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音楽専門旅行会社の破綻、GoTo特需でも業界に逆風
企業信用調査マンの目

新型コロナ
コラム(ビジネス)
サービス・食品
2020/10/30 11:00
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7月にGoToトラベル事業がはじまり、10月から東京都の発着が対象となったことは、新型コロナウイルス禍で大打撃を受けている旅行業界にとって業績回復への足がかりになった。しかし、国内における新規感染者数は依然として高水準で推移し、日本政府観光局によると1月に約266万人だった訪日外客数は5月に1663人にまで減少し、9月にようやく1万人を上回る水準になった程度だ。

企業信用調査マンの目

信用調査会社、帝国データバンクで企業の経営破綻を専門にする第一線の調査マンが破綻の実例などをケーススタディーにし、中堅中小の「生き残る経営」を考察します。隔週金曜日に掲載

また、新型コロナ関連の倒産は飲食店、ホテル・旅館、アパレル小売店のほか、建設関連、食品関連が件数上位だ。旅行業界の倒産は目立っていないものの、新卒採用の中止、賞与カット、店舗閉鎖など事業継続のため、必死に経営合理化に取り組むケースが相次いでいる。そうしたなか、今回は旅行業者の倒産動向と最近になって破産に至った都内旅行業者の事例を紹介したい。

2020年の旅行業者(第1種、第2種、第3種事業者と旅行代理店事業者)の倒産(法的整理で負債1000万円以上)は9月までに15件発生し、前年同月(14件)とほぼ変わらないペースとなっている。

10年以降の旅行業者の倒産件数推移を見ると、11年(49件)、13年(41件)、10年(35件)が多く、19年や20年は最も低水準で推移していることが分かる。ちなみにリーマン・ショックの発生した08と翌09年は41件で、13年と並ぶ。

今年の旅行業の倒産で負債額が最大となっているのは、大阪市に本社を構えて「しろくまツアー」「ハッピーホリデー」のブランドで旅行ツアーの企画販売を手がけてきたホワイト・ベアーファミリーで、負債は約278億円。関西や北海道でホテル運営を手がけるグループ会社のWBFホテル&リゾーツに続き、大阪地裁へ民事再生法の適用を申請した。

経営破綻した旅行会社グループのWBFホテル&リゾーツが運営するホテル(大阪市)

経営破綻した旅行会社グループのWBFホテル&リゾーツが運営するホテル(大阪市)

それまで旅行業者の過去最大の倒産は17年3月に自己破産を申請し、一般旅行者約3万6000人の被害者を出したてるみくらぶ(東京都渋谷区、負債約151億1300万円)だったが、それを大きく上回り、今年発生した全倒産の中でも最大となっている。

■業績悪化と廃業の増加

新型コロナ流行後は、特に居酒屋を中心とした飲食店、ホテル・旅館、アパレル小売店を経営する事業者の倒産が目立っている。旅行業者の事業は同3業種と関連性が高いはずだが、なぜそれよりも低水準で推移しているのだろうか。

背景として考えられる原因は、新型コロナ対策で打ち出された支援策だ。これは旅行業界に限らず言えることだが、返済までの据え置き期間がある緊急融資、支援金給付、税金や社会保険料の納付猶予のほか、既存借入金のリスケジュール、手形・小切手の不渡り猶予などを利用・適用させることで、資金繰りに相当配慮している。

旅行業者は、他業種と比較して新型コロナによって売り上げが著しく減少した事業者が数多く、支援の対象になりやすい事業環境であったといえよう。

もう一つは初期投資の負担が大きくないことだ。飲食店やホテル・旅館、アパレル小売店は、店舗や施設が無いと商売が成り立たない。特にホテル・旅館の初期投資(建設費用)は数億から数十億円規模が必要となり、完済まで一番の重荷となり続ける。

危険なのは、内装や設備に徹底的にこだわることは可能でも、その費用に見合った集客ができる保証はどこにもないことだ。店舗の場合、退去や移転をしたくても、原状回復費などの問題もあり、ためらっているうちに限界に達するケースも少なくない。

一方、旅行業者においては、インターネット予約がさらに主流となることで店舗の開設・拡大の動きは活発になっておらず、家賃負担を軽減できる傾向が顕著となっていくだろう。その分、販売価格競争に対応して、システム開発にも注力しなければならないが、3業種と比べれば状況に応じてリストラしやすい業種と言えよう。

また、倒産件数減少の背景には廃業の増加があることも忘れてはいけない。例えば、東京都の20年1~9月の旅行業登録抹消件数は171件となり、前年同期(130件)に比べて31.5%も増加している。

■惜しまれた企業の倒産

そうしたなか、エムセックインターナショナル(東京都渋谷区)が新型コロナの影響をもろに受けて、10月7日に東京地裁より破産手続き開始決定を受けた。新型コロナ関連倒産として、旅行業者では8社目だ。

入国者が途絶え閑散とするシドニーのオペラハウス前(3月26日)

入国者が途絶え閑散とするシドニーのオペラハウス前(3月26日)

同社は05年12月に設立された第1種旅行業者で、中学、高校、専門学校、大学、少年・少女合唱団などを顧客としてきた。楽友協会ホール(ウィーン)、カーネギーホール(ニューヨーク)、フィルハーモニーホール(ベルリン)、オペラハウス(シドニー)などの世界的な名門ホールやシュテファン大聖堂、シェーンブルン宮殿といった世界遺産でのコンサートを企画・実施し、これまで吹奏楽130団体以上、合唱・オーケストラ140団体以上を派遣。

阿部成伸(あべ・しげのぶ) 帝国データバンク東京支社情報部情報編集課長。金融機関勤務を経て2000年に同社に入社、同年より現部署。倒産企業の取材・記事執筆のほか、業界動向の作成や企業・団体向け各種セミナーなどを開催。監査法人動向などもまとめる。神奈川県出身

阿部成伸(あべ・しげのぶ) 帝国データバンク東京支社情報部情報編集課長。金融機関勤務を経て2000年に同社に入社、同年より現部署。倒産企業の取材・記事執筆のほか、業界動向の作成や企業・団体向け各種セミナーなどを開催。監査法人動向などもまとめる。神奈川県出身

個人単位で参加する合唱などのツアー企画・実施も手がけ、コンサートホール、航空券、宿泊施設の予約から楽器の運搬・保険などの手配全般のサービスを手がけていた。そして同社のこだわりは、有名会場での演奏だけでなく、参加者の日ごろの成果を多くの聴衆に聞いてもらうことで大きな喜びと感動につなげることだった。現地でのルートやノウハウにより、演奏会は毎回ほぼ満員(70%~80%)にさせていたという。

売り上げは順調に拡大し、19年3月期には売上高約9億6800万円を計上したが、新型コロナによって急転直下した。これまで目立つような業績悪化は無かったものの、各国の入国制限など海外渡航が困難となったことで旅行の企画・実施ができなくなり、見通しも立たなくなった。

まだ数えるほどしか発生していない新型コロナが主因となる倒産となった。負債は債権者約20名に対して約6億5000万円だ。

音楽を学ぶ少年・少女たちが著名海外ホールの舞台に立つという、夢の請負人となってきた同社の倒産を惜しむ声は少なくない。同社のツアーをきっかけに音楽家になった人もいることだろう。

各種支援策は、エリアや業種に偏りなく広く浸透し、必要とされる先に執行されることが大切であるが、残すべき事業の早期発掘と早期支援にも力を入れていくことも必要ではないかと感じる倒産事例となった。

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