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監査ポイント明記の義務化 財務リスク、開示機運に

2020/11/27 22:17
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「介護事業ののれん評価はどんな項目を加味しているか」「青果事業の減損の可能性は」――。財務諸表が適正かどうか判断するのに注意したポイント「監査上の主要な検討事項(KAM)」について監査人の明記が求められ、企業の情報開示も広がりそうだ。2021年3月期の義務付けに先駆けて対応した企業は、財務リスクを積極的に公表した。

買収などで発生した介護事業ののれんをどうやって評価したのか、綜合警備保障(ALSOK)は20年3月期の有価証券報告書で、前提として織り込んだポイントを説明した。のれん評価は将来のキャッシュフローを試算する必要がある。在宅介護事業の場合、職員1人あたり売上高や既存拠点の利益率などを仮定して計算したという。

同様に施設介護では入居率、警備事業では受注や従業員の配置計画と、説明が細かい点に及ぶ。ALSOKは前期から前倒しでKAMに対応。会計監査人もこうした情報を基に、買収した事業でのれんの減損損失を計上する必要があるか判断した。

住友商事は20年3月期の有報で、懸案である欧米の青果事業についてのれんなど無形資産の評価をめぐり、将来稼ぐキャッシュフローの現在価値と資産計上額を比較する説明を記載した。

日本公認会計士協会によると20年3月期までにKAMに対応したのは48社。同協会の調べではこのうち6割が有報などで従来より踏み込んだ情報開示をしている。監査人がKAMについて記述する場合、これまで公開されていない情報が対象になるときは、あらかじめ企業による開示も促すためだ。

情報開示が進むことに市場関係者の期待も大きい。SMBC日興証券で制度調査を担当する大瀧晃栄シニアアナリストは「会社が潜在的な財務リスクを把握できていると分かり、ガバナンス評価にもつながる」と指摘する。

AOKIホールディングスの監査報告書では会計リスクとして、新型コロナウイルスの影響、アパレル事業の棚卸し資産評価など11点を明記している。リスクの発生する可能性と、実際に起きた場合の影響の大きさについてそれぞれ3段階で評価。PwCあらた監査法人は、このうち3項目をKAMとして取り上げた。

定型の表記が多かった監査報告書でKAMの表記を充実させることは、監査法人にとって作業の正確さや丁寧さなど「監査品質を示すチャンス」(大手監査法人)という。こうした動きが企業の情報開示につながりそうだ。

▼KAM 有価証券報告書など企業が作った財務諸表について会計監査人が適正かどうか判断するうえで特に注意したポイントのこと。「Key Audit Matters(キー・オーディット・マターズ)」の略称だ。
 有報などに監査人が付記して内容の確かさを証明する監査報告書は、これまで「適正」「不適正」など短く表記するだけだった。2021年3月期からはKAMの記載が義務付けられる。財務情報の中でも変動リスクが高い項目を選び内容や選んだ理由、それでも「適正」などと判断した作業プロセスを書く。
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