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三菱ジェット、1兆円空回り 凍結まで6度延期

経済
自動車・機械
2020/10/23 20:27 (2020/10/24 5:23更新)
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三菱航空機のスペースジェット(3月)

三菱航空機のスペースジェット(3月)

三菱重工業が国産初のジェット旅客機の事業化を凍結する方針を固めた。これまで6度も納期を延期するなど累計1兆円の開発費を投じながら空回りが続き、新型コロナウイルス禍の打撃で窮地に陥った。新規参入にもかかわらず自前主義にこだわり傷を深くした姿は、日本の製造業に重い教訓を投げかける。

「様々な可能性を検討していることは事実」。三菱重工は23日、小型ジェット旅客機「スペースジェット」(旧MRJ)の事業化凍結についてコメントを発表した。

三菱重工がスペースジェットの開発に着手したのは2008年。経済産業省が音頭をとり、官民で「日の丸ジェット」を実現しようと意気込んだ。民間機の開発は1962年の「YS11」以来。YS11は73年に生産を終えており、技術ノウハウが途切れていた点に不安があるまま動き出した。

■自前主義に限界

誤算はすぐに表れた。経験やノウハウ不足の影響は想像以上だった。三菱重工も民間機事業は手掛けていたが、米ボーイングなどに納入する航空部品が主力だった。完成機の組み立ては部品製造とは別物だ。約100万点にも及ぶ部品の調達や工程管理は、部品メーカーの発想では限界があった。

同じころ、ブラジルの航空機メーカー、エンブラエルも次世代の小型ジェット旅客機の開発を進めていた。優秀な技術者を多数抱える三菱重工はライバルとの競合機の開発競争に自信を持っていたが、実際に先行したのはエンブラエルだった。苦戦する三菱重工を尻目に2018年に初号機の納入にこぎ着けた。

エンブラエルは1969年の設立で、完成機のノウハウを蓄積していた。90年代に国営から民間に転じ、自前主義にこだわらず海外の人材を採用するなど柔軟な体制で開発スピードを上げた。

焦った三菱重工も遅ればせながら自前主義の脱却をめざす。着手から10年が経過した2018年、カナダの航空機大手などから外国人の技術者を多数、集めた。しかしプライドの高い三菱重工の技術者とそりが合わず、現場で対立が続く。開発のスピードアップどころではなく、設計変更で開発が遅れる一方だった。

スペースジェットは現在も商業運航に必要な認証の「型式証明」を取得できていない。既に6度も開発期限の延期を余儀なくされた。商用化の道のりが遠のく中、08年当初1500億円としていた開発費は既に1兆円規模にふくらんだ。事業を担う三菱航空機は20年3月期に4646億円の債務超過に陥った。

打開策が見当たらずに今年2月、6度目の延期を発表した直後、新型コロナの感染拡大に見舞われた。開発のメドがつかないなか、航空機の需要まで蒸発しては打つ手がない。

■国内製造業に教訓

三菱重工は23日のコメントで「新型コロナの影響も踏まえ、引き続き開発スケジュールの精査をおこなう」とした。今後も型式証明の取得に向けた開発を続けるとするが、資金や人員は絞る。

三菱重工の連結事業利益の6割を占めるガスタービンなど火力発電設備は、環境志向の高まりで厳しい状況が予想される。祖業の造船事業を取り巻く環境も厳しい。今の三菱重工の経営で、将来の稼ぎに結びつくかがわからない航空機事業の資金をひねり出す余裕はない。

23日の東京株式市場では三菱重工の株価が急反発。一時前日比155円(7%)高の2379円まで上げた。次世代の柱となるはずだった事業の切り離しが市場に評価されている皮肉な状況だ。その軌跡は、日本の製造業が抱える課題を映し出している。

■政府補助金は合計500億円に
 「一部のリスクは存在するが、この機を逃せば民間市場への参入が難しくなる」。スペースジェット(旧MRJ)プロジェクトは2008年、当時の佃和夫社長の鶴の一声で始まった。
 三菱重工業は戦時中に戦闘機「零戦」を開発し、日本の航空産業の本流だとの意識が強い。腕に自信を持った高学歴の航空エンジニアが数多く集まっており、「YS11」生産終了後も社内では民間機開発への復帰を望む声は強かった。
 産業創造が見込めるとして政府も後押しした。日本航空宇宙工業会(東京・港)によれば航空機産業の生産波及効果は自動車の約3倍と裾野が広い。経済産業省などは空力設計や先進操縦システムの開発のために約500億円の補助金を拠出した。
 航空分野への新規参入を目指すサプライヤーも相次いだが、想定を超えて長引く開発に中小企業を中心に悲鳴があがる。スペースジェットは13年の初号機の納入を見通したが、7年たった今も実現していない。
 事業の停滞は組織の力も奪う。三菱重工はスペースジェット事業の人員を20年度中にも現状の半分の500人規模に縮小する方針だ。すでに今秋までに半分以下に減らしてきたが一段と体制を縮小する。
 戦後、日本の航空関連企業はボーイングの中型機「787」に合計で3割超の部品を供給するなどサプライヤーとしての存在感を高めてきた。スペースジェット事業は業界を下請けから発注元へと転身させる思惑もあったが、三菱重工の失速でそれも現実味を失いつつある。(川上梓、西岡杏)

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