メニューを閉じる
2019年11月15日(金)

飲料・たばこ・嗜好品

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる業界をフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

IoTで蒸し米を生産管理 東酒造、省力化で生産増

2019/10/11 5:00
保存
共有
印刷
その他

日本酒を製造販売する東酒造(石川県小松市)は、あらゆるモノがネットにつながるIoT技術を酒米を蒸す工程に取り入れる。蒸し米は酒米を加工しやすくするほか、麹(こうじ)米をつくる重要な工程。IoTで常に温度管理を行い、省力化で生産性向上と、データの抽出によって商品の多様化を狙う。今年中に導入し、昨年度比で5%の生産向上を図る。

蒸し米の工程で使う「甑」。現在はスコップで蒸したコメをすくっている(8日、石川県小松市)

蒸し米の工程で使う「甑」。現在はスコップで蒸したコメをすくっている(8日、石川県小松市)

新たに導入するのは、「甑(こしき)」と呼ばれるコメを蒸すために用いる容器。容量は500キロリットルあり、IoTでクラウドに逐一温度の情報が蓄積される仕組みだ。合わせてクレーンも導入し、蒸し上がったコメを一気に次の工程へ運ぶことが可能になる。特注品で、投資額は400万~500万円ほどになる見通し。

蒸し米は、日本酒のもととなる酒母や麹をつくる重要な工程だ。甑の下部から蒸気を送り込むことで酒米を蒸すが、ボイラーに複数あるバルブで湿度や温度をうまく調整するのは至難の業。これまでは1人の職人が1時間、つきっきりでいる必要があった。

IoTで分単位のデータが取れれば、バルブの調節はしやすくなる。「蒸し米で酒の味が決まる」とも言われており、データを基にして新商品開発につなげる狙いもある。

日本酒の国内市場は縮小が続く。国税庁によると、日本酒の出荷量(課税ベース)は2017年度が53万キロリットル。ピークだった1973年度と比べると3分の1以下になった。

一方で純米吟醸酒や純米酒の出荷量は増加傾向にあり、消費者の嗜好は「量」から「質」に変わりつつある。東祐輔社長は「今はどのメーカーが作ってもおいしい酒ができる。求められているのは蔵の個性だ」と強調する。

その一つが、東酒造が海外向けに作った「神泉」ブランドの「純米吟醸旨口」だ。肉やフォアグラに合うよう作られた日本酒度マイナス10の超甘口は「ワイングラスでおいしい日本酒アワード2018」で最高金賞を受賞。国内でも若い女性を中心に人気が広がった。

東酒造の生産量は年間、一升瓶(1.8リットル)にして3万本と小規模だ。近年は海外向けの販売が好調で、販売量に占める海外の割合は15%ほどになった。中国や米国、ドイツに販売しており、今年はパリでの試飲会にも出展する。

ただ、販売量を大きく増やせない事情がある。東酒造は1860年に創業し、敷地内の茶室や数寄屋は国の有形文化財に登録されている。事業規模を大きくするためは、タンクや保管蔵を増設する必要があるが、スペースを確保できない。

その分、人材確保や設備の更新で補う。今年は冬季だけでなく、年間を通して働く正社員を2人採用した。東社長は「小さな酒蔵だが、IoTなど新しい技術を取り入れることで少しずつ、需要に応えていきたい」と話す。

2020年は創業160年にあたる。日本酒の製造工程や蔵の歴史を展示するギャラリーを設けるため、酒蔵の一部を改修中だ。節目に合わせ、新商品を作る構想もある。

(前田悠太)

保存
共有
印刷
その他

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ日経会社情報デジタルトップ

2630件中 1 - 25件

  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6...
  • 次へ

業界一覧

  • QUICK Money World