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新業態「デジタル外食店」 お店はスマホの中にある

日経ビジネス
小売り・外食
コラム
ネット・IT
2021/3/8 2:00
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日経ビジネス電子版

コロナ禍で苦しむ外食店が窮余の策として取り組んできたテークアウトやデリバリー。店舗と顧客との接点は、街の看板から顧客のスマートフォンに移行しつつある。

そんな流れを先取りし、顧客接点をオンラインに特化する「デジタル外食店」がある。オンライン上に店があり、客がイートインやテークアウトなど食べ方を選ぶ――。そんな世界観を支えるのが、スマホで注文から決済まで完結する「モバイルオーダーシステム」だ。

東京・千代田にあるカスタムサラダ専門店「クリスプ・サラダワークス大手町店」は、シンプルでおしゃれな内観だ。単価は1000円超と高額ながら、独自のメニューと豊富なボリュームが人気を集めている。

イートイン用の座席もあるが、多くの来店客はスマホのモバイルオーダーアプリで注文と決済を行い、店には品物を受け取りに来る。外食店としては珍しく、自社エンジニアが開発したアプリでは、トッピングやドレッシングを選べるだけでなく、自分好みの食材で構成したサラダも作れる。

運営会社クリスプ(東京・港)がモバイルオーダーに注力するようになったきっかけは2014年。1号店の開業時、店外まで行列が伸びるほど繁盛したことだった。

外食店にとって行列は人気店の証しという見方もあるが、宮野浩史社長は「お客さんはイライラするし、従業員は休めず接客にも身が入らない」として、解決すべき課題と捉えた。

17年にアプリを導入し、現在は東京都内に全19店舗、アプリ登録者数は6万人超に広がった。一部店舗を除いてキャッシュレス決済に移行し、従業員の業務は効率化されている。

クリスプの社是は「熱狂的なファンをつくる」こと。今までの外食店だと声が大きいなど印象が残りやすい顧客を「常連」と思い込みがちだったが、アプリを通じて客と店がつながることで、「ファン度」を明確にできる。

リピーターになりやすい傾向がある「90日間に2回注文する顧客」は83%。顧客1人当たりの売り上げは月間約3300円で、月2~3回訪れる計算だ。数字を基にメニューの改廃や価格戦略など打ち手を考えられる。来店回数ごとに、「あなたは気の合う友達です」「クリスプが認めたサラダ設計士」といったコメントが表示され、店内にニックネームのプレートが掲示されるなど、ファン心をくすぐる仕掛けも用意している。

コロナ前の外食店はIT(情報技術)や数字に疎いというのが通説だったが、宮野氏は、「サラダを効率よく作って、たくさんさばくことが、我々のミッションではない。顧客体験をよくするためにテクノロジーが必要なら、外食店にとってテクノロジーも本業だ」と強調する。

省力化で「原価率68%」実現

クリスプと同様、モバイルオーダーを前提に20年11月に開業したのが、「ブルースターバーガー」(東京・目黒)だ。1人焼肉店「焼肉ライク」などを展開するダイニングイノベーション(東京・渋谷)の子会社が運営する。

ブルースターバーガーはモバイルオーダーで待ち時間の低減を進めている

ブルースターバーガーはモバイルオーダーで待ち時間の低減を進めている

クリスプ同様、ホールで注文を取ったりレジ打ちをしたりする業務はない。完成した品は写真のような「ロッカー」を通じて受け渡される。

ブルースターの売りは「原価率68%」だ。外食店のコストは通常、人件費が30%、原価が30%を占めるとされ、家賃などを差し引いて残る利益は10%以下。このセオリーに対し、「いきなり!ステーキ」や「俺のフレンチ」など、原価率を引き上げて注目を集めてきた例は過去にもあったが、ブルースターはモバイルオーダーによる省力化や店内飲食スペースの排除で浮いたコストを素材に振り向けた。こうした分かりやすい背景が説得力を生んでいる。

ビジネスモデルは19年に着想し、1年かけてアプリを開発した。消費税の軽減措置が適用されるテークアウト需要の高まりや、政府のキャッシュレス決済の推進という背景に、コロナ禍の「非接触」が加わり、アプリに慣れた若者だけでなく家族連れやシニアにまで顧客層が広がっている。

今後も利便性向上は追求する。ブルースターは5月にアプリをリニューアルして、提供時間を予約できるようにする。また、北欧の新興デリバリー業者ウォルトと組んで、デリバリーも強化していく。

それでも店内に残る「キオスク」

「ファンの深掘り」という点で、クリスプはさらに先を行く。4月からサブスクリプションサービスを開始し、デリバリーでは自社配達網を強化する。ウーバーイーツなど外部のサービスではなく、自社アプリの利用率を高める狙いだ。店舗がない地域へキッチンカーを走らせ、そこから自転車で配達するという手法も検討している。

クリスプはモバイルオーダーシステムを外食向けSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)として、外販もしている。セレクトショップ「DEAN & DELUCA」が導入しているほか、韓国唐揚げ店「CRISPY CHIKEN n'TOMATO」も採用予定だという。

先進的な両社の事例だが、外食店からは「新しい業態だからできる手法。どこでもマネできるものではない」との声も上がる。店舗と顧客のつながりをアプリに絞ると、顧客層は狭まる。とがった商品性と独自のスタイルというコンテンツの強さが不可欠だ。

また、クリスプとブルースターの両社とも、現状は店内にキオスク(注文から決済を済ませる据え置き機)を置いている。モバイルオーダーを先駆けて導入したマクドナルドやスターバックスコーヒーなど大手チェーンも従業員への注文が併存するなど、外食のデジタル化は過渡期だ。目的と費用対効果を見極めずに、流行に乗ってモバイルオーダーを導入しても、投資がかさんで終わってしまう恐れがある。

(日経ビジネス 鷲尾龍一)

[日経ビジネス電子版 2021年3月3日の記事を再構成]

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