サハリン2は日本のLNG需要の約1割を供給する(サハリン島南部の液化基地)=ロイター
ロシアのプーチン大統領が極東の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」の運営を、新たに設立する会社に移管する大統領令に署名した。事業に出資する三井物産や三菱商事は新会社へ資産の譲渡が求められ、事業の枠組みから排除される可能性がある。
日本にとって、サハリン2は重要なエネルギー供給源である。商取引の原則を一方的に破る暴挙を断じて容認できない。
現在の事業会社に参加する外国株主は新会社設立から1カ月以内に、ロシア側が求める条件で新会社の株式取得に同意するかどうかを回答する必要がある。
ロシアのウクライナ侵攻から4カ月が過ぎ、日米欧がロシアに科すエネルギー制裁の範囲を広げる一方、ロシアはドイツなど欧州各国への天然ガス供給を減らすなど、エネルギー資源を揺さぶりに使う動きを強めている。
サハリン2を対象とする大統領令は、制裁で米欧と歩調をあわせる日本を標的にしたものと考えるべきだろう。
日本は足元で電力供給の綱渡りが続く。サハリン2から日本に供給される液化天然ガス(LNG)は国内消費の約1割に相当する600万トン程度だ。
もしこれが失われれば、老朽火力発電所の再稼働や自主的な節電では代替できない。代わりのLNGを割高なスポット・短期市場で調達するには2兆円近い追加コストが生じるとの試算もある。
代替が簡単でない以上、まずサハリン2の供給継続を探ることはやむを得まい。ただし、ロシア側がいつ止めるかどうか分からない不安定な状態をいつまでも続けるわけにいかない。
途絶への備えも重要だ。安全審査に合格し再稼働したものの、今夏以降、テロ対策設備の工事期限に間に合わず運転が止まる原子力発電所が数基ある。この緊急避難的な運転を検討することのほか、時間をかけてでも、LNG調達先の分散や再生可能エネルギーへの転換を進めなければならない。
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