「基礎代謝」で肥満を予防 筋力・肝機能を上げよう

呼吸する、血液を循環させる、体温を保つ、内臓を動かす。何もせずにじっとしている時でも、体は生命維持のための活動を絶え間なく行っている。基礎代謝とは、こうした生命活動で消費されるエネルギーのことだ。
基礎代謝は1日の総消費エネルギーの60~70%を占める。基礎代謝量が多ければ、少ない人よりカロリーを燃やす力が大きくなり、太りにくいといえる。「10%上げれば、1日あたりテニスを20分、野球を30分したのと同じくらいのエネルギーを自然に消費できる」とタニタ(東京・板橋)の企画開発部主任研究員、西沢美幸さんは話す。
また基礎代謝量が多いと、血流がスムーズになるなどで動脈硬化が起きにくいという。中年以降は徐々に減っていく基礎代謝だが「増やす努力をすれば、生活習慣病の予防・改善にもつながる」(西沢さん)。

筋肉量に比例
基礎代謝量の目安となるのは、厚生労働省の日本人の性別・年代別基礎代謝基準値表だ。ただし、標準体重を基にしているので、それから外れると参考にならないことも。より正確に知るには、基礎代謝を体脂肪率や筋肉量から割り出してくれる体組成計を利用するのがお勧めだ。
「基礎代謝の数値は、体重とは逆に増えていくことが励みになる」(西沢さん)。体重だけでなく、基礎代謝を日々チェックすることが健康的なダイエットに役立つ。
では基礎代謝を上げるにはどうすべきか。「筋肉量と基礎代謝量はほぼ比例する」(西沢さん)ので、筋力アップがカギとなる。加齢で基礎代謝が低下するのは、筋力が低下するためともいわれる。効果的なのは、背中や太ももなどの大きな筋肉を鍛えることだ。
例えば太ももの前を鍛えるなら、椅子に腰かけ、片足の爪先を天井に向けて、息を吐きながらゆっくりと膝を伸ばしていく。伸ばした脚を5~10秒キープしたら下ろし、反対の脚も同様に。これらを毎日何セットか続けるのが、筋力をアップし基礎代謝の低下を防ぐ手段の1つだ。
「過度な食事制限は禁物。筋肉を減らすので基礎代謝が低下し、かえって痩せにくくなる」と説くのは、糖尿病・内分泌・肥満専門の岡部クリニック(東京・中央)の岡部正院長だ。
牛モモ肉、豚ロース肉、皮なしの鶏ムネ肉、カツオ、マグロの赤身、卵など良質なタンパク質を取るよう勧める。「筋肉の材料となる必須アミノ酸のバリン、ロイシン、イソロイシンを豊富に含む食材を積極的に摂取して」と話す。
ごろ寝も有効

臓器・組織別の基礎代謝内訳を見ると、筋肉に次いで消費比率が高いのは肝臓だ。野村消化器内科(神奈川県茅ケ崎市)の野村喜重郎院長は「肝臓をいたわり、肝機能を高めることは、基礎代謝アップにつながる」と話す。酒の飲み過ぎなど肝臓に負担をかける生活習慣を、まずは改めよう。
「夕食を控えめにし、朝食を抜かない。1日3食規則的に取ることが大事」(野村院長)。お勧めは、タンパク質しっかり、炭水化物少なめの献立だ。バリン、ロイシン、イソロイシンを含む食材は肝機能向上も期待できる。
「おわんに味噌とたっぷりのかつお節を入れ、熱い緑茶を注ぐだけの『茶節』は、肝臓をいたわるのに最適」(野村院長)とも。二日酔いに効果があるとして、鹿児島に古くから伝わる伝統食だ。味噌、かつお節、緑茶とも肝機能障害を予防する成分が豊富だという。
「食後15分のごろ寝も、実は基礎代謝アップに有効」と野村院長。食後は胃腸の消化作用に血液が回され、肝臓の血液が減る。「頭と足の下にクッションなどを入れ、おなかが低くなる体勢で寝ると、重力で血液が肝臓に集まり、肝臓が活性化する」。職場では、椅子を2つ向かい合わせにし、両足を上げて休むだけでもいい。
「ただし、血糖値が上昇する30分後より長く休むのはよくない。15分以内にやめ、そのあとは動くこと」(野村院長)。基礎代謝のために、筋力と肝機能を高める努力を始めてはどうだろう。
(ライター 松田 亜希子)
[日経プラスワン2016年7月9日付]
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