【漬物】浅漬けや福神漬けを製造・販売。キムチなど完成品も。
自然豊かな埼玉県飯能市の郊外に、なかなか予約の取れないレストランがある。発酵食品をテーマにしたテーマパーク「OH!!!~発酵、健康、食の魔法!!!~」内にある「Femy_(フェミー)」だ。健康を意識する女性を中心に人気で、昼食時には平日でも100人ほどが訪れる。
例えば、まきの火で焼いた肉や魚には発酵調味料を駆使したソースを使う。玄米は圧力釜で炊いてから保温したまま3、4日発酵させ、玄米のイメージを覆すもちもちした食感を引き出す。食後のコーヒーですら「味を引き出すために焙煎してから寝かせた」(河合幹雄料理長)というほど発酵にこだわっている。
初めて訪れたさいたま市の50歳代の夫婦は「発酵と聞いて酸味や香りが強い料理を予想していたが、そんなことはなく、とてもおいしかった」と話す。
2020年10月に開業したこの発酵食品テーマパークは、漬物大手ピックルスコーポレーションが開設し、子会社のOH(飯能市)が運営している。敷地は古刹の能仁寺に隣接した約3000坪を同寺から借りた。フェミーのほか、ぬか漬け由来の乳酸菌を使ったメニューや商品を提供する「ピーネカフェ」、全国の発酵食品を集めた物販店「八幡屋」、キムチやぬか床作りのほか発酵調味料を使った料理教室などが体験できる「パリシャキ研究所」を設けた。キムチ作り体験は予約を開始するとすぐにいっぱいになり、カフェも昼前から行列ができる盛況ぶりだ。
12月に入り新型コロナウイルスの第3波が激しくなるとやや客足が落ちたものの、当初目標の年間売上高2億4000万円を大幅に上回る勢いだという。「開業から3年は口コミで少しずつ客が増えれば良いと思っていた」(OHの尾中真二社長)と言うが、見通しは大きく外れたようだ。
ピックルスがテーマパークの計画作りに着手したのは3年ほど前だ。「当初は会社の知名度向上を兼ねて、飲食店と物販店を作るという漠然としたものだった」と尾中社長は振り返る。農業テーマパーク「らぽっぽ なめがたファーマーズヴィレッジ」(茨城県行方市)など、食に関する施設を視察して案を練り上げ、19年8月に着工した。投資額は約10億円だ。
世界的な健康ブームに乗って海外の和食人気は続いている。その和食を古来、支え続けてきたのがみそ、しょうゆ、酒、漬物などの発酵食品だ。いずれ日本の発酵食品に海外の目が向けられ、このテーマパークに多くの訪日外国人が訪れる日が来るかもしれない。
(さいたま支局長 松田隆)
[日経MJ 観光・インバウンド面 2021年1月11日付]
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