日本の中央銀行。上場しているが、株式の取引量は少ない
日本経済新聞社の総合経済データバンク「NEEDS」の日本経済モデルに、内閣府が11月15日に公表した2022年7~9月期の国内総生産(GDP)速報値を織り込んだ予測によると、22年度の実質成長率は1.9%、23年度は0.8%の見通しとなった。
海外経済は物価高と金融引き締めなどで減速が続き、23年以降、日本の輸出は減少基調となる。ただ、消費や設備投資など国内民間需要は底堅く推移し、景気を下支えする見通しだ。
7~9月期の実質GDPは前期比0.3%減(年率換算で1.2%減)と、4四半期ぶりのマイナス成長だった。輸出は前期比1.9%増加したが、輸入が同5.2%増と大きく膨らんだことで、外需がGDPを大幅に押し下げた。個人消費は同0.3%増と4四半期連続増加、設備投資は同1.5%増と2四半期連続で増加した。
貿易統計を基に日銀が算出した10月の実質輸出(季節調整値)は、前月比1.3%増と2カ月連続で増加した。中国向けは同6.2%減だったものの、米国向けが同3.0%増、欧州連合(EU)向けが同2.4%増だった。
ただ、今後は海外経済の減速感が強まり、輸出にも下押し圧力がかかる見通し。米国では10月の消費者物価指数(CPI)上昇率が前年同月比7.7%と依然として高く、米連邦準備理事会(FRB)による金融引き締めは当面続く見通しだ。また、中国では新型コロナウイルスの感染封じ込めを狙う「ゼロコロナ」政策などで景気の停滞が長期化している。
世界経済の減速により、日本の輸出は23年1~3月期以降、前期比減少に転じる。22年度のGDPベースの実質輸出は前年度比4.6%増となるが、23年度は同1.8%減と3年ぶりのマイナスになる見通しだ。
個人消費はコロナ禍からの回復が続いている。10月も消費は好調に推移したとみられる。自動車の業界団体が公表した10月の国内乗用車新車販売台数(軽自動車含む)は、NEEDS算出の季節調整値で前月比13.4%増と大幅な増加となった。半導体など部品の供給網の混乱は徐々に改善しているもようだ。
日本でも物価上昇が消費に下押し圧力をかけるが、これまで抑制されてきたサービス消費の回復に加え、家計の現預金残高も高水準にあることから、個人消費は緩やかな増加基調が続くとみている。GDPベースの個人消費は22年度に前年度比3.0%増、23年度に同1.2%増になると予測している。
設備投資は増加基調を維持すると予測している。内閣府の機械受注統計では、設備投資の先行指標とされる「船舶・電力を除く民需(季節調整値)」の10~12月期見込みは前期比3.6%増だった。コロナ禍や世界的な供給網の混乱で先送りされた投資が実施されているとみられる。
23年度もこの流れが続くほか、企業はデジタルトランスフォーメーション(DX)や再生エネルギー関連、半導体関連の能力増強投資などを増やす方向だ。ただ、財務省の法人企業統計ベースの経常利益は、交易条件の悪化などにより、23年度には減少に転じる見込み。GDPベースの設備投資は22年度に前年度比3.8%増となるが、23年度は同1.8%増に伸びが低下する見通しだ。
政府は11月8日の閣議で第2次補正予算案を決めた。電気代やガス代の抑制策などが中心で、総額は約29兆円にのぼる。公共投資関連では防災・減災、国土強靱(きょうじん)化対策として1兆2500億円、災害復旧費など5100億円が計上された。本予測ではこれらを織り込み、22年度の名目公共投資は前年度比2.8%増、23年度は同3.3%増と予測している。
なお、今回のNEEDS予測は、日本経済研究センターが22年11月に公表した短期予測をベースにしている。
(日本経済研究センター 山崎理絵子、情報サービスユニット 渡部肇)
春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料!