物質・材料研究機構(NIMS)はソフトバンクやオハラと共同で、究極の蓄電池とも呼ばれる「リチウム空気電池」の劣化を抑える技術を開発した。固体電解質で作製した薄いシートを正極と負極の間に挟むことで、負極に使うリチウムを保護して寿命を2倍に延ばした。さらなる長寿命化を進め、ドローンなどの電源として実用化を目指す。
保護シートは薄く柔軟性がある=NIMSの松田翔一主任研究員提供
リチウム空気電池は正極に空気中から取り込んだ酸素、負極にリチウムを使う次世代電池だ。従来のリチウムイオン電池に比べて重量あたりのエネルギー密度が数倍に高まると期待される。放電時にはリチウムが負極から溶け出し、正極で酸素と反応して過酸化リチウムができる。充電時は逆に、過酸化リチウムが分解して酸素を放出し、負極でリチウムに戻る。
NIMSなどの研究チームは過去に、エネルギー密度が1キログラムあたり500ワット時のリチウム空気電池を開発した。エネルギー密度は現行のリチウムイオン電池の2倍を超えるが、10回ほどの充放電で容量が8割以下に低下する問題があった。
充放電を繰り返した後の電池を電子顕微鏡で観察すると、負極に使うリチウムの厚みが半分ほどに減っていた。電池内部のガスを分析したところ、正極で電解液などと反応して生じた水や二酸化炭素(CO2)が負極側に移動し、負極を劣化させたことが分かった。
そこで、正極と負極の間に薄い保護シートを挟んで、負極を劣化させる物質が正極から負極へ漏れ出さないようにした。保護シートは酸化物型の固体電解質を厚さ6マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルに加工して作製する。電気を取り出すのに必要なリチウムイオンは通すが、水やCO2は通しにくい性質がある。
保護シートを使わないと負極のリチウムが劣化し㊧、使うと劣化を防げる=松田主任研究員提供
保護シートを電極の間に挟んで作製した電池は、負極の劣化が抑えられて20回以上の充放電を繰り返した後でも容量を8割ほど維持できた。エネルギー密度は1キログラムあたり400ワット時で、従来のリチウムイオン電池の2倍ほどという。
これまで、リチウム空気電池の劣化の主な原因は正極にあるとされていた。NIMSの松田翔一主任研究員は「定説を覆す発見で、リチウム空気電池を改良するための指針になるだろう」と期待する。今後、劣化しにくい新しい電極材料を探したり、劣化を促す物質の発生を抑えたりし、充放電を100回以上繰り返せる電池の開発を目指す。
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