オンラインで「アジアオープンRANアカデミー」発足のイベントが開かれた(29日)
日米が連携し、東南アジアで高速通信規格「5G」の基地局を巡る人材育成に乗り出した。米国は複数メーカーの機器を組み合わせ、基地局などの通信網を整備する「オープンRAN」の教育機関をフィリピンに設立した。日本の総務省や通信大手が協力する。各国の経済安全保障に直結する通信分野で、中国が影響力を強めていることに対抗する。
オープンRANは1つのメーカーに依存せず、様々なメーカーの機器が選択できる仕組み。1社で通信網を構築する中国大手などに頼る状況を解消できる。5月の日米首脳会談で発表した競争力強化などに向けた共同文書に、2022年に東南アジアで教育機関を立ち上げる方針を盛り込んでいた。
29日に海外援助を担う米国際開発局(USAID)が教育機関「アジアオープンRANアカデミー」の立ち上げイベントをオンラインで開いた。USAIDの担当者は「このアカデミーはバイデン政権のインド太平洋戦略の一環であり、開かれた安全なインド太平洋地域をサポートすることを目的としている」と述べた。
アカデミーはまずはフィリピンの学生などを対象にカリキュラムを提供し、東南アジアやインド太平洋地域に広げる予定だ。日本からはNTTドコモや楽天グループ、NEC、富士通が参加し、パネルディスカッションに加わった。
ドコモはオープンRAN方式での機器輸出に活路を見いだす。18年には基地局装置のオープン化を推進する国際団体の立ち上げを主導。国内では携帯料金の値下げや人口減少で個人向けの通信収入は伸び悩んでいる。海外の携帯基地局市場を開拓する。
楽天グループは「伝統的なネットワークの構築手法はコストが高すぎる上に複雑だ」(楽天シンフォニーのタレック・アミンCEO)として自社でもオープンRAN技術を活用した基地局を採用している。コスト効率の良さやセキュリティー面の安全性の高さなどメリットを伝える。
携帯基地局の世界市場は中国の華為技術(ファーウェイ)、フィンランドのノキア、スウェーデンのエリクソンの3社で8割を占めるとの試算もある。ファーウェイは「ファーウェイASEANアカデミー」を開設し、タイ、インドネシア、マレーシア、カンボジアで情報通信技術の専門人材の育成を進めてきた。
通信機器の供給網でも中国の脅威を念頭に置いた経済安全保障の重要性は増している。日米は5Gなど通信分野を巡り東南アジアでの影響力を取り戻せるかどうかの重要な局面を迎えている。
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