ノーブラに効用? 「着用で美しい形維持」に異説も
選ぶなら年齢・体に合ったものを
「すぐそこのコンビニまでならいいかな」。都内に住む30代のM子さんは会社から帰宅後、ひとまずシャワーを浴びて1日の汗を流した。冷えた飲み物を買いにコンビニエンスストアまで行こうと思ったが、帰ってきたらあとは寝るだけ。「短時間ならノーブラでも」とざっくりした服装で出かけた。
気付けば多くの女性にとって着けるのが当たり前になっているブラジャー。バストを支えて美しい形に保つ役割が期待されている。重力に対抗する最大の武器というのが定説だ。
不要論も飛び出す
「ブラジャーは不要」。昨年夏、研究途上と断った上でフランスの研究グループがその定説に挑むデータを一部公開した。18~35歳の約300人の若い女性の協力を得て調べたところ、ブラジャーを着けないで過ごすと1年で7ミリメートルほどバストの位置が上がり、弾力も取り戻せたという。

ブラジャーの支えがない分、胸の組織や周りの筋肉をより使うようになったためとみている。長年ブラジャーに頼ってきた40代女性が、着けなくなっても同じ効果が得られるとは考えにくいが、少なくとも若い時は体の機能を発揮させる方がよさそうだとしている。
バストも含め体は甘やかさず適度に使った方がよい――。一見もっともらしいが、懐疑的な意見も根強い。「そもそもバストを支えるのはクーパー靱帯(じんたい)と呼ぶ組織で、筋肉と違って鍛えられない」と話すのは解剖学が専門の京都府立医科大学の河田光博教授だ。また、全女性にかかわるテーマについて、「年齢も人数も限定された調査では不十分」との指摘もある。
女性の胸は筋肉の上に脂肪や乳腺がのった特殊な構造をしている。重力で下にひっぱられるのを、コラーゲンなどの線維が網目状になったクーパー靱帯の働きによって、筋肉につなぎ留め形を整えている。若いうちは弾力がある靱帯も、徐々に伸びて元に戻らなくなる。クーパー靱帯の日々の負担を軽減すべくきちんと体に合うブラジャーを着けるというのが現在主流の考え方だ。
ただ、実は体に合うブラジャーを長年着け続ければバストの垂れを防止できたことを明確に示す研究も見当たらない。河田教授は「ブラジャーを着けない方がよいとは考えにくい」とする一方で、「人の体はある程度は使って刺激があった方がよいという可能性も完全には否定できない」と話す。
体形維持の長期的な効果についてはまだ分からないものの、女性にとって日々を活動的に過ごすために手放せないブラジャー。どうせ着けるなら、自分の体に合ったものを選びたい。ところが選び方を間違えている女性も多いという。


同じサイズでも…
ワコールが約200人を対象に実施したアンケートによると、いつもきちんと採寸してから買う人は14%にとどまっていた。70%以上の人が採寸してみると自分が思っていたサイズと実際は違っていた。

体調や季節によってもサイズは変わる。また同じサイズでも、年齢とともにバストの質は変わる。引き上げるクーパー靱帯の衰えだけではなく、乳腺が脂肪に置き換わって胸は柔らかく重くなり、もっと下に引っ張られるためだ。
合っていない製品はマイナスの影響もある。例えば40代が若い人向けのものをデザインだけで選ぶと、きれいな形に整わず柔らかいバストとブラジャーの間にはすき間ができてしまう。この状態で小走りすると胸に衝撃が直接伝わり、非常に揺れる。クーパー靱帯に負荷がかかりかねない。
ブラジャーにはワイヤやカップの形など細かい違いもある。「バストの形は人それぞれなのできれいに見えるブラジャーも違う」(ワコール)。店頭で専門知識を持つ販売員に定期的に尋ねると、自分に合ったタイプを見つけやすくなる。
着けない方がよいとの結論が出て、女性が解放される日はまだ来ていない。それなら体形をできるだけ保つために、今日着けるブラジャーから見直してはどうだろうか。
(鴻知佳子)
《インターネット》
◆女性の体の変化について知るなら
ワコール「ラブ、エイジング。」(http://www.loveageing.jp/)
《本》
◆下着の選び方や着け方、洗い方などをおさらいするなら
「たのしい下着 もっと自由に選ぶ下着のレッスン」(浅井明子監修、COMODO編集部編、技術評論社)
[日本経済新聞朝刊2014年8月3日付]
健康や暮らしに役立つノウハウなどをまとめています。
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