日本コカ・コーラと国内ボトラー5社などで構成する日本のコカ・コーラシステムは2030年までの温暖化ガス排出量削減で全世界のコカ・コーラを上回る意欲的な目標を掲げる。容器のリサイクルやサステナブル素材の拡大、自動販売機の省エネを推進。100%リサイクルのペットボトルでラベルもない製品をこのほど発売した。日本コカ・コーラのホルヘ・ガルドゥニョ社長は「世界初の知見を蓄積し、成功を確信すれば世界に広げていく」と話す。
Jorge Garduño 1992年モンテレイ工科大卒、ザ コカ・コーラ カンパニー入社。2001年テキサス大オースティン校経営学修士。17年から現職。メキシコシティ出身。52歳
当社とボトラー5社、関連会社で構成する日本のコカ・コーラシステムは21年10月、温暖化ガス排出量の削減目標を発表した。30年までに自社の排出量である「スコープ1」「スコープ2」は15年比で50%減、取引先などの「スコープ3」は30%減をめざす。ザ コカ・コーラ カンパニーが全世界の目標として掲げる25%減を上回る水準だ。50年までに全世界で温暖化ガス排出量の実質ゼロ(カーボンニュートラル)をめざしている。
グローバルでも積極的な目標を掲げているが、日本ではそれ以上に進展させたい。まず日本政府が設定した二酸化炭素(CO2)削減目標(30年度に13年度比46%減)に貢献したい。ここ数年、回収したペットボトルを新しいペットボトルに再生する「ボトルtoボトル」など様々な取り組みを進め、知見を蓄積してきた。同業他社と比べてもかなり意欲的な目標だ。
積極的な目標は社内のチームにも同業他社にも刺激を与えている。サステナビリティー(持続可能性)やESG(環境・社会・企業統治)は我々の仕事と切り離すことはできず、日々の行動すべてに関わっている。気候変動は現実に差し迫っている問題で、水、パッケージ、その他でCO2を含む温暖化ガス削減の取り組みを重ねてきた。
飲料メーカーにとって水は重要な要素だ。水の使用量削減、製造過程で使う水の循環、地域の水資源保護に取り組んでいる。21年には水源涵養(かんよう)率355%を達成した。言い換えれば、当社製品をつくるのに必要な水の3・5倍を社会や自然に戻したということだ。
パッケージに占めるサステナブル素材の割合は21年時点ですでに40%に達した。日本の飲料業界の中では最も早くこのマイルストーンに到達した。全世界のコカ・コーラシステムを見渡しても最も高い比率だ。
CO2削減は21年にスコープ1と2が15年比で21%減、スコープ3では20%減まで進んでいる。主に生産段階の燃料を重油から都市ガスに切り替えたことが大きい。さらに日本コカ・コーラ本社ビル(東京・渋谷)は21年5月から、原液を生産する守山工場(滋賀県守山市)では22年1月から、使用電力を再生可能エネルギー由来に切り替えた。それぞれ非化石証書、グリーン電力証書を活用し、CO2排出量を実質ゼロにした。
スコープ3の排出量削減は非常に大きな挑戦だ。すでに自販機の85%が13年から展開する省エネ型のピークシフト自販機に切り替わっている。日中の消費電力を最大で95%削減する。最長16時間、冷却用の電力が完全に停止したとしても冷たい製品を24時間提供できる。
容器も削減の大きな要因だ。20年3月の「い・ろ・は・す天然水」に続き、21年5月には「コカ・コーラ」など主要製品に100%リサイクルペットボトルを導入した。20年4月以降、い・ろ・は・す天然水や「綾鷹」「爽健美茶」などにラベルレス製品を導入。ラベルをはがす手間をなくし、リサイクルのための分別を楽にできるようにした。コカ・コーラシステム全体では22年に21年比で約2万9000㌧の石油由来原料プラスチック、約2万6000㌧のCO2排出量を削減できる見込みだ。
22年4月には100%リサイクルペットボトルでラベルレスの「コカ・コーラ」「コカ・コーラ ゼロシュガー」をオンラインで発売した。ボトルデザインも変えた。世界のコカ・コーラで初めての試みに対して消費者は好意的だ。プラスチックの使用量削減と聞くと、とても退屈な話で製品自体が魅力的に映らない懸念があったが、決してそうではない。中身がおいしくて、見栄えのするパッケージの製品をこれからも発売していきたい。こうした知見を蓄積し、成功できると確信すれば世界に広げていく。
資源有効利用促進法の省令一部改正で完全ラベルレスが可能になった
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