出会いの季節の口臭ケア 朝食の有無で大きな違い
朝ごはん食べて予防/睡眠不足にも注意

春は出会いの季節。初めて会ったときに息が不快だと、第一印象でマイナス要因となる。面と向かって指摘されることも少ないため、自分の口臭が心配という人も多いだろう。気になる口臭の予防策をまとめた。
口臭を気にする人は多い。マイボイスコム(東京・千代田)が成人1万605人を対象に2018年12月に実施したアンケートによると、他人のにおいで気になるもの(複数回答)として「口臭」を挙げたのは62.8%。「体臭」「タバコ」「加齢臭」などを抑え1位となった。
口臭は胃が悪いことが原因で起こる、と思っている人もいるかもしれない。実際は「胃の空気が外に出てくるのはゲップをしたときくらい。口臭の原因は9割以上、口の中にある」と東京医科歯科大学大学院健康推進歯学分野の川口陽子教授は指摘する。
口の中には500種類以上の細菌がいる。細菌ははがれた粘膜や血液、食べカスなどのたんぱく質を分解し、揮発性硫黄化合物を作り出す。これが口臭の原因だ。
程度の差こそあれ、口臭が全くない人はいない。歯周病や唾液が少ないドライマウスの人は特に口臭が強くなる。糖尿病や腎臓病といった口以外の病気で起こる「病的口臭」もまれにあるが、口の中に問題がないのに口臭が強い人はめったにいないという。

口臭を抑えるために日々取り組めることはいろいろある。まず、朝食は必ず取るようにしたい。一日で最も口臭が強くなるのは起床直後。睡眠中は殺菌作用のある唾液の分泌が減り、口の中で細菌が繁殖するためだ。食事をすると唾液の分泌が増えるとともに、口中の細菌が食べ物と一緒に飲み込まれて口臭が弱くなる。
口内の細菌を減らすには1日2回、朝晩の歯みがきが欠かせない。歯周病は確実に口臭を強くする。歯間ブラシやデンタルフロスを使って、歯と歯の間も忘れずに掃除しよう。慶友銀座クリニック(東京・中央)の大場俊彦院長は「食後に爪ようじを使うだけでも効果がある」と話す。
舌の掃除も口臭対策には有効だ。舌の上についている白または淡黄色の汚れを舌苔(ぜったい)といい、はがれた粘膜や細菌から成る。最も口臭が強くなる起床直後に鏡で舌の様子を確認し、舌苔が厚いときは掃除する。川口教授は「専用の舌ブラシや柔らかい歯ブラシを使うとよい」と勧める。
ブラシを水に濡らし、舌の奥から手前に向かって舌苔をかき出し、最後にうがいする。歯みがき粉は不要。舌を痛めやすいので、くれぐれも軽い力で。こちらは1日1回で十分で、きれいなピンク色の舌なら毎日しなくてよい。

唾液の分泌が増えると口臭は少なくなる。食事はよくかんで食べるよう心がけよう。「カフェインは口腔(こうくう)乾燥を引き起こすことがあるので、取りすぎに注意する」(大場院長)。食後すぐに眠ると、消化機能が低下して口臭が強くなる。夕食は就寝4時間前までに済ませたい。
徹夜をすると口臭が強くなるように感じるのは気のせいではない。「睡眠不足だと粘膜の新陳代謝が乱れて舌苔がたまりやすくなる」と川口教授は説明する。
たばこは吸わないのがベスト。ニコチンやタールのにおいに加えて、歯周病を進めたり、口内を乾燥させたりすることでも口臭を強くする。
これらの対策を実行しても改善が見られないなら、「歯科か口臭外来のある医療機関を受診すべきだ」と大場院長は助言する。川口教授は「特に異常を感じなくても、年に1~2回は定期的に歯科健診を受けるべきだ」と勧める。自分の口の状態をわかってくれる、かかりつけの歯科医を持つことも大切だ。
(ライター 伊藤和弘)
[NIKKEIプラス1 2019年3月30日付]
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