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ZOZOに異変 流通チャネル企業、成長のジレンマ
グロービス経営大学院・嶋田毅教授が読み解く

コラム(ビジネス)
2019/5/17 4:30
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アパレル通販サイト「ゾゾタウン」を運営するZOZOの勢いに陰りが出ています。株価も、昨年夏の最高値からおよそ半値に下がっています。いったいZOZOに何が起きているのでしょうか?グロービス経営大学院の嶋田毅教授が、ビジネススクールで学ぶフレームワーク「流通チャネル企業の成長戦略」という観点から解説します。

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さて、流通チャネルが担うのは、情報流、商流、物流の3つです。特にBtoCの商材の場合、メーカーがあらゆる顧客に直接アプローチすることはできませんから、流通チャネル(卸や小売り)の役割は大きなものがあります(図1)。

では、メーカーから見たときに良い流通チャネル企業とはどのような企業でしょうか?典型的なものは以下です。

・販売力・顧客開拓力がある
・高値で仕入れてくれる
・手間をかけなくても売ってくれる
・メーカーが望むように商品を売ってくれる

実際には、これらをすべて満たす企業はほとんどありません。小売りを例にとれば、販売力の強い大手コンビニエンスストアなどは、商品を置いてもらうことができれば心強い味方になりますが、仕入れ価格はかなり厳しく値切られるといわれています。

あるいは、ディスカウントストアなども一定の販売力はありますが、必ずしもメーカーの望む売り方で売ってくれるとは限りません。むしろ、商材によっては客寄せのための特売品として安く売られることもありますし、メーカーが意図しない店内表示で悪目立ちする可能性もあります。メーカーとしては、どのチャネル企業と組むかは、その時々の経営の課題を踏まえた上でしっかり考える必要があるのです。

一方、消費者からすると良いチャネル企業とはどのようなものでしょうか?以下のようなものが典型的でしょう。

・品ぞろえがいい(幅広い、センスがいい、売れ筋の商品は必ずあるなど)
・安い
・利便性が高い(アクセスがいい、使い勝手がいい、返品可など)
・接客が丁寧
・独特の買い物体験ができる

これもすべてを満たすのは容易ではありません。たとえば百貨店は丁寧な接客や品ぞろえには勝りますが、価格は安くありません。アパレルであれば、セレクトショップを好む人もいますが、一般に品ぞろえは店の主義がかなり出て偏りますし、価格も必ずしも安くはありません。アクセスも千差万別です。

ただ、どれも満たせないということは、逆にいえば、流通チャネル企業は何らかの差別化を組み合わせることで独自性を打ち出せるということです。メーカーからも消費者からも好ましい独自のポジションを築くことができれば、勝てる可能性は増します。

調子のいい頃のZOZOは、まさにそのようなポジションにありました。特に若者に対する販売力もあり、Eコマースならではの地理的カバー力は大きな武器でした。ウェブサイトもオシャレで、メーカーのブランドイメージを損ねるようなこともありませんでした。縮小傾向にあるアパレル業界にとって、ZOZOは非常に良いパートナーだったのです。

消費者にとっても、ZOZOは安くて品ぞろえも充実しており、またサイトの使い勝手も良かったことから大いに支持されました。

■メーカーにとってブランド毀損リスク

風向きが変わったのは前沢友作社長らの一連の発言からです。特に「アパレルブランドの原価は売価よりはるかに低い」という旨の発言は、業界内の人には常識だったとはいえ、メーカー各社の怒りを買いました(現在そのツイートは削除)。また「ZOZOARIGATOメンバーシップ」における安売りは、「だったらなぜリアル店舗ではいつもは高いの」という消費者の疑念を喚起することにもなりました。比較的高価なブランドを扱っているメーカーからすれば、ZOZOは半ば開きかけていた「パンドラの箱」を完全に開ける存在に見えたのかもしれません。

その結果、ZOZOは百貨店やセレクトショップと対比すると、メーカーからは図2のような好ましくないポジションに映るようになってしまいました。「リーチ力の高さ」というこれまでの利点は、安価と相まって、むしろブランドを毀損するリスクが高いと見なされるようになったのです。

有力なアパレルメーカーの出品が減れば、当然消費者にとってもZOZOの魅力度は下がります。また、従来のライバルと異なるプレーヤーに良いポジションをとられたことも見逃せません。

■メルカリ躍進で埋没

その1つはメルカリです。メルカリに代表されるフリマが流行っている背景には「めったに使わないものを高額で買ってためこむのはお金の浪費だし、環境にも負荷をかけるからダサい。適宜使えればいい。出来れば、不要になったら売りたい」という消費者の意識の変化があります。それまでにもヤフオクのようなプレーヤーはいましたが、メルカリが独自の市場地位を築いたことで、ZOZOも「服を買う場所」というカテゴリーの中ではイケていない存在に映るようになってきたのです(もちろん、すべての消費者がそうというわけではありませんが)。メーカー直営のものも含む他のEコマースの洗練度も上がり、ZOZOはその中で埋没するようになってきたのです。

こうした中でZOZOはどうすればいいのでしょうか?

最も王道の方向性は、メーカーの信頼を回復することです。ただ、チャネルとメーカーの関係は、感情の微妙なもつれなども絡んできますから、単に「安売りを止めます」といった施策では難しいでしょう。どういう形でメーカーの信頼を取り戻すのかは大きな課題となりそうです。書籍等におけるアマゾンのような圧倒的に売り切る力があれば話は別なのですが、アパレルはEコマースの比率が低い商材でもあり、その気になればメーカーにも代替チャネルがあるのがZOZOとしては難しいところです。

もう1つの方向性は、全く新しい差別化を打ち出し、再度、メーカーからも消費者からも好ましい独自のポジションを築くことです。それはひょっとしたらさらなる洗練度かもしれませんし、「メルカリ的な何か」かもしれません。

全く発想を変えるという方向性もあります。たとえば、アパレルの価格が不透明なのは確かなので、割り切って、徹底的に価格の透明性を前面に打ち出すなどです。これまで以上にメーカーの反発を受けるでしょうが、消費者がそれを求めているのであれば、おいおいメーカーもその流れは無視できないだろうという発想です。ややギャンブル的ですが、「業界構造そのものを破壊する。ZOZOはその先頭に立つ」という強い意志があるのであれば、これも一つの方法です。

これらすべてを同時に行うことはおそらくできません。その中でZOZOがどちらの方向に向かうのか、今後もその動きが注目されます。

「流通チャネル企業の成長戦略」についてもっと知りたい方はこちらhttps://hodai.globis.co.jp/courses/1239a919(「グロービス学び放題」のサイトに遷移します)

しまだ・つよし
グロービス電子出版発行人兼編集長、出版局編集長、グロービス経営大学院教授。88年東大理学部卒業、90年同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経て95年グロービスに入社。累計160万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」のプロデューサーも務める。動画サービス「グロービス学び放題」を監修

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