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アイリスオーヤマ、国内最大級のマスクメーカーに成長

新型コロナ
コラム(ビジネス)
ヘルスケア
2020/12/6 2:00
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アイリスオーヤマが販売するマスク

アイリスオーヤマが販売するマスク

日経クロストレンド

まだ記憶に新しい「マスクバブル」は、新型コロナウイルス感染症の患者が国内でも出始めた2020年1月下旬から始まった。ドラッグストアやコンビニでは使い捨てマスクが入手困難になり、街頭で販売された輸入マスクにも人々が殺到。普段は1枚当たり10円前後で販売されることもあった不織布マスクが、一時は同80円超に高騰した。そんな中、マスク供給で質・量ともに存在感を示したのが、宮城県の生活用品メーカーであるアイリスオーヤマ(仙台市)だ。

まず量の面では、20年5月に宮城県角田工場の設備を増強。中国の2拠点と合わせて、最大で毎月2億3000万枚を供給できる体制を整えた。20年3月に計画していた月6000万枚(輸入を含めて1億4000万枚)という生産計画を大幅に上回り、一躍、国内最大手のユニ・チャームに匹敵するマスクメーカーになった。

アイリスオーヤマの宮城県角田工場。30億円を投資し、11月からは毎月1億5000万枚を生産する

アイリスオーヤマの宮城県角田工場。30億円を投資し、11月からは毎月1億5000万枚を生産する

そして同社は、マスク着用時の「暑さ対策」でも存在感を示した。緊急事態宣言が解除される20年5月末ごろから、国内ではマスク着用による熱中症のリスクが話題になり始めた。マスクを着用すると、生地自体が顔の熱で温められる上、吐いた息が滞留しがちなため暑苦しく感じる。同じころにスポーツ用品メーカーなどが投入した布マスクなら呼吸はしやすいが、ウイルスの拡散を防ぐ性能は落ちる。

そこで、ウイルスなどの捕集性能と通気性が両立されたマスクとして注目されたのが、同社が同6月に発売した「ナノエアーマスク」。特殊ナノファイバー加工を施した通気性のある中間層(フィルター)の採用により、着用時の口元の温度上昇を従来製品の約半分に抑えた不織布マスクになる。これを開発したのが、アイリスオーヤマ ヘルスケア事業部事業部長の岸美加子氏だ。

アイリスオーヤマでは、事業部長であっても自らが積極的に商品企画を立てる。これは同社が、「発売3年以内の新商品で売り上げの5割以上を上げる」という目標を掲げているためだ。ヘルスケア事業部でも「製品開発にあたっては事業部長自らアイデアを入れ、売り上げをどう伸ばすかの将来設計を立てている。そのため、常に50~60個のネタを仕込んでいる状態」(岸氏)という。

■コロナの3年前から開発は始まっていた

といっても、ナノエアーマスクはコロナ禍が起きてから開発が始まった製品ではない。その発端は3年前の17年5月に遡る。自らもかなりの花粉症である岸氏は、東京出張時に電車に乗った際に、「鼻をぐしゅぐしゅいわせているのにマスクをしていない人」(岸氏)が数多くいることに気づいた。近年の関東地方では、6月に入っても花粉が多く飛散する日がある。「マスクを付けたほうが楽なはずなのになぜか」と考えた岸氏は、ドラッグストアのPOS(販売時点情報管理)データで、顧客が買い物かごに入れた商品から用途を類推する「バスケット分析」を試みた。すると、「花粉症用の薬は5月以降も引き続き売れているのに、同時に買われるマスクは減っている」(岸氏)ことに気づいた。

マーケティングの「古典」ともいえる、フィリップ・コトラーの著書には、「靴を履く習慣が無い島」の例え話がある。そのような島に行くと、「ご用聞き」は「要望が無いのだから靴は売れない」と悲観的になり、「販売員」は「ものすごい靴の市場がある」と期待を抱くという特性を示す話だ。岸氏は、「私はどちらかといえば後者。そのときも気軽なプラス思考で、『着けたくなるマスクを作れば売れる』と考えた」と振り返る。

しかし、通気性を確保するためにフィルターの目を粗くすれば、花粉などは通しやすくなる。岸氏は、国内のフィルター専門メーカーとの意見交換と試作を重ね、太さの違う繊維を組み合わせた「エレクトロスピニング製法」によって、薄さと捕集性能を兼ね備えたフィルターを約1年かけて開発。「夏用マスク」の商品化にめどを付けた。「私の製品開発は、コンセプトとストーリーを最初に立てて、それができるメーカーや素材を見つけて、価格に落とし込むことが多い。今回は、高い技術力がある会社に協力してもらえたので、開発はスムーズだった」(岸氏)

また、それと並行して、通常は鼻の付近にしかないワイヤを口元にも付けることで、呼吸がしやすくなる形状を追求。耳ひもも、フィットさせつつきつくなり過ぎないように、包帯と同じ柔らかな素材を業界で初めて採用した。

ナノエアーマスクの耳ひもは包帯素材が使われている

ナノエアーマスクの耳ひもは包帯素材が使われている

こうして完成したのが「ナノエアーマスク花粉対策用」だ。20年1月に発売したときは花粉用だったが、新型コロナの感染拡大を受けてウイルス飛沫も捕集できるように性能を強化。6月に感染対策としても使える「ナノエアーマスク」を発売した。

ここまで細部に改良を加えてきたのは、岸氏が「ワガママになって、自分が一消費者として欲しい商品を作る」という開発テーマを持っていたからでもある。やはり同氏が開発して16年にヒット商品となった「トイレのモコモコ泡スプレー」も、「できるだけトイレ掃除を楽にしたい」という思いを具現化したもの。ナノエアーマスクも「できるだけ楽に花粉の時季を乗り切りたい」という点が共通しているという。

しかし、誰もがそうした商品を作れるわけではない。岸氏はその分岐点について「化学に強い人と話をすると、既存の知識を前提に『それは難しい』とフィルターをかけている人が多いと感じる。しかし、難しいテーマであるほど、それを乗り越えた先に市場があるはず。それを具現化するための熱意が必要だと思う。私は化学系出身でありながら、『ヒット商品を作りたい』とずっと思っていたので、乗り越えられたのではないか」と分析する。

ナノエアーマスクをはじめ、同社のマスクは「販売すればすぐに消えてしまう」という空前の売れ行きのため、「当初は、本当に自分の商品が受け入れられたのかどうかは分からなかった」(岸氏)という。それが最近は、SNS(交流サイト)やドラッグストアへの問い合わせでナノエアーマスクを指名する声が増え、存在感を示すようになった。「現在は需給のバランスが崩れているが、そのうち正常化し、本当に有用なマスクだけが選ばれるようになる。それに備えて、そろそろ宣伝などの戦略を練る予定」(岸氏)という。

岸氏の当面の目標は、「世界一の総合マスクメーカー」だ。現在のナノエアーマスクはフィルターの生産数に限界があるため、日本市場に出す分しか作れていないが、将来は欧米でも販売したいという。「不織布マスクと布マスクの両方で成果を上げているメーカーは世界にも見当たらない。全ラインアップをそろえれば、マスクブランドとしてトップに立てるはず」(岸氏)。日本のコロナ禍を下支えした同社が世界一になる日は意外に近いかもしれない。

(日経トレンディ 大橋源一郎、写真 小西範和)

[日経クロストレンド 2020年11月17日の記事を再構成

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