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第3回防衛力強化の有識者会議 出席者の発言全文
22年11月9日開催分

政治
2023/1/25 19:30
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政府は24日、防衛力強化の内容や財源を巡る方針を決めた「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」の全4回分の議事録を公表した。2022年11月9日に開いた第3回会合での出席者の発言全文は下記の通り。

国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議で発言する岸田首相(2022年11月、首相官邸)

国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議で発言する岸田首相(2022年11月、首相官邸)

折木良一・元統合幕僚長 現在の安全保障環境の激動については首相をはじめ皆様と同じ深刻な危機感を持っている。安全保障の概念は従来の外交や軍事のみならず経済、先端技術、地球環境問題などの分野まで広がり、国家の総合力を必要とする時代となった。

国の安全のためにこれから5年、10年の備えに国を挙げた努力が必要不可欠だ。時間に余裕がない。

防衛力強化のための重要な要素である研究開発と公共インフラについて意見を述べる。研究開発だけれども、防衛省の意見を踏まえた関係省庁会議の新たな取り組みの提案があった。

提案があった点に加えて例えば関係省庁会議を幅広く支えるために各省庁の技術情報の共有に限らず他の国内の先端技術もどこにあるのか、将来その技術動向がどうなるのか、全般を把握し継続的にフォローし先導をする専門的な組織が必要だ。

目利きのできる専門家集団が必要だ。それは日本版国防高等研究計画局(DARPA)になるかもしれないが、将来の貴重な先端技術に係る国の第三組織として育て上げるべきだ。

2点目は研究開発された技術の防衛装備品への早期装備化だ。具体的な装備に早くつなげなければ、戦い方が変わる時代の防衛に役立たない。従来の損耗更新、いわゆるある基準年数まで使えるだけ使った上で更新するという考え方の見直しも必要だ。

これは今までの研究開発、予算要求、取りえを縛ってきた側面でもある。その結果、例えば1989年に北海道の第一線部隊で大隊長として新しい通信機材を受け取り、その15年後、青森で師団長として同じ通信機材を受け取った。

これだけの同じ装備取得でも長計がある。部隊には2世代あるいは3世代の装備が同居する。これでは全国で部隊を運用する際には支障が出る。公共インフラについてはこのような連携の組織は画期的なことだ。

国民保護、自衛隊の運用、人員、物資の輸送などのためにも、ぜひ早急に現状改善のための整備を進めていただきたい。

またこれからの安全保障環境を考えれば、継戦能力、抗たん性、運用の柔軟性などを考慮すべきであり、南九州や四国なども視野に入れた整備が必要だ。また米軍の支援、協働という観点からも必要だ。

一方で使用できなければ意味がない。今、多くの制約がある港湾や空港のインフラを含めて地元や関係自治体の理解の下、自衛隊が平時から柔軟に利用できるよう関係省庁の尽力を切にお願いをしたい。

日本の安全保障環境は相手の意図の変化次第でいつでも脅威が顕在化する可能性がある。それに対処するためにまず抑止体制が重要であり、そしてハイブリッド戦から伝統的な戦いまでの覚悟も必要だ。

そして真に戦える自衛隊にするために正面装備ばかりでなく今議論いただいている装備の維持・整備、弾薬庫の整備、備蓄などの推進が必須である。第一線から後方まで組織全体の戦力化が必要だ。欠落があると真に戦えない。

反撃能力の保有はもちろんだ。東アジアの戦力バランスも変化していく中、日本自身の抑止力の向上、相手へのコスト賦課などを考慮しここの機能を持つべきだ。

その手段として多様なスタンド・オフ・ミサイルの議論もあるが、これは単なるアセット整備だけでなく必要な機能を含みシステム全体として整備を急ぐべきだ。

次に人の問題だが、人は戦力の基盤であり継戦能力の重要な要素だ。そして非常時に役立つ人を育てるには時間が必要だ。今、自衛隊の現場は人的に精いっぱいの活動をしている。無駄なところはない。

これからの少子化の中で隊員の確保は厳しさが予想されるが、サイバー、宇宙など新分野に民間から柔軟に人材を受け入れる、あるいは経験豊富な退職自衛官をもっと組織的に活用するなど、限られた現職隊員の有効活用に努める必要がある。

最後にこの時代の安全保障を考えるとき何ができるかではなく、何をなすべきかという発想がより一層求められている。

抑止力・対処力を強化し国民の信頼に応え得る真に戦える自衛隊を創造するために、ぜひ実質的な防衛費の大幅な増額の下、防衛力の抜本的な強化をお願い申し上げる。

佐藤雄二・元海上保安庁長官 私のほうからは海上保安庁の空港・港湾の利活用と能力強化の必要性について申し上げたい。海上保安庁の空港・港湾の利活用における現行上の問題点であるが、海上保安庁は2016年より「海上保安体制の強化に関する方針」に基づき勢力の増強を進めている。

大型巡視船については16年度当時の62隻から現在は70隻に、航空機については74機から92機に増強され、今後も整備を進めていく。このため私の在任中も新しく配備された大型巡視船の係留場所や航空機の格納庫の確保に苦労していた。

私が巡視船で尖閣領海警備などに従事していた当時も沖縄那覇地区には専用岸壁がなく、長い航行が終わり寄港し軍港に係留して休養していた際、突然岸壁が変更になり、補給や運用計画の変更を余儀なくされるといった苦労を経験したことがある。

こうしたことは他の地域でも起きていた。

「公共インフラ整備利活用に係る新たな仕組み」はこれまで不足していた岸壁や格納庫、そして今後増強される巡視船や航空機の配備場所の確保といった観点からも必要であり、また尖閣諸島領海警備や武力攻撃事態における国民保護活動を円滑に行う上でも極めて有益だ。

海上保安庁の能力強化の必要性についてだが、海上保安庁は戦後、海上法執行機関として創設され、以来この組織的特性を十二分に生かし、日本周辺海域で発生した様々な国際問題を紛争などに発展させることなく、適切に対処し、平和裏に解決してきた。

日本の最前線で海上保安庁が法執行機関として活動することこそが、平和の楯としての機能を果たすことであり、有事の抑止力になると確信し、業務にまい進していた。

近年東南アジア各国が相次いで海上法執行機関を創設していることも、海洋の秩序維持における法執行機関の重要性を示す証左だ。

武力攻撃事態になった場合でも海上保安庁の役割は重要だ。自衛隊との連携、場合によっては自衛隊の統制下において船舶の避難誘導や離島住民の避難、緊急輸送、海難救助といった業務に従事する。

また国内の重要区域の警備などの治安維持業務も的確に行う必要がある。ちまたで海上保安庁法25条が有事における自衛隊との連携を阻害する要因になっているといったような声を耳にする機会があるが、そのようなことは全くない。

たとえ有事においても海上保安庁による海の警察、消防、救急機関としての活動は、平時にも増して必要であり、自衛隊の活動を周辺から支えていくことになる。戦争とは国が有する様々なアセットや機能などの総力戦だ。

今後一層厳しさを増す我が国の安全保障環境を踏まえれば海上保安庁の抑止力、対処力は以前にも増して重要になる。海上保安庁の強化はまさしく日本の安全保障に大きく貢献するものだ。

上山隆大・総合科学技術・イノベーション会議議員 この会議の報告書のどこかに触れていただきたい論点を申し上げる。それは国力としての防衛力という会議の目的に沿うものだ。各国の科学技術政策を見てきた。その中でとりわけ印象深いのは米国における科学技術と安全保障を組み合わせた国家戦略だ。

かの国の防衛関係の投資は単に軍事力や軍事技術への資金供与ではない。学術、研究開発への強い関わりによって経済・社会全体の国力を見据えた国家投資になっている。安全保障政策の根幹に研究開発を通した産業構造の転換の政策がある。

これこそが米国の防衛戦略の核心だ。これに対して軍産複合体と陰口を言うものもあるが、それは表面的な批判にすぎない。

例えば第2次世界大戦前後から、国家防衛研究委員会の下部組織であった政府科学局の研究開発の実に3分の2が米マサチューセッツ工科大学(MIT)とか米カリフォルニア工科大学(カルテック)に投下された。ハーバードやコロンビアなどの10倍近い資金だ。

高周波電磁波、レーダー開発、核融合研究などを委託したMITへの投資がボストンの国道123号線沿いに研究開発を誘致しゼネラル・エレクトリックデュポンに代表される戦後の米国製造業の基盤をつくった。

カルテックへの投資は航空・宇宙産業を形成している。さらに1960年代に入って米国の製造業に陰りが見え始めたとき防衛関係投資は西海岸へと向かった。それは大西洋経済圏を主戦場としてきた米国が太平洋経済圏に目を向けた時期と重なる。

そして選ばれたのがローカルな私立大学にすぎなかった米スタンフォード大学だった。スタンフォードを調べていたときこの時期に国防総省由来の巨額の資金が投入されていることに驚いた。

加えてハーバードの知性とも言われケネディ大統領の首席補佐官となったマクジョージ・バンディはベトナム戦争にもコミットした人物だったが、後にフォード財団の理事長となってスタンフォード大学に巨額の資金を投入している。

その意図は明確で製造業で日本やドイツに負け始めた米国が次世代の産業としての情報産業を支えるために西海岸にハーバードと対抗できる大学をつくりたかったからにほかならない。

このころの防衛予算の西海岸への投資がなければ現在のスタンフォードがなかったし、さらにはシリコンバレーというICT(情報通信技術)に基づく産業構造も生まれなかった。

シアトルからサンフランシスコ、サンタバーバラ、ロス、サンディエゴとつながる現在の産業ベルト帯も生まれなかっただろう。これらの地域の港には多くの軍港がひしめいている。

防衛とは戦争を起こさないための努力であり、軍事力の均衡が戦争の抑止力になることは言うまでもない。しかし同時に広い意味での国力の均衡を企図することが重要だ。

経済成長の基盤となる新たな産業構造を作り出し、新たな税収入を生み出す。それも国力としての防衛予算の大きな役割だ。

翁百合・日本総合研究所理事長 まず防衛費増額への取り組み姿勢についてだ。厳しさを増す日本の防衛力強化について一般の方々の意識が高まっていることは世論調査の結果で確認できる。一方で防衛費増額をどの程度にすべきかこの場では定量的には議論されておらず、国民の意識もまちまちだ。

防衛力強化の緊急度の高さは十分理解するが、負担の議論まで視野に入れる以上、防衛費増加について国民の理解を得るには丁寧な説明が必要だ。

優先順位づけ、有効性、実現執行可能性のチェック、必要なスクラップ・アンド・ビルド、規模ありきではなく積み上げで検討を行うなど報告書にお書きいただきたい。

防衛費増額への転換点となる報告書なので歴史の検証にも耐えられるようにする必要がある。

第2にバランス、総合性の視点は欠かせない。研究開発や公共インフラの分野の各省庁の政策資源を活用する新たな枠組みは画期的と評価する。宇宙、人工知能(AI)など研究開発分野の取り組みやイノベーションを通じた経済成長にも資する方向への展開も期待する。

サイバーセキュリティーや外交活動の分野でもぜひ同様の取り組みを横展開していただきたい。これらを含めた総合的な防衛体制の強化に資する経費全体につき、KPI(評価指数)目標を設け、検証・評価をしながら強力に効果的に体制を強化していく必要がある。

また防衛力を支える総合的な国力の涵養は極めて重要だ。科学技術分野や人材育成、中長期的に国力低下の要因にもなる少子化への対応などにも目配りした有効な資源配分が必要だ。

第3に財政の基盤を整える必要がある。ドイツの基金構築の取り組みは平時から厳しい財政規律があったからこそ可能になっている。日本でも財源確保策の結論を早急に得ることが重要だ。

歳出改革については継続的な取り組みとしてはコロナ対策などでは社会保障費であっても歳出の無駄の事例も指摘されている。そうした無駄をなくして財源確保につなげる真摯な工夫が必要だ。

防衛力強化に必要な費用は本来今を生きる世代で幅広く負担を分かち合うべきだ。負担が偏り過ぎないよう様々な税目で検討する努力が必要であり、将来世代のためにも私たち世代の責任ある選択が求められる。

喜多恒雄・日本経済新聞社顧問 研究開発や公共インフラ以外にも国際的な活動の取り扱いやサイバーセキュリティーなど分野を広げて総合的な防衛体制の強化の取り組みをお願いしたい。

インド太平洋域における国々との連携など安全保障の観点から必要な国際的な協力を政府全体で推進することが必要だ。政府開発援助(ODA)などをうまく活用する方法を考えていただきたい。

民間との共同研究開発など担当官庁に予算づけして予算が縦割りにならないような予算執行の仕組みの実現を期待したい。縦割りから横割りへという予算づくりと執行だが、横割りにした場合は責任の所在を明確にすることが不可欠になる。

ともすれば横割りの組織運営は誰が最終責任者か曖昧になりがちだ。この点も忘れないでいただきたい。

財源についてだが、防衛力の強化は将来にわたって継続して安定して取り組むものだから安定した財源の確保が基本になることを明確にすべきだ。財政基盤の強化は防衛力強化の基礎的条件であることを報告書に明記してほしい。

財源確保にはまず歳出改革を徹底してその上で広く国民全体で負担することが基本で、それを国民に理解してもらう努力が不可欠だ。

防衛力強化への国民の関心はこれまで以上に高まっている。継戦能力の実態や装備品の稼働率の状況などを明らかにしてこのままでは有事への対応が難しいことを示して国民の理解を得られるか、今が勝負の時だ。この年末に決着させることが大切だ。

防衛関連には長く続いてきた様々な制約がある。装備品の輸出規制はその典型だけれども、インフラ整備に充てられる財源手当にも不思議な制約がある。防衛体制の強化に使う費用には公共インフラが含まれて、これは建設国債が財源になる。

ところが自衛隊の隊舎など防衛費から捻出するものには建設国債が充てられない。こうした伝統的な考えも防衛力強化の財源確保を検討する中で見直すことが必要ではないか。

最後に国を守るために国民に広く負担を求めるということをちゅうちょせず、分かりやすい言葉で説明することを首相に求めたい。

国部毅・三井住友フィナンシャルグループ会長 重要と考える事項について5点申し上げたい。1点目は総合的な防衛体制の強化に向けた取り組みについて日本の防衛力を抜本的に強化していくにあたり関係府省が横断的に研究開発や公共インフラの整備・利活用で連携していく枠組みに賛同する。

こうした枠組みを実際に運営していく上で鍵となるのが実効性の確保だ。防衛省、自衛隊、海上保安庁のニーズが的確に反映され、防衛力の強化につながっていくよう、関係者の意見や連携の状況、課題に目を配りながら運営していただくことを期待する。

2点目は予算の規模について。必要な予算の規模に関する議論が必要だ。そもそもこの有識者会議では防衛力の内容、予算規模、財源について一体的に議論することが期待されているが、予算規模に関する議論が少ない印象だ。

5年間で48兆円といった数字も報じられているが、7つの柱についてそれぞれ何をどこまで強化するのか、今後5年、10年というタイムラインの中で既存のアセットを含めて優先順位をつけながらどのように防衛力を強化していくのか、防衛力の内容とセットで予算の規模を議論する必要がある。

3点目は財源確保の考え方について。まずは歳出改革を行った上で不足する財源について措置を検討していくべきだ。

なお財源の検討にあたっては防衛力強化の受益が広く国民全体に及ぶことを踏まえてそれに要する費用は国民全体で広く薄く負担する形を目指すべきだ。

4点目は国民の理解について。米中対立の緊迫度の高まりや周辺国による相次ぐミサイル発射などを受けて国民の安全保障に対する関心が高まってきている。

日本がおかれている安全保障環境に加えて国民生活の安全や経済活動の安定を守るために必要な措置やそれに伴う負担について国民自身が理解をする必要がある。

なぜ防衛力を強化する必要があるのか、そのためにどれぐらいの負担が必要なのか、政府として首相の口から分かりやすく国民にメッセージを打ち出してもらいたい。

5点目は防衛産業の強化について。防衛力を総合的に強化していくには防衛産業の強化は欠かせない。

企業が大きな負担を感じている商慣行や手続きの見直しに加えて政府として海外に市場を広げる方策に取り組んでいただき、防衛産業に携わる企業が成長事業として取り組める環境を整備する必要がある。

黒江哲郎・三井住友海上火災保険顧問 まず自衛隊だけでは国を守れないと、そういう意味で縦割りの行政を排するということが大事だ。これに対して新たな枠組みを設けて対応することは大変大きな進歩だ。その上であえてこの点について2点強調したい点がある。

1点目は海上保安庁の体制強化だ。最近、海上保安庁専用の岸壁というのが全国で2か所しかないということを初めて聞いた。これはがくぜんとした。

今後、海上保安庁のさらなる体制強化と自衛隊と海上保安庁との間のプラクティカルな連携を強化していただくということが最も大事ではないか。

もう一点はサイバーだ。これはウクライナの件でも顕著だが、スターリンクだとかマイクロソフトだとか民間企業がウクライナの防衛にかなり大きな役割を果たした。

日本においてもサイバー人材というのは極端に不足している。少ない人材で効率的に能力を発揮するためには当然、政府部内での連携とともに官民の協力というのが絶対的に必要だ。そのために新たな仕組みというのをぜひお願いしたい。

もう一点、自衛隊が強くなければ国は守れない。まさに防衛力の抜本的強化ということの本丸だ。

その点に関連して防衛産業というのは戦力そのものであるという指摘、あるいは人材の確保について民間の方の活用だとか、事務官、技官の活用、さらには退職自衛官の活用は目立たない施策ではあるけれども、防衛力を強化していく上で死活的に重要な点だ。

最後に何ができるかではなく、何をなすべきかという発想に転換すべきだとの指摘は大変に重要だ。防衛計画の大綱だとか中期防の中で国の他の諸施策との調和を図りつつという言葉を用いながら防衛政策を展開してきたけれども、このこと自体今も大変重要だ。

この中には当然、国の財政状況を勘案することも重要だ。今の情勢を考えたときには国民にさらなる負担増をお願いしてでも防衛力を強化しないといけない時期に来ている。

そのことをぜひ認識を共有してここの有識者会議の結論にも反映していただきたいし、今後の施策にもぜひ具体的に反映していただきたい。

中西寛・京大教授 大きく2点、新たな総合的防衛体制の強化に向けた取り組みの話と自衛隊の体制について申し上げる。

2つ新しい関係府省会議というのをつくられるそうだけれども、こちらについては毎年の予算ということになっていて中期防衛力整備計画(中期防)というのは5年計画のわけだ。防衛についてはやはりある程度の複数年次が必要だ。

毎年研究開発とかインフラについてどれだけ予算をつけていくかという話と一緒にやるというのは実際の現場の議論としてはかなり難しいものではないか。その辺りの交通整理をしていただきたい。

付け加えて公共インフラについて港湾・空港ということがもちろん大きなテーマだが、それ以外のもの、国交省が管理されている道路であるとか構築物も必要なものがある。

サイバーの通信、電力、インフラといったようなものも、やはりきょう防衛にとって重要なので、そういったものについてどう手当するかもお考えをいただきたい。

同時にやはり日本の防衛の問題は予算の話が非常に比重が大きくて、政策、戦略の話がなかなかないということで、こちらもせっかく府省会議というものをつくるのだったら、予算の話だけではなくて、何のためにやるのかということを議論する場ということをきちんとお考えをいただきたい。

そして国家安全保障会議、4大臣会合とか9大臣会合とかあるけれども、それとの連携も含めてお考えをいただきたい。

2点目、自衛隊の体制についてだが、自衛隊は非常に活動がぎりぎりと言うか、精いっぱいやっている。

その上でやはり平成時代、震災関係を中心に様々な分野で自衛隊が活動する範囲が広がったということは国民理解にとって非常によかったけれども、令和の時代になってみると自衛隊ばかりに頼り過ぎるということはあってはならない。

消防だとか警察だとかあるいは医療、そういった分野とどういう分担をして緊急時に対処するかということをお考えいただくことが、自衛隊をより対外安全保障、防衛に専念させるために重要なので、その辺りの手当を考えていただきたい。

自衛隊について陸海空3隊ということで伝統的にやってきた。既にサイバー、宇宙といったような3隊をまたがる、あるいはそれらとは別の空間の話が非常に重要になっている。

それらについて例えば防衛大学校や各種組織においてどういうふうに人材養成していくかということについても新しい発想で取り組む必要があるのではないか。

橋本和仁・科学技術振興機構理事長 研究開発に対して2点申し上げる。まず1点目だ。アカデミアにおいても国家への貢献の重要性を十分に理解し、マルチユース研究に対しても協力的である人たちが増えてきている。表現などには十分な配慮をお願いしたい。

次に2点目だ。現在、研究開発について関係府省の連携の在り方が中心に議論されている。

もちろん大切だが、いくら政策の大きな方向性を決める枠組みをつくっても、そこで議論される中身が科学技術の最先端の情報や世界の潮流などを十分に踏まえたものでなければならないことは申し上げるまでもない。

その意味において実務者レベルの連携、特に最先端の情報を持った研究者の知識、知恵を有効に吸い上げるためのシステムを構築することが重要だ。

例えば米国の国防科学委員会(DSB)では委員会の下にテーマごとにDSB委員とその分野の専門家からなる10人程度のタスクフォースを形成し、そこでの議論を本委員会や国防総省の政策へ反映させている。

例えば現在はサイバー戦闘能力などの具体的なテーマの下、16のタスクフォースが活動している。日本はこのような専門家の知見をシステマティックに吸い上げるシステムが存在していない。

強調したいのはその分野の最先端の知識と世界の動きを知っているトップ研究者の知を活用することだ。ぜひその重要性を再確認していただき、組織化を考えていただきたい。私も可能な限り組織づくりに協力する。

船橋洋一・国際文化会館グローバル・カウンシルチェアマン 防衛力の増強は待ったなしだけれども、国民を守らずに国家を守ることができないという点を今回の議論を経て国民に説明するときに踏まえる必要がある。

もうひとつは安全保障は一番弱い環(リンク)以上強くならない安全保障の1つの鉄則だ。どこが一番弱いのか、その一番弱いところが国民ということでは安全保障は成り立たない。この2点がとても必要だ。

特に日本の場合に考えなくてはいけないのは有事の際のシーレーン(海上交通路)の防衛と商船隊の防護だ。日本は島国であるのでシーレーンと商船隊が地政学上逃れられない弱い環(リンク)であり続けている。

ここについてゼロベースから問い直す必要がある。日本のシーレーンはどうなのかと、商船隊防護はどうなのかと。台湾有事の際、インド洋に出るまでの台湾東方、フィリピン、インドネシア海域での安全な航行へのリスクが高まることが考えられる。

台湾からの邦人の輸送も必要だ。これらの海域において自衛隊と海上保安庁がそれぞれどういう使命と役割で商船隊防護に当たるのか、そのドクトリンはどうなのか。作戦はどうなっているのか。まことに心もとない。

造船産業の再建と特に液化天然ガス(LNG)運搬船の自力建造能力の必要性を挙げたい。今、日本はLNG運搬船を一隻も自国で建造していない。日本は今、世界第二のLNG輸入国だが、30年度でもLNGは全体のエネルギーバランスの20%を占めている。

島国日本の造船産業は国家安全保障、経済安全保障、国民安全保障の海上物流インフラを支える基盤だ。

2つ目が基地の日米共同使用を促進するということだ。アーミテージ・ナイリポート(2018年)が指摘したように「それぞれ別々に基地を持つぜいたくは許されない」時代へ入ったことを認識すべきだ。

基地の共同使用はムダを省き、相互運用性を向上させ、日米共同で反撃能力を強化し抑止力を高める意思決定の共有という戦略的協調にほかならない。これは17年の「2プラス2共同声明」でも合意しているところだが、なかなか進まない。

特に南西諸島と先島での共同使用態勢を整えるべきだ。反撃能力を備えたミサイルの保有が必要としても、その配備場所を確保しなければ意味がないし、継戦能力を確保するには弾薬の事前集積が不可欠だ。

有事における海上自衛隊、海上保安庁の役割、これを明確に定義する。有事の際の海上保安庁の活動に邪魔だから海上保安庁法25条を変更せよとの意見もあるが、ここは従来の政府見解に従えばよいので、変更する必要はない。

ただし平時、危機管理、有事とそれぞれにおいての自衛隊、海上保安庁の任務と役割分担、それから米軍との共同作戦のあり方などについて明確な方針と計画をつくる必要がある。

そのために政令を制定しないことには有事を想定した共同訓練もできないわけだから、速やかに政令をつくっていただきたい。

最後は財源だけれども、幅広く国民に負担していただくのが筋だ。その際、個人の所得税の引き上げも視野に入れる必要がある。

その前にしなければならないことがある。防衛費、なかでも研究開発やシステム開発の優先順位、実現可能性、費用対効果などの検証が必要だ。

防衛費を増やす場合は、検証してから増やす。増やした後は、必ず検証する。それを踏まえてスクラップ・アンド・ビルドを行うサイクルをつくる。その上で増税をお願いする。

山口寿一・読売新聞グループ本社社長 防衛力強化の7つの柱についてもう少し踏み込んだ具体論を示してもよいのではないか。

日本は目前の脅威に直面している。そこを踏まえると最も優先されるべきは有事の発生それ自体を防ぐ抑止力であって、抑止力に直結する反撃能力、つまりスタンド・オフ・ミサイルではないか。

国産の改良を進めつつ外国製のミサイルを購入して、早期配備を優先すべきだ。宇宙、サイバー、電磁波では特にサイバー防御は待ったなしだ。アクティブ・サイバー・ディフェンス(能動的サイバー防御)の必要性も高まっている。

電力会社など民間も含めた国全体のサイバー防御を進めるべきだ。5年以内の抜本的強化というかつてない取り組みとなる。国民負担の議論を進めるためにも戦略性・実現性・費用対効果を踏まえた防衛力強化の中身・道筋を分かりやすく示してもらいたい。

次に経済財政の在り方だ。近年、先進国では産官学が一体となってプロジェクトを進めて、自国の経済力を高める手法が積極的に取られている。

政府がミッションを掲げて企業や大学を巻き込んで経済を成長させながら同時に公共の利益を達成していく「ミッションエコノミー」とも呼ばれる手法だ。

こうした手法はもともと日本のお家芸だったが、かつての貿易摩擦あるいは政財官の癒着への批判、デフレ下での変化を嫌う空気が折り重なってあまり機能しなくなっている。

国力としての防衛力を強化するには経済力を強化する必要がある。それには日本が官民一体の推進力を取り戻して変化に挑戦する機運を高めて新しい形の資本主義を推し進める体制をつくらなければならない。

防衛力強化には先端技術の開発や防衛産業の振興など日本の経済力強化につなげられそうな糸口がある。経済力強化を図り、その中で財源の議論がなされるという展開が望ましい。

最後に防衛産業の振興だが、防衛産業の振興は官民一体で取り組むべきだ。

その観点から防衛産業に関しては何が原因で企業の撤退が続いたのか、企業側は何を望んでいるのか、防衛装備品の輸出を妨げていた要因は何か、外国の防衛産業との競争に勝つにはどうすればいいかなど課題を総ざらいすべきだ。

その上で防衛産業強化に必要な制度設計と工程表策定を進めるべきだ。諸外国は政府と企業が一体となって防衛装備品の輸出を拡大している。

日本が伍(ご)していけるように課題の洗い出しや制度設計にあたっては研究開発や公共インフラと同様に防衛省に関係府省を加えた体制で取り組む必要がある。

佐々江賢一郎座長 まず研究開発と公共インフラの問題についてはよくぞここまできた。これまで先端技術に関するデュアルユースの研究開発や南西諸島の空港・港湾の利用などは本当に手付かずだった。

これが新しい制度ができるのは非常にいいことだけれども、ぜひ中身に魂を入れていただきたい。

2番目にこういう分野は本体の防衛力強化をいわば補完し、有効に働かせるために一体となって整備されるべき性格のものだ。防衛力の抜本的強化のための中期防の対象経費というのは今の水準を大幅に増額させなければ満たせないことは明らかだ。

増額については何をすべきかという観点からぜひ検討をお願いしたい。

3番目に恒久支出、恒久財源としての防衛費の増額のための財源については税をやらなければいけないことは明らかだ。しかし同時に抑止力強化に必要な体制は有事に対応してつけなければいけないという点についての理解を国民に求めていく努力が本当に必要だ。

確かに増税幅というのは限界もあるけれども、それを前提にその中で賄うということだと、できる範囲でやるということになるわけだが、そういう考えではなくて、しっかりと防衛費に向けるということでお願いをいたしたい。

3番目に防衛力強化は一体何のためにやるのかということについて説明していただけるとありがたい。それを要望したい。

林芳正外相 グレーゾーン事態とかハイブリッド戦というものが現在行われており、ここから日本を守るということで、防衛省、自衛隊に限らない総合的な防衛体制の強化が必要だ。

総合的な防衛体制の強化に向け同盟国、同志国との連携を含む外交的な取り組みを通じて日本の抑止力というものを向上させる点についても貢献したい。

浜田靖一防衛相 あらゆる事態において「最後の砦」となるのは自衛隊であるとの確信の下、日本防衛という責務を完遂できるよう防衛力の抜本的強化のために必要な内容をしっかりと積み上げているところだ。

特に今回、防衛力の持続性・強靱(きょうじん)性やスタンド・オフ防衛能力といった内容は今般の検討の中で防衛省としても重視している分野だ。「反撃能力」も含めあらゆる選択肢を排除せず検討をさらに加速し、5年以内の防衛力の抜本的強化を責任を持って推進していく。

防衛力を補完する研究開発、公共インフラなど総合的な防衛体制の強化に関する事業についても防衛力の抜本的強化と同様、事業の内容やそれに伴う経費について真に必要なものを積み上げていくことが不可欠だ。

防衛省としてもそのための取り組みにしっかりと関与したい。

高市早苗経済安全保障相 経済安全保障重要技術育成プログラムを活用し、スタートアップ企業やアカデミアも含めて日本の技術力を結集して安全保障を含めた国力の強化に円滑につなげていくことが重要だ。

重要技術課題のマッチングについての具体的な運用の検討にあたり特別な要望枠などを活用した適切なインセンティブ付与や機微な情報の取り扱いも含め意欲のある優れた研究者や研究機関が安心して参画できる魅力ある環境づくりと多義性のある先端的な科学技術の安全保障分野への利用可能性の向上、これらを両立できる仕組みとなるようにぜひとも配慮をお願いする。

斉藤鉄夫国土交通相 国土交通省としても空港・港湾などの公共インフラを所管する立場として自衛隊の部隊展開や住民保護などのニーズを踏まえつつ政府全体での取り組みに参画していく。

その際には地元自治体や地元住民から理解と協力をいただくことが不可欠であり、そのためには国土交通省だけでなく政府全体で取り組む必要がある。特に港湾と那覇空港を除く南西諸島の空港は地方自治体が管理しているということに留意する必要がある。

こうした観点を含め新たに設置される関係省庁会議の場などを通じ、国土交通省としても関係省庁と一層連携し、しっかりと取り組んでいきたい。

西村康稔経済産業相 まず研究開発であるが、事業者等の技術シーズと防衛省などの安全保障上のニーズをマッチングさせることが重要だ。

経産省は民生向けの研究開発の目的が産業競争力の強化などにつながるということを踏まえた上で航空機用材料などの分野で安全保障上のニーズにも対応してきている。

経済安全保障重要技術育成プログラムなどにおいても防衛省と着実に連携していきたい。また新たな枠組みにおいても当初予算の特別な要望枠などを活用し、従前以上に安全保障上のニーズにも対応するよう努めたい。

その上で新たに整備される国家安全保障局と経済安全保障推進室を含む内閣府などが連携する政府一体の推進体制の中で民生で活用でき、防衛力の強化にも資する研究開発成果の実現を目指していきたい。

防衛費の財源について申し上げる。デジタルやグリーンなどを中心に民間投資が上向くなど日本経済にようやく変化の兆しが出てきている。この5年間がまさに成長軌道に乗るかどうかの重要な時期であることを踏まえ、慎重に検討すべきだ。

その上で防衛産業の基盤強化の必要性・緊急性は論をまたない。経産省としてこの基盤強化の取り組みと経済成長につながる国内投資の促進を両輪として進めたい。

永岡桂子文部科学相 国力としての防衛力の強化に政府一体となって取り組んでいく必要があることは言うまでもない。まず岸田政権の重要政策である科学技術イノベーションを進めるためには政府として研究開発投資の充実が必須だ。

その上で特別な要望枠の活用などを通じて研究開発分野としても強力に推進していく必要がある。文部科学省としても科学技術の振興を通じ貢献していきたい。

予算の目標額ありきではなく研究成果と防衛省などのニーズが具体的にマッチングすることが重要だ。このためには個々の研究目的の尊重など研究現場にも配慮しながらその成果が防衛力強化につながる方策の構築が必要だ。

この際、国立研究開発法人を活用するなど研究者が参画しやすい環境を作り上げることが重要だ。今後の検討では意欲のある研究者や研究機関にとって参画しやすい環境が創られるようお願いする。

寺田稔総務相(当時) 今後の防衛力強化に向けて研究開発投資の拡大が必要だ。そうした中、防衛省の研究開発ニーズと各省が有する技術シーズのマッチングを実施する上で関係省庁会議を活用し、政府内にて必要に応じ総合調整を担う府省が予算を計上し、関係省庁に移し替えて研究開発を実施する仕組みを取り入れるべきだ。

新たな仕組みの構築にあたり各省間の連携を強化し、その制度設計の検討を進めるべきだ。

岸田文雄首相 本日までの議論で防衛力の抜本的強化の必要性について共通の理解が得られた。研究開発・公共インフラとあわせて抑止力強化のための同志国などとの国際的協力とサイバー安全保障についても関係府省が連携する新たな仕組みを構築することについて大きな方向性を共有することができた。

この4経費を総合的な防衛体制の強化に資する経費としてその仕組みや規模を含めた具体的な在り方について防衛省や海上保安庁のニーズを踏まえつつ関係省庁において将来を見据えた前向きな検討をお願いする。

防衛力の強化にあたって経済財政の持続性に対する高い信用や産業競争力とあわせて国力全体を強化していくことが重要だ。

現在、政府・与党においては3文書を始めとして5年以内の防衛力の抜本的強化、その裏付けとなる防衛費の相当な増額の確保に向けて具体策を精力的に議論しているところだ。

必要となる防衛力の内容の検討、そのための予算規模の把握及び財源の確保を一体的かつ強力に進めていく。

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