土居裕子の王子さま。成熟女優の少年役が胸を打つ=東宝演劇部提供
モノとして残らない舞台芸術の世界では、秀作を上演し続けることが大切だ。30年ほど前に上演された音楽座のミュージカルをリバイバルする東宝のシリーズは、そのことに改めて気づかせてくれる。「星の王子さま」を舞台化した最新作「リトルプリンス」は、レパートリー化の成熟を実感させる成果となった。
音楽座ミュージカルは1987年に旗揚げした。スタッフやキャストが集団で練り上げた創作ミュージカルは聞き取りやすい歌詞、手作りの温かみなどが特徴。96年にいったん解散したが、その後も作品を惜しむ声が絶えず、2004年には再結成された。
東宝の制作陣が音楽座の旧作に着目し、リバイバル上演を開始したのは20年1月。劇団第1作でもあった「シャボン玉とんだ宇宙(ソラ)までとんだ」が咲妃みゆ、井上芳雄の出演でまず舞台化され、21年10月に「マドモアゼル・モーツァルト」が続き、3作目の「リトルプリンス」では音楽座の主軸だった土居裕子が王子役(加藤梨里香とダブルキャスト)で精彩を放っている(1月31日まで東京のシアタークリエ、2月4~6日名古屋の日本特殊陶業市民会館ビレッジホール)。いずれも、創作ミュージカルをライフワークと見定める小林香の演出。
砂漠に不時着したパイロットと王子が友達になり、「大切なものは目に見えない」という真理に到達する。般若心経に通じる奥深い哲学を見いだしたという土居はボーイ・ソプラノを思わせる声で「シャイニングスター」や「砂漠は美しい」を歌い、少年の無邪気さを離別の喪失感へと反転させる。井上芳雄、花總まりも気をそろえ、再生への祈りが舞台にあふれた。
井上芳雄(左)と土居裕子=東宝演劇部提供
音楽座はミュージカルの創作手法を生かしたワークショップで研修プログラムを構築、経済的な基盤とする。手作りの創作力と東宝の興行力との連携がどんな果実をもたらすか、注目したい。
(内田洋一)
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