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仕事中眠い もしかして…睡眠時無呼吸症候群かも

男性40代から患者増/動脈硬化リスク高く

NIKKEI STYLE

眠っているときに呼吸が止まる睡眠時無呼吸症候群(SAS)。睡眠の質を下げるだけでなく、動脈硬化を進め、寿命を縮める恐れもある。いびきや眠気に悩んでいたら、悪化する前に医療機関で調べてもらおう。

十分な時間眠ったはずなのに、満足感がない。昼間に眠気が強く、居眠りしてしまう。毎晩必ずトイレに起きる。家族にいびきの大きさを指摘された――。こんな悩みがあれば、睡眠時無呼吸症候群(SAS)かもしれない。

SASとは睡眠中に舌の根元が落ち込んで気道をふさぐことで、しばしば呼吸が止まる病気。睡眠中、10秒以上の無呼吸または低呼吸(肺に入る空気の量が通常の30%以上低下すること)が1時間に5回以上ある状態と定義されている。

ほとんどは舌の根元が落ち込んで気道をふさぐ「閉塞性」。男性では40代、女性では閉経後の50代から増え、国内の患者数は約500万人と推定される。

眠気やいびきがあるなら、呼吸器内科や睡眠外来など睡眠を扱う医療機関を受診したほうがよい。睡眠時の呼吸状態を自宅でチェックできる検査機器を貸し出してもらえる。順天堂大学医学部循環器内科・心血管睡眠呼吸医学講座の葛西隆敏准教授は「1時間に15回以上無呼吸がある人は、治療を受けるべきだ」と勧める。

深い睡眠が取れないため慢性的な睡眠不足になり、仕事中に居眠りすることも多い。SAS患者が交通事故を起こす頻度は健康な人の2.5倍に達するという。

なぜ眠っているときに気道がふさがるのか。御茶ノ水呼吸ケアクリニック(東京・千代田)の村田朗院長は「一番の原因は骨格。顔が平たく、あごが小さい東洋人は欧米人よりもなりやすい。年を取って筋肉がゆるみ、太ってのどの周りに脂肪がつくことでも起こる」と指摘する。

気道が狭くなって空気が通りにくいため、大きないびきをかく。夜間頻尿も症状の一つ。「睡眠が浅いことに加え、血液中の酸素濃度が減り、心臓に負担をかけ、利尿作用が起こるため」と村田院長は説明する。

昼間の眠気に加え、生活習慣病や動脈硬化を起こしやすくなるおそれがある。葛西准教授によると「睡眠中も交感神経が緊張しているため血圧が上がり、血糖値も高くなりやすい」。その結果、脳卒中や心筋梗塞のリスクが高くなり、寿命が縮む。

治療は睡眠中に鼻につけたマスクから空気を気道に送り込む「CPAP(シーパップ)療法」が基本になる。「いびきや無呼吸がゼロになり、続けるうちに血圧や血糖値が下がる人も多い」(村田院長)。

無呼吸が1時間に20回以上ある場合は保険適用になり、1カ月の費用は約5千円。無呼吸が1時間に20回以上あり、治療を受けていないSAS患者の8年後の生存率は63%という報告もある。

軽症の場合は、下あごを固定するマウスピースを使い、無呼吸を起こりにくくする。

最大の原因は骨格とはいえ、SASには予防法もある。まずは太らないこと。太ると気道が狭くなり、SASが悪化する。深酒をすると筋肉がゆるみやすいので、過度の飲酒は控えよう。

葛西准教授は「最近の研究から、塩分の摂取量が多いとSASが悪化する可能性があることが分かった」と話す。のどの粘膜がむくんで気道が狭くなるため、と考えられている。運動も有効。SAS患者に運動させると、無呼吸が減ることが確認されている。

寝るときはあおむけよりも横向きの姿勢がおすすめだ。舌の落ちる角度が変わるので気道をふさぎにくく、いびきも少なくなる。

(ライター 伊藤和弘)

[NIKKEIプラス1 2018年9月8日付]

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