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2023年3月23日(木)

海外旅行気分をよく似た近場で AIが判定、新たな穴場発見も
先読みウェブワールド (山田剛良氏)

日経MJ
コラム(ビジネス)
ネット・IT
2020/12/28付
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NIKKEI MJ

世界的なコロナ禍による移動制限で、一般から海外旅行の楽しみが奪われた状態になって久しい。「第3波」で12月以降、「Go To トラベル」も一時停止となり、国内でも遠出する機運がそがれている。

マチュピチュ遺跡に似ているとされる竹田城跡(兵庫県朝来市)

マチュピチュ遺跡に似ているとされる竹田城跡(兵庫県朝来市)

そんな昨今、海外の景勝地に似た近場に出掛けて、安全に海外旅行気分を味わうのはどうだろうか。その際に指標となる「類似度」をAI(人工知能)で算出する技術をNTTドコモが開発中だ。

国内外の著名な観光地や景勝地に見た目で似ているとされる場所は多々ある。「実際どれくらい似ているのか、AIで数値判定できるのではと考えた」。NTTドコモ R&Dイノベーション本部 クロステック開発部の勝見久央さんはこう話す。勝見さんはこういった観光地を「ジェネリック観光地」と呼ぶ。

きっかけは職場の近く、神奈川県横須賀市にある鷹取山公園がアフガニスタンの世界遺産「バーミヤン石仏」に似ているという話を職場の先輩との雑談で知ったことだ。

実はこうした話は以前からある。「日本のマチュピチュ」と呼ばれる兵庫県朝来市の竹田城跡、「日本のナイアガラ」こと大分県豊後大野市の原尻の滝などはネットでも繰り返し紹介される定番だ。

いずれも確かに似ている気もするが、どこまで本当に似ているのか。勝見さんは専門とするAIを使った統計解析の手法で、数値検証したらどうかと思いついた。

研究では米グーグルの地図アプリ「グーグルマップ」に登録されている各地の景勝地の写真を約2000点集め、これと世界遺産の写真をAIで比較して「類似度」を検証した。さらにいくつか異なるAIの画像解析を試し、どの手法で判定すればより正確に観光地の類似度が判定できるかもあわせて検証した。

やまだ・たけよし 東工大工卒、同大院修士課程修了。92年日経BP社に入社、「日経エレクトロニクス」など技術系専門誌の記者、日本経済新聞記者を経て16年から日経テクノロジー・オンライン(現・日経 xTECH)副編集長。17年10月から日経ものづくり編集長も兼任。京都府出身

やまだ・たけよし 東工大工卒、同大院修士課程修了。92年日経BP社に入社、「日経エレクトロニクス」など技術系専門誌の記者、日本経済新聞記者を経て16年から日経テクノロジー・オンライン(現・日経 xTECH)副編集長。17年10月から日経ものづくり編集長も兼任。京都府出身

この結果、画像の大局的な構図の特徴と、画像に何が写っているかをもとにした特徴の両方をミックスして判定するAI画像解析の手法が、ジェネリック観光地の判定に向いていると分かった。

研究では前述の竹田城跡、原尻の滝に加えて、いくつかの海外観光地に似ているとされる景勝地を正解データと見なし、判定手法を評価するのに使っている。これらにAIが判定した類似度は0.861から0.903と非常に高い。「おおむね0.7を超えるあたりが類似度のしきい値」(勝見さん)という。

集めた画像からは、他にも類似度が高い観光地が見つかった。今回の研究では景勝地のサンプル画像を正解データのある場所の周辺から集めており、数も少ない。全国各地のサンプルを検索すれば、様々な穴場が見つかりそうだ。

勝見さんは今回の研究を9月に行われた国際学会で公表している。研究中でサービス化などの予定はないが、現状でも地方自治体などの担当者が、地元の景勝地を分類するときには使えそうだと話す。利用者が近所の景勝地の写真を投稿すると、世界遺産との類似度を判定するサービスなども検討したいという。

地元の風景を著名な景勝地に見立てる楽しみは、古くから日本のある文化の1つ。AIでこうした楽しみを補強するのは、いかにもネット時代の面白さだろう。

[日経MJ2020年12月28日付]

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