冷え性、タイプ知り対処 末端型は食事を増やそう
内臓型、厚着に注意

寒さが身にしみる日々。冷え性の人にとっては寝付きの悪い夜が続く。一口に冷え性といっても、体質や習慣によってその原因や冷えてしまう体の場所は異なる。中高年の男性も注意が必要だ。正しく理解し、改善に努めたい。

冷え性には明確な診断基準はなく、「冷えでつらい、困っている人」の症状の総称だ。熱を生み出す筋肉量が少ない女性特有の症状と思われがちだが、運動不足などを背景に男性でも悩む人はいる。
日本で初めて専門外来を始めた北里大学東洋医学総合研究所(東京・港)の伊藤剛・漢方鍼灸(しんきゅう)治療センター副センター長によると、冷え性は大きく4タイプに分かれる。
まず手足が冷える「四肢末端型」。10~20代の若い女性で、痩せ形や過度なダイエット中の人に多い。食事量が足りず体を温める熱を十分作り出せないため、血の巡りが末端まで行き渡らないことが原因だ。
このタイプは靴下の重ねばきやカイロなどで温めても、冷えは一時的にしか改善しない。食事を増やすことが大事だ。持病などで制限がなければ、熱を生むタンパク質の摂取を増やすのがお勧めだ。
2つ目は腰より下の下半身が冷える「下半身型」。30代から中高年の男女にみられる。デスクワークなど座りっぱなしの時間が長いとお尻などの筋肉が硬直し、座骨神経が圧迫され血流が滞ってしまう。上半身には血が巡るため、顔がほてりやすい。「お尻にある梨状筋と呼ばれる筋肉のストレッチや硬めのボールでの指圧が効果的」(伊藤副センター長)。
手足や体の表面は温かいのに、内臓が冷える「内臓型」もある。生まれつき寒くても血管が収縮しにくく体外へ熱が逃げやすい人や、過去に手術を経験して血流が悪くなった人などに起きやすい。30代から中高年の女性に多く、体形がぽっちゃり形で食欲があり、汗かきの人は要注意だ。
こうした人は厚着をしすぎず、通気性のよい服で過ごそう。食べ過ぎも避けたい。食べても発汗し、結局体を冷やしてしまう。
最後は体質や服用薬の影響などで全身が冷えてしまう「全身型」。冷えているという自覚症状は乏しいが、慢性的なだるさをおぼえるなど身体機能は低下する。「隠れ冷え」とも呼ばれる。代謝が落ちていて食欲がないケースが多いが、食事を増やすことが大切。体の内外が冷えているので、熱を逃さないよう保温に気をつけたい。

このほか、四肢末端と下半身の両方が冷える「混合型」もある。伊藤副センター長は「全てに共通する原因が運動不足やストレス」と指摘する。日常で歩く際にひと工夫してみよう。手の力を抜き、ぶらんぶらんと大きく振りながら大股で姿勢よく歩くのがいい。全身を使う運動で心臓の機能が強くなり、血流が改善するという。
入浴も見直してみては。冷え性の人には長くつかるのも半身浴もよくない。発汗で体が冷えるからだ。秋冬は41、42度、春夏はそれより1度ほど低いお湯に首まで5分。次に胸辺りまで5分つかる。体を洗うのはその後だ。最後に1~2分入って体を温める。
運動や生活習慣の改善で症状がよくならなければ、専門外来で診断を受け、漢方薬を処方してもらう選択肢もある。マッサージや指圧、鍼灸の施術を受けてもいい。
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病気が隠れていることも
単なる冷えと思って放っておくと、重篤な病気につながる場合もある。例えば「閉塞性動脈硬化症」。手や足の動脈が硬くなり、血管の幅が狭くなったり、塞がれたりして血流が不足する。
初期症状は冷えに加え、歩くと痛みが生じる程度。ただ次第に歩行が困難になるほど痛みがひどくなり、最悪の場合、足の切断を余儀なくされる。
体温低下の症状を伴う病気としては甲状腺機能低下症がある。甲状腺ホルモンが十分に分泌されず、体温が低下して汗をかきにくくなる。便秘になるほか、頭髪が抜けることもある。改善するには医療機関を受診し、甲状腺ホルモン剤の投与が必要になる。
(吉田三輪)
[日本経済新聞夕刊2017年1月5日付]
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