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懐刀は「外国人CxO」 スタートアップの経営を革新

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2020/10/25 2:00
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NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

KOSKAの王軒COO(左)は今や会社に欠かせない存在

KOSKAの王軒COO(左)は今や会社に欠かせない存在

スタートアップで海外出身者がトップの懐刀として活躍している。大手企業のキャリアを捨て、最高技術責任者(CTO)などとして海外進出に貢献したり、社内に新風を吹き込んだりしている。高度外国人材の活用が叫ばれるなか、スタートアップを成長に導く海外出身「CxO」の姿とは。

「彼がいなければ今の会社はなかった」。飲食店向けの予約管理システムを手がけるテーブルチェック(東京・中央)の谷口優最高経営責任者(CEO)は、右腕のジョン・シールズCTOについてこう語る。

■CTOの枠を超えて海外展開を主導

同社は元来、飲食店のマーケティング代行を手掛けていたが、「食べログ」や「ぐるなび」といった複数の予約サイトを一括管理できるシステム開発に経営の針路を転換。サイトごとの予約管理が煩雑になる飲食店の問題の解消に乗り出した。

その開発を取り仕切ったのが、シールズ氏だ。同社入社前、野村証券で、東京証券取引所やアジアの15取引所で株式や先物取引するための基幹システムの構築を担当。この経験が食べログやぐるなびなど別々のサイトから流れてきたデータを整理し、一括管理できるシステム開発に生きた。

飲食店の非接触決済システム、ドタキャン防止システム――。顧客からの要望をシールズ氏主導で次々と商用化した。16年からの海外進出では、シールズ氏もCTOの枠におさまらず営業現場にも立つ。豊富な知見を生かし「ハイアット」や「ヒルトン」などグローバルホテルチェーンの海外拠点にも通い顧客に引き込んできた。その成果もあって、今では世界26カ国に5000店舗の顧客を持ち、足元の海外売上高比率は10%を越えた。

シールズ氏は学生時代、インターンで初来日。07年リーマン・ブラザーズ・ジャパンに入社したがほどなく倒産。野村証券に籍を移した。テーブルチェックに転職後、年収は10分の1に激減したが、新天地を選んだ。

「米国のベンチャーキャピタル(VC)は長期目線で成長を待つが、日本のVCは企業が早期に利益を出すことを期待しがちだ」。取締役会などでも経営陣の1人として単刀直入にものを言う。

政府は2012年から海外とのビジネス拡大や技術革新の担い手となる「高度外国人材」の受け入れを進めている。20年6月時点で高度人材に認定された人は累計で約2万人だが、うち経営の中枢に携わる「経営・管理」人材に認定されたのは約3.7%にとどまる。

他方、米スペンサースチュアートによると、取締役に占める外国人比率は英国で33%、フランスで36%に上る。海外に比べ外国人材の活用は遅れているが、組織の活性化や海外進出を狙うスタートアップにとって高度人材の登用は重要な選択肢の1つになっている。

「彼がいるだけでマネジメントが回る」。社会貢献型の飲食店予約アプリを手掛けるテーブルクロス(東京・中央)の城宝薫CEOは、最高執行責任者(COO)でトルコ出身のトソ・セルカン氏をこう評する。

■日本での違和感から起業

トルコの通信大手に勤めながら15年に日本に留学。その間、日本の外国人向けの食ビジネスがまだ成熟していない実情を知った。英語の飲食店の予約システムが整っておらず、日本語が拙いセルカン氏は苦労した。

セルカン氏は18年初めに、すしなど日本料理作りの体験などができる個性的な飲食店の検索、予約ができるインバウンド向けウェブサイトで起業。訪日外国人の増加に合わせ少しずつユーザー数を伸ばした。その後、テーブルクロスの城宝CEOに出会い「食を通した社会貢献」という問題意識を共有。18年、サイトを引き継ぎながら同社に仲間入りした。

テーブルクロスは利用者が飲食店予約をすると店側から手数料を受け取り、その一部を途上国に給食として寄付するサービスを手掛ける。セルカン氏が立ち上げたサイトにも寄付のシステムがあるが、これがテーブルクロスにも大きく貢献している。

というのも、城宝CEOはセルカン氏と出会うまで英語が話せず、インバウンド事業も手つかずのまま。だが、セルカン氏の参画で事業領域が増え「海外展開も見えてきた」。インバウンド関連で19年以降、数千万円の売り上げ拡大につながったという。コロナ禍前までの月間閲覧者数は約5万人と18年に比べ2倍に増えた。

製造業向けの原価管理サービスを提供するKOSKA(コスカ、東京・千代田)。11月からカメラセンサーなど専用機器を工場の各工程に設置し人の動きなどを数値化、原価管理に織り込む新事業を国内外で始める。同社にとって初の海外営業ともなるプロジェクトで、参謀役を務めるのが中国出身の最高執行責任者(COO)、王軒氏だ。

王氏は中国語、日本語、英語を操り国籍問わず顧客の懐に潜り込むが、営業以外にも腕を振るう。新サービスで使うセンサー機器の調達では、中国製の機器を日本製に比べ9割安い価格で手に入れた。より安い価格を求め、有望な中国の調達先をウェブで探りアプローチ。母国語で果敢に交渉に臨んだ。

インターンで感銘を受けた「日本人の仕事に誠意を持って取り組む姿勢や熱意」が頭から離れず、NTTコミュニケーションズへ。中国の通信最大手でも経験も積んだ。

小集団のスタートアップでは「自分が作ったサービスを納得した上で顧客に提供できる」とあって、開発から携わるのが信条。「スタートアップのカルチャーには正解がないのも魅力」という。

個人の資産管理アプリを手がけるマネーツリー(東京・港)。チーフオブエンジニアリング(最高開発責任者)で英国出身のベン・ケリー氏がCxOとして経営を切り盛りするうえで、糧とするのは豊富な海外経験だ。豪州ではマーケティング会社に勤務し、後に英国・ロンドンで米決済大手イーベイでソフトウエアエンジニアとして経験を積んだ。さらに同国でコンサルタント会社を起業した。

「経験から、企業が直面する課題のパターンを見つけ、軌道修正できる」といい、これまでも三菱UFJ銀行の家計簿アプリなどマネーツリーが提携する企業とのプロジェクトを成功させてきた。ケリー氏は「日本の社会規範がビジネスチャンスにつながる」と説く。

「例えば満員電車に1日2回も乗るのは非生産的だが、他の皆がずっとそうしてきたからという理由でいまだに続いている」。個人の考えを後回しにして全体の意見を重んじる結果、日本では必要な変化が起こりにくいと考える。この弊害はマネーツリーが籍を置く金融業界をはじめ日本の産業界にも通じる。外国人CxOとしてその壁をうがつ考えだ。

海外人材の採用事情に詳しいフォースバレー・コンシェルジュ(東京・千代田)の柴崎洋平社長は、日本で外国人CxOの登用が少ない理由について「年功序列の賃金体系で実力に見合った報酬体系になっていない。欧米に比べCxOの報酬が低い」と指摘。一方、「(幹部人材が不足する)スタートアップであれば成果主義の導入で外国人が幹部として活躍できる余地は大きい」と期待している。

(企業報道部 仲井成志、安村さくら)

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