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パイオニア、ファンド傘下でも迷走 虎の子を売却へ

日経ビジネス
コラム(ビジネス)
2020/9/30 2:00
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カーナビは市販と、完成車メーカー向けのOEM(相手先ブランドによる生産)供給の双方を手掛けている

カーナビは市販と、完成車メーカー向けのOEM(相手先ブランドによる生産)供給の双方を手掛けている

日経ビジネス電子版

経営危機に陥り上場廃止となったパイオニアが虎の子を売りに出した。パイオニアを買収したアジア系ファンド、ベアリング・プライベート・エクイティ・アジアのもと経営再建を進めている真っ最中だが、カーナビなどに高精度のデジタル地図情報、位置情報を提供する完全子会社のインクリメント・ピー(東京・文京)の売却手続きに入ったことが明らかになった。ベアリングによる買収時点で「パイオニアの価値の大半を占める」(交渉に関わった証券会社幹部)ともいわれたインクリメント・ピーを手放そうとしているパイオニアはどこに向かうのか。

ベアリングは2019年、1000億円強を投じ、経営危機で存続が危ぶまれていたパイオニアを買収した。カーナビなど主力事業の低迷で銀行にも見放された結果、ファンドによる救済しかパイオニアには選択肢が残っていなかった。

当時、ベアリング幹部はパイオニアの魅力を「デジタル地図データなど将来の自動運転に必要不可欠な技術を持つ」と語っていた。それこそがまさにインクリメント・ピーのことだった。ところがベアリングはそのインクリメント・ピーを売ろうとしている。

ベアリングがパイオニアを買収した当時、同じくパイオニア買収に興味を示していたあるファンド幹部は「インクリメント・ピーを原動力にしてパイオニアを再成長させられるかどうかお手並み拝見。もしうまくいかなかったらベアリングはせめてもの投資回収を、と思ってインクリメント・ピーを売るのではないか」と話していた。

既にJPモルガン証券がセルサイド(売り手側)アドバイザーに選定され、買い手候補となりうる企業やファンドに買う気がないかを打診している。そして米カーライル・グループなどの投資ファンドやオリックス、損保大手、通信大手などが買収に意欲を示しているとされ、今後は入札で買い手が決まっていくことになる。

ベアリングの希望売却価格は関係者によると400億円程度とされるが、買い手候補からは「よくて300億円前後の勝負」という声が聞こえてくる。自動運転の普及が見込まれるとあって、デジタル地図データは欠かせない分野として成長が期待される一方、世界中で新規参入組も多く競争環境が激化しているからだ。最近では米インテル傘下のモービルアイ(イスラエル)も日本でデジタル地図に参入した。インクリメント・ピーの競争力は以前より少しずつ落ちてきているという指摘もある。

ただトヨタ自動車ホンダ日産自動車といった大手自動車メーカーやソフトバンクKDDINTTドコモなどの通信大手を主要取引先に持つインクリメント・ピーは、パイオニアにとって重要な戦力だったはず。もし手放してしまったら何が残るのだろうか。

■主力事業に欠かせないパーツ

パイオニアのホームページを見ると、主要事業はカーエレクトロニクスとその他に分けられている。つまりカーエレクトロニクスが依然主軸だ。その中でも最初に出てくるのがカーナビゲーションなどの「モビリティプロダクト」。これは「カロッツェリア」に代表されるカーナビなどの市販と、完成車メーカー向けのOEM供給の2種類がある。ただ市販のカーナビはスマホに搭載されたグーグルマップが存在感を高めており、販売増は見込みにくい。そしてOEM供給は「ほとんど利益が出ないどころか自動車大手の求める品質にするためコストがかさんで赤字体質」(パイオニア関係者)だ。

こうした「モビリティプロダクト」、つまりハードの苦戦を補うために強化するのが「モビリティサービス」、つまりソフトのはず。こちらはデジタル地図データなど各種情報を組み合わせた先進運転支援システムを手掛ける「データソリューション」と、デジタル地図の製作・販売に二分される。インクリメント・ピーはここに欠かせないパーツのはずだ。

成長ドライバーの一部を失ってもいいという判断はどこからくるのか。ハードで持ち直す算段がついたのだろうか。OEM契約は通常数年間にわたる長期契約のため、短期間で一気に採算を改善させるのは容易ではない。しかも相手はコストにうるさい自動車大手だ。市販も新型コロナウイルスの影響もあり、国内新車販売台数(軽自動車含む)が8月まで11カ月連続で前年割れになるような厳しい状況で、好転を期待するには無理がある。

ベアリングがパイオニアの再建に音を上げて、なんとか自分たちの採算だけ合わせようと切り売りに走っているとは考えたくないが、「ファンドによるパイオニアの解体ショーが始まった」(外資系証券幹部)と冷ややかに見る向きもある。存続の危機からベアリングに救われ一息ついたはずのパイオニアだが、迷走はまだ終わっていないようだ。

(日経ビジネス 奥貴史)

[日経ビジネス電子版2020年9月28日の記事を再構成]

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