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発表日:2023年03月16日
世界初、中性子が引き起こす半導体ソフトエラー特性の全貌を解明
〜全電子機器に起こりうる、宇宙線起因の誤動作対策による安全な社会インフラの構築〜
日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:島田 明、以下「NTT」)、および国立大学法人北海道大学(北海道札幌市、総長:寳金 清博、以下「北海道大学」)は共同で、中性子のもつエネルギーごとの半導体ソフトエラー(※1)発生率(※2)を今までは測定がされていなかった10meV〜1MeVの低エネルギー領域において、"連続的な"データとして実測することに成功し、その全貌を世界で初めて明らかにしました(図1)。
現在の社会インフラを支える電子機器においては、宇宙線(太陽フレアや銀河から飛来する放射線)に起因する誤動作であるソフトエラーの対策が不可欠です。中性子エネルギーごとのソフトエラー発生率の解明は、その対策を行う上で最も重要なものです。今後は、この結果を活用しソフトエラー対策をさらに進展させることで、より安全・安心な社会インフラの実現が可能となります。
本成果は米国東部時間2023年3月15日にIEEE Transactions on Nuclear Scienceにて公開されました(※3)。
*図1は添付の関連資料を参照
1.背景
高性能な電子機器が、さまざまな分野で私たちの暮らしを支えている一方で、宇宙現象による「ソフトエラー」が増加しています。宇宙から降り注ぐ宇宙線が、大気圏にある酸素や窒素に衝突すると、中性子が発生します。この中性子が、電子機器の半導体に衝突すると、保存されたデータが書き変わる現象「ソフトエラー」を引き起こし、場合によっては通信障害などの社会インフラに重大な影響をおよぼす可能性があります(図2)。
NTTでは、すでにこのような被害に対処するため、ソフトエラーを再現させ、その対策・評価することができるソフトエラー試験技術を確立し、NTTアドバンステクノロジ株式会社において「ソフトエラー試験サービス」が2016年に開始されました(※4)。現在では通信分野をはじめ、様々な分野の電子機器のソフトエラー試験が実施されており、安心・安全な社会インフラの構築に貢献しております。また、2018年にはNTTが主導したソフトエラー対策・評価に関するITU-T勧告が制定されました(※5)。
電子機器におけるソフトエラーの対策を行うためには、その機器毎のソフトエラーによる故障頻度を考慮したシステム設計が重要となります。一方で、ソフトエラーの故障頻度は、その機器に到達する中性子が持つエネルギーにより大きく異なるため、ソフトエラー発生率のエネルギー依存性(中性子が持つエネルギーごとのソフトエラー発生率)の詳細なデータが不可欠でした。
そのため、NTTは北海道大学、名古屋大学と共同で高エネルギー中性子(1MeV〜800MeV)領域におけるソフトエラー発生率を2020年に世界で初めて測定しました(※6)。その後、更なる研究の深化を進め、NTTと北海道大学にて今回、世界で初めて1MeV以下でのソフトエラー発生率を解明しました。実験は、大強度陽子加速器施設(J-PARC) 物質・生命科学実験施設(MLF)に設置された中性子源特性試験装置(NOBORU)に、NTTが開発した高速ソフトエラー検出器を用いて測定しました(J-PARC Proposal No.2022A0249)。
*図2は添付の関連資料を参照
*以下は添付リリースを参照
リリース本文中の「関連資料」は、こちらのURLからご覧ください。
図1
https://release.nikkei.co.jp/attach/651324/01_202303161749.jpg
図2
https://release.nikkei.co.jp/attach/651324/02_202303161749.jpg
添付リリース
https://release.nikkei.co.jp/attach/651324/03_202303161749.pdf