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コロナ禍で活用広がる人事AI、社員が納得する秘訣とは

新型コロナ
コラム(ビジネス)
ネット・IT
2020/10/27 2:00
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NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

公正な人事評価の実現は多くの企業にとって共通課題だ

公正な人事評価の実現は多くの企業にとって共通課題だ

人事評価に人工知能(AI)を使う動きが急速に広がってきた。新型コロナウイルスで在宅勤務が増え、成果の公正な評価が難しくなっていることが背景にある。さらに仕事を明確に定義する「ジョブ型雇用」はAI評価と相性が良く、この点でも普及が見込める。それでも「AIに評価を決められるのは不満だ」との声もあり、各社は運用に工夫をこらす。

■「曖昧な目標設定が、そもそも評価に適さない」

「日本企業の抽象的で曖昧な目標設定が、そもそも人事評価に適していない。ここをAIが指摘できるようにした」。クラウドで人事システムを提供するあしたのチーム(東京・中央)の高橋恭介社長はこう話す。同社はクラウドサービスの「あしたのクラウド」で目標設定や人事評価、給与の査定などのサービスを提供している。最も注目を集めるのがAIによる「目標の添削」だ。

20万シートの目標を学習し、AIが目標を添削していく。「積極的に」といった抽象的な単語には再考を求め「毎週1回以上」など具体的な表現に導く。AIが目指すのは達成できたかどうか客観的に分かる目標だ。

客観的に評価できる数字が目標に盛り込まれていれば、評価者によるバラツキは発生しにくい。達成度が低いのに高い点数を付ける上司は「評価が甘い」となる。「目標は合意形成の基本だ」と高橋社長は強調する。

3月に「あしたのクラウド」を導入した中華食材卸の中華・高橋では仕事の再定義に役立った。高橋滉社長は「営業先がほとんど休業し、全社的な売り上げが前年を8割下回る状況で、個人の営業成績を前年比でみても意味がない。どんな目標を設定すべきか悩む中で、AIの補助は有効だった」と語る。

社員たちは現在、前年比較ではない営業活動やSNSなどの数値目標を掲げ、達成を目指して最善を尽くしている。

数値目標の管理などは得意なAIだが、人事評価への活用には課題も多い。2018年には米アマゾン・ドット・コムが採用に使ったが、不平等があったとされて利用を打ち切った。日本IBMの労働組合が「AIによる人事評価はブラックボックスで不当だ」とAIが学習したデータなどの開示を求め、東京都労働委員会に救済申し立てをしたこともある。

反発の主な要因はブラックボックスであるAIに人間を評価させることだ。しかしコンサルティング会社EYジャパン(東京・千代田)の鵜沢慎一郎パートナーは「人事はもともと曖昧なブラックボックスの要素があった。むしろAIでそこを変えられる」と話す。

■「人事評価」を評価

EYジャパンは「人事評価の評価」ができるAIを開発した。評価者が部下に高得点を付ける理由は様々だ。積極的に手を挙げて業務を進めた部下を「自分で考えて仕事をする力を持つ」とみるか「リーダーシップがある」と評価するか。それで最終的な評価内容が変わる場合もある。

バラツキはどこで、なぜ生まれるのか。EYジャパンのAIは人事評価に関わる文書を読み込み、発生原因を分析する。自然言語処理で日本語を分析できるようにして人事評価の書類を読み込ませた結果、評価すべきポイントが明確でも「達成できていないこと」は評価書に書かない人もいることが分かってきた。そんな評価者の「癖」がバラツキにつながる。

さらには「リーダーシップの定義が曖昧で分かりにくい場合も多い」と鵜沢氏は言う。AIが「この部分は評価者によって結果が分かれた」と指摘すれば評価指針を変えたり、属人的な評価の甘さや辛さをある程度は補正できたりする。在宅勤務の広がりに伴って人事評価システムは見直しの必要性が高まっており、EYジャパンにも問い合わせが増えている。

人員配置など経営上の重要な意思決定に関わるAIも増えてきた。NECソリューションイノベータが提供する「NEC HRテッククラウド」は利用企業が自社のデータで人事AIを構築できるサービスだ。個別企業のデータを基に学習モデルを作り、AIが適正な配置を割り出す。

特に利用が多い機能が「人事配置」と「離職予防」だ。AIが勤怠情報などから誰をどの部署に配置すれば離職率を抑えられるかなど、人事異動に役立つ助言をする。

ブラックボックスになりがちなAIだが「顧客企業のデータで学習モデルを作るため、AIが何を根拠に予測しているかなどを示しやすい」と香山知佳子主任は語る。

■AIに決めさせず、AIを使って決める

「AIの結果はあくまで参考値」と顧客には伝えている。AIの決定に従うのではなく、まず会社として何を評価し、どこで判断するか明確にする。そのうえでAIを補助的に活用すれば人事業務の効率化が進む。「この手順を理解してAIを使うことが最も重要だ」(香山氏)という。

人事分野にAIなどの技術を取り入れる「HRテック」の市場は成長が続く。ミック経済研究所によれば2019年度のHRテッククラウド市場は349億円で、前年を36%上回った。24年度には1700億円に成長するとも予測している。

AIに人事や評価を決めさせるのではなく、AIを使って人事や評価を適正に決める。この原則を忘れずにAIを有効活用できれば、多くの企業で社員の大部分が納得する人事評価制度をつくることができるだろう。

(企業報道部 小河愛実)

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