あせも・汗かぶれ 大敵は乾燥、猛暑でもしっかり保湿

夏は汗による肌トラブルを起こしやすい。代表的なのが汗が皮膚の中につまる「あせも」や、汗の刺激で炎症が生じる「汗かぶれ」だ。皮膚が乾燥すると生じやすくなるので、夏場もしっかり保湿して予防しよう。
かゆみを伴う「あせも」と「汗かぶれ」は共に汗が原因となるが、発症のしくみが異なる。あせもは急激な発汗によって汗の通り道となる汗管がつまり、汗が皮膚の内側でもれて炎症が起きる。汗の出口に水滴のような透明な水疱(すいほう)ができたり、皮膚表面の角層に赤くプツプツとした湿疹が点状に表れたりする。
一方、汗かぶれは、汗が接触して起こる皮膚炎だ。東京医科歯科大学皮膚科学分野教授の横関博雄氏によれば、「発汗後、汗の水分が蒸発した後に残る塩分や酵素などが刺激となって炎症が生じる」という。汗かぶれはピリピリ・チクチクと感じ、炎症による赤みが角層で面状に広がるのが特徴だ。

あせもは汗腺が未発達な子どもに多い。一方、汗かぶれは年齢を問わず、顔や首、ひじの内側など皮膚が薄くて弱い部位に生じる。横関氏によると、「腹部や腰回りなど衣服が擦れる部位にも起こりやすい」という。
あせもや汗かぶれを予防するには、まず、汗をかいたら長時間、皮膚に残さないようにする。できればシャワーなどでさっと洗い流し、無理な場合は「ぬらしたタオルやハンカチで軽く押さえるようにして拭き取る」(横関氏)。市販の汗拭きシートは成分が刺激になることがあるので肌の弱い人は控えた方がいい。
下着や衣類は通気性・吸湿性のよい綿などの素材を選び、ベルトなどで締めつけすぎないように注意しよう。
また、あせもや汗かぶれは、皮膚を守る角層のバリア機能が低下していると起こりやすくなる。多摩ガーデンクリニック(東京都多摩市)院長で皮膚科医の武藤美香氏は、「皮膚のバリア機能の低下は、乾燥肌が原因になることが多い」と指摘する。
肌の乾燥は秋冬に起こるものと思われがちだが、夏でもエアコンや紫外線などの影響で乾燥が進む。「夏にも適度な保湿を行うことが重要。肌のバリア機能が保たれていれば、あせもや汗かぶれだけでなく、アレルギーなどの予防にもなる」(武藤氏)

乾燥を防ぎバリア機能を保つには、入浴時に顔や体を洗う際にゴシゴシとこすらないことだ。洗浄剤は肌への刺激が少ないものを使う。入浴して汗を拭いた後に、保湿剤でしっかりスキンケアをする。
保湿剤は、成分がなるべくシンプルで、刺激になりにくいものがいい。「セラミドやヘパリン類似物質には、皮膚のバリア機能を修復する作用がある」(武藤氏)ので、これらを主成分とするものを選ぶのもお勧め。「夏場はベタつきにくいローションタイプや泡状のフォームタイプが使いやすい」(横関氏)
ローションなら1円玉大(直径2センチメートル)、クリームなら人さし指の先端から第一関節までの長さ(約0.5グラム)が、成人の手のひら2枚分ほどの面積に適した量となる。これを目安に、各部位でしっかり広げて使うのがコツだ。
かゆみがあって、かきむしると角層がさらに壊される。症状が悪化したり細菌が侵入して、いわゆる「とびひ」などの二次感染を起こしたりするので注意が必要だ。「薄手のハンカチに包んだ保冷剤を当てて冷やすと、かゆみの神経が鈍くなり、かゆみや炎症も軽減する」(武藤氏)
あせもや汗かぶれは、汗対策や保湿をきちんとしていれば自然に治ることが多い。症状が長引いたり、炎症がひどくジクジクした状態になったりしたときは、皮膚科を受診して適切な治療を受けよう。
(ライター 田村知子)
[NIKKEIプラス1 2019年8月10日付]
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