃度が高くなると、水分が細胞の外に出にくくなりたまってしまう。福田氏は「涼しくなって汗をそれほどかいていないのにスポーツドリンクを飲み過ぎると塩分過多になる」と注意を促す。
逆に増やしたいのは、野菜や果物に多く含まれるカリウム。余分な水分を排出する作用がある。カリウムに加え食物繊維が豊富なバナナは、手に入りやすくおすすめだ。
足のむくみを根本的に改善するには「スクワットなどで下半身の筋肉を鍛えるのが一番」と川嶋氏。特にふくらはぎの筋肉は、血液が心臓に戻るのを助けるポンプ作用があり重要だ。ここを鍛えると、水分の巡りをよくすることにつながる。また筋肉は熱も生み出す。冷えとむくみは表裏一体。ぜひ運動を習慣にして、むくみを撃退しよう。
(ライター 松田亜希子)
[NIKKEIプラス1 2019年8月31日付]
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